著者
木村 公俊 北條 浩彦 福岡 聖之 佐藤 和貴郎 高橋 良輔 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.390a, 2016 (Released:2016-09-03)

エクソソーム(exosome)は細胞間情報伝達に関わる微小胞で,miRNA等を内包している.miRNAはT細胞分化を含めた免疫機構に深く関わっており,多発性硬化症(MS)等の自己免疫疾患においてexosomeの関与が推察される.本研究では,血漿中exosomeに含有されるmiRNAを解析し,健常人に比してMS患者において発現が亢進しているmiRNA 4種(miR-A, B, C, D)を同定した.また,T細胞にMS患者由来のexosomeを添加・培養すると,健常人由来のexosome群に比して制御性T細胞の頻度が低下した.制御性T細胞の頻度は,添加されたexosome中のmiR-Aの量と逆相関していた.また,T細胞へのmiR-Aの導入で,同様に制御性T細胞が減少した.さらに,naive CD4 T細胞から制御性T細胞への分化誘導時にも,miR-Aの導入で頻度が低下したことから,miR-Aは制御性T細胞の分化を阻害すると推察された.次に,制御性T細胞の減少に関与すると考えられる,miR-Aのターゲット遺伝子候補を検討し,miR-A導入によるprotein-Aの発現低下を確認した.また,protein-A発現をsiRNAで阻害すると,制御性T細胞が減少することを確認した.実際に,MS患者の末梢血CD4 T細胞において,protein-Aの発現低下を認めた.さらに,MS患者では制御性T細胞が減少しており,その頻度とnaive CD4 T細胞のprotein-Aの発現量に正の相関を認めた.本研究により,miRNAと制御性T細胞の分化抑制を介した,exosomeによる新たな疾患メカニズムが示唆された.