著者
山村 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1539-1541, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
7
著者
小野 紘彦 佐藤 和貴郎 中村 雅一 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.306b, 2017 (Released:2017-11-25)

【背景】筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は著しい疲労に加え,認知機能障害や睡眠障害など様々な神経症状が生じる深刻な慢性疾患である.近年ノルウェーからリツキシマブによるB細胞除去療法の有効性が報告されたが,ME/CFSにおける末梢血リンパ球についての知見は乏しく,なぜB細胞除去療法が治療効果を発揮するか不明である.【目的】ME/CFS患者の末梢血中のB細胞異常を明らかにする.【方法】対象はカナダ基準およびInternational consensus criteriaを共に満たす患者40人と年齢,性別をマッチさせた健常者20人とした.末梢血から末梢血単核球細胞を分離し,B細胞受容体(BCR)レパトア解析とフローサイトメーターを用いたB細胞サブセット頻度及び機能分子発現の解析を行った.【結果】BCRレパトア解析では患者群において多様性指数であるNormalized shannon indexとクローナリティーの指数であるDE50が低い傾向があり,多様性の減少およびクローナリティーの増加がみられた.リンパ球サブセット解析では,患者群と健常者群で比較すると,B細胞では患者群においてplasmablastが低下し(p = 0.04),一部の患者でCD80の発現が亢進していた.【結論】ME/CFSの末梢血においてB細胞の異常が認められた.免疫異常とME/CFSの病態との関わりについてさらなる研究が必要である.
著者
コマロフ アンソニー 高橋 良輔 山村 隆 澤村 正典
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.41-54, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は6カ月以上持続する疲労感,睡眠障害,認知機能障害などを生じる疾患である。ME/CFSは自覚症状により定義されているため疾患概念そのものに対する懐疑的意見もあるが,近年の研究では神経画像,血液マーカーの解析,代謝,ミトコンドリアなどの研究でさまざまな客観的な異常が報告されている。特に脳内外での免疫系の活性化がきっかけとなり,炎症性サイトカインが放出されることで病気が発症する可能性が指摘されている。この総説ではME/CFSについての客観的なエビデンスを中心に解説する。
著者
荒浪 利昌 佐藤 和貴郎 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第37回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.13, 2009 (Released:2009-10-21)

熱ショック蛋白(HSP)は、温熱のみならず、生体に対する様々なストレスの際に誘導され、ストレス蛋白とも呼ばれる。その役割はストレスにより障害された蛋白を修復し、蛋白、細胞の恒常性を保つことにある。多発性硬化症(MS)は原因不明の中枢神経系慢性炎症性疾患であるが、Th1やTh17細胞が病態成立に重要な役割を果たす自己免疫疾患であると考えられている。近年MS病巣のマイクロアレイ解析において最も高発現する遺伝子としてaB-crystallin (CRYAB)が報告された。CRYABは、HSPファミリー蛋白であるが、通常は中枢神経系に発現は認められず、MS、アルツハイマー病、パーキンソン病などでその発現が誘導されると報告されていたが、詳細な機能は不明であった。今回我々はMS患者末梢血に認められるCD28陰性T細胞がCRYAB反応性T細胞を多く含むことを見出した。HSPの中にはToll-like receptors (TLR)に結合し、抗原提示細胞(APC)を活性化させる機能を有するものが報告されていたが、CRYABもAPCを刺激し、IL-6、TNF-a、IL-10、IL-12といった種々のサイトカイン産生を、MYD88非依存性に誘導することが判明した。CRYABはまた、T細胞からのIFN-γ産生を増加させた。CRYABによるIFN-γ産生促進機能に関与するサイトカインを解析したところ、IL-12ではなく、IL-27であることが判明した。IL-27はTh17細胞反応や過剰な慢性炎症を抑制する働きが報告されている。しかし、CD28陰性T細胞がCRYAB反応性にIFN-γを産生した場合、CRYABの免疫修飾作用が障害され、慢性炎症に繋がる可能性が考えられる。このようなCRYABの免疫修飾作用とCRYAB自己免疫が、MS病態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。
著者
山村 隆治 下村 泰志
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.449-456,523, 1998-05-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
57
被引用文献数
2 2

エイコサペンタエン酸 (EPA), ドコサヘキサエン酸 (DHA) やドコサペンタエン酸 (DPA) を含む高度不飽和脂肪酸 (PUFA) はその生理活性から機能性食品や医薬品として注目を浴びている。中でも医薬品原料として利用したり, またその機能を確認するためにはPUFAを高度に精製する必要がある。PUFAを高度に精製するためにこれまで多くの検討がなされEPAのように実用化されているものもある。しかしPUFAの種類や由来する原料により複雑な処理工程を必要とし, 必ずしも大規模精製が完成しているとは言えない。筆者らは, DHAとn-6ドコサペンタエン酸 (DPA) を高い含量で含む海生菌から得られたSingle Cell OilエチルエステルをODS充填カラムを用いた工業的規模での分取HPLCを行い, 分取クロマトだけで高度に分離・精製されたDHA-EとDPA-Eが得られる可能性を見いだした。
著者
中村 雅一 千原 典夫 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.277, 2014 (Released:2014-10-07)

自己免疫疾患におけるプラズマブラスト(PB)は自己抗体,あるいはサイトカイン産生により病態形成に寄与すると考えられる.実際に,全身性エリテマトーデスなどいくつかの自己免疫疾患では,末梢血PBの増減と病勢との関連が報告されている.また,PBはCD20の発現を欠くためRituximabの標的外であり,関節リウマチや特発性血栓性紫斑病などにおける同薬抵抗性例の存在は,自己免疫疾患におけるB細胞除去治療の標的としてのPBの重要性を示唆する.  私達は,中枢神経系の自己免疫疾患である視神経脊髄炎(NMO),及び多発性硬化症(MS)の臨床検体を用いてPBと病態との関連を検討してきた.NMOでは,CD138+ PBがCXCR3介在性に中枢神経系に浸潤し,IL-6依存性の生存,及び自己抗体産生により病態形成に寄与することを明らかにするとともに,Tocilizumab治療の有効性を確認した.また,古くから自己抗体介在性亜群の存在が指摘されるMSにおいても,一部の患者で末梢血IL-6依存性PBの増加を認め,これらの患者は既存治療抵抗性であることを見出した.従って,MSにおいてもPBは有力な治療標的になる可能性があり,MSにおけるPB研究は,これまでのランダム化比較試験結果に基づく画一的な治療薬選択から病態に応じたテーラーメイド治療への発展の契機となることが期待される.
著者
木村 公俊 北條 浩彦 福岡 聖之 佐藤 和貴郎 高橋 良輔 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.390a, 2016 (Released:2016-09-03)

エクソソーム(exosome)は細胞間情報伝達に関わる微小胞で,miRNA等を内包している.miRNAはT細胞分化を含めた免疫機構に深く関わっており,多発性硬化症(MS)等の自己免疫疾患においてexosomeの関与が推察される.本研究では,血漿中exosomeに含有されるmiRNAを解析し,健常人に比してMS患者において発現が亢進しているmiRNA 4種(miR-A, B, C, D)を同定した.また,T細胞にMS患者由来のexosomeを添加・培養すると,健常人由来のexosome群に比して制御性T細胞の頻度が低下した.制御性T細胞の頻度は,添加されたexosome中のmiR-Aの量と逆相関していた.また,T細胞へのmiR-Aの導入で,同様に制御性T細胞が減少した.さらに,naive CD4 T細胞から制御性T細胞への分化誘導時にも,miR-Aの導入で頻度が低下したことから,miR-Aは制御性T細胞の分化を阻害すると推察された.次に,制御性T細胞の減少に関与すると考えられる,miR-Aのターゲット遺伝子候補を検討し,miR-A導入によるprotein-Aの発現低下を確認した.また,protein-A発現をsiRNAで阻害すると,制御性T細胞が減少することを確認した.実際に,MS患者の末梢血CD4 T細胞において,protein-Aの発現低下を認めた.さらに,MS患者では制御性T細胞が減少しており,その頻度とnaive CD4 T細胞のprotein-Aの発現量に正の相関を認めた.本研究により,miRNAと制御性T細胞の分化抑制を介した,exosomeによる新たな疾患メカニズムが示唆された.
著者
林 幼偉 三宅 幸子 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.146-153, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
44

免疫システムは複雑で様々な炎症性細胞や制御性細胞が存在してネットワークを形成している.自己免疫疾患は炎症性因子と制御性因子のバランスの破綻により発症するが,疾患ごとで異なるパターンで関与している.多くの自己免疫疾患が慢性に進行するが,そのメカニズムはまだ詳細が明らかになっていない.顕著な抗炎症作用を有する生物学的製剤は特異性が高く画期的だが,万能ではなく,治療手段によっては予想外の反応を示すこともあり,疾患活動性を完全に阻止するわけではない.また抗原特異的な治療は阻止効果が期待できる反面,自己免疫疾患は疾患ごとで抗原が多岐にわたり,汎用性に乏しい.さらに制御性細胞を利用する治療も有望だが,可塑性の点など未解決の部分がある.自己免疫疾患の一つである多発性硬化症(MS)は再発・寛解を繰り返しながらやがて進行するという特徴的な経過をとるが,その代表的モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の研究は,歴史を紐解くと免疫学の発展に深く関与していることが分かる.再発・寛解のメカニズムの解明を通じてMSのモデルとしてのみでなく,上記治療の補完として自己免疫疾患の治療手段の多様化を期待したい.
著者
山村 隆 小野 紘彦 佐藤 和貴郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.35-40, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の生物学的病因を探索する近年の研究により,血液・脳脊髄液における種々のサイトカイン上昇,ME/CFS亜群と関連した自己抗体などの異常が明らかにされている。またB細胞を除去する抗CD20抗体(リツキシマブ)がME/CFSに有効であるという医師主導治験の報告もあり,自己免疫応答亢進などの免疫異常を背景とする中枢神経系炎症がME/CFSの本態である可能性が議論されている。
著者
佐藤 準一 山村 隆
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.441-455, 2003-07-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
107

近年インターフェロンベータ(interferon-beta; IFN β)が多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)で再発抑制に有効であることが立証されたが, また同時にIFN β高応答群(responder)・低応答群(nonresponder)の存在が明らかになった. 現在までMSにおけるIFN β治療効果の分子細胞生物学的機序は十分解明されていない. IFN βは第一にIFN γによるクラスII主要適合性抗原発現誘導に拮抗して抗原提示能を抑制し, 第二に抗原提示細胞によるIL-12産生を抑制してTh1シフトを是正し, 第三に活性化. 自己反応性T細胞の血液脳関門通過を阻止することにより, 強力な抗炎症作用を呈することが報告されている. 最近われわれは遺伝子アレイを用いてMSにおけるIFN β治療効果発現に重要な役割を果たすと推測されるIFN応答遺伝子群(IFN-responsive genes; IRG)を同定した. IRGにはIFN β産生における正の制御転写因子IRF-7や抗原呈示機構の主要構成要素IFI30, TAP1が含まれている. われわれの研究結果はIRGがMSにおけるIFN β responder, nonresponderを識別するマーカーとなる可能性を示唆する.
著者
山村 隆
出版者
科学評論社
雑誌
臨床免疫 (ISSN:03869695)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.324-327, 2005-09
著者
山村 隆 国下 龍英 大橋 高志 近藤 誉之
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1.SSCP法によるT細胞抗原受容体レパトアの解析:T細胞レパトア解析の新しい方法論(RT-PCR-SSCP 法)を導入し、多発性硬化症(MS)の脳病変部位、末梢血の病変部位におけるT細胞を解析した。その結果、1)MSの病変ではかなり限られたクローンの増殖がみられることがわかったが、特定のVベータ鎖の優先使用はなく、Vベータ特異的治療の可能性に疑問を投げかけた。2)MS患者末梢血から樹立したMBP82-102特異的、PLP95-116特異的T細胞クローンを対照において患者末梢血をSSCPで解析したところ、同クローンが体内で持続的に活性化状態にあり、増殖していることがはじめて明らかになった。3)慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチーの末梢神経においてVB11陽性細胞の特異的な浸潤のあることを明らかにした。2.脳炎惹起性T細胞抗原認識機構の解析:ミエリン塩基性蛋白(MBP)特異的脳炎惹起性T細胞の中に、プロテオリピッド蛋白(PLP)を共認識するものをはじめて見いだした。アナログ・ペプチドによる解析の結果、共認識されるMBP89-101およびPLP136-150ペプチドは、I-A^S結合部位を共有するが、T細胞抗原受容体結合残基はそれぞれ異なることがわかった。すなわちTCRは複数のセットの接触残基を利用して活性化されることがわかった。同クローンはPLP95-116、PLP118-135などにも反応し、polyreactive T細胞と命名されるべきである。polyreactive T細胞の各ペプチド・リガンドに対する反応性は異なり、活性化の結果脳炎を誘導できるペプチドはMBP89-101とPLP136-150に限られていた。