著者
北田 聖子
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、規格化、標準化が、製品のデザインにどのように関係し、意義をもつかを明らかにすることである。これまでのデザイン史研究は、デザインの側から、デザインと関わる特殊な概念として標準化をみるきらいがあったが、それに対し本研究は、標準化の事例研究を通して、標準化と呼ばれる行為によって具体的に何がなされてきたかを明らかにし、標準化のコンテクスト中に標準とデザインの交わる地点を見つけるという道筋をたどる。特に、1920年代以降にみられた日本の規格統一事業による紙の寸法の標準化と事務用家具の寸法の標準化を事例研究の対象とする。本年度は、1920年代から1970年代に至るまで、つまり戦前、戦後をとおしての事務用家具の標準化の事例研究をおこなった。具体的には、国家規格による事務用家具標準化、1920年代から日本に登場し始めた事務管理論者の著作で言及された事務用家具標準化、そして木檜恕一を起点として国立工芸指導所の家具研究にいたるまでの事務用家具標準化の系譜を比較し、それぞれが同じ事務用家具標準化という目的をもちながらも、その目的へのアプローチ方法には相違があることを明らかにした。その結果、標準化ということばでくくられる事象は、複層的で立体的な内実をもつことが確認できた。また、先行研究ですでにいわれてきた戦前の家具研究における標準化を、異なる視点からの標準化の事例と照らし合わせることによって、標準化のなかで相対化し、ひいては、標準化という問題に対するデザイン史研究の学問的パースペクティヴを浮き彫りにすることもできた。