著者
北野 与一
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.1-8, 1979

この報告は、私立金沢盲唖院に関して、松村精一郎の生涯、彼が育まれた石川県の社会的教育的背景、彼の設立の動機、設立経過、閉院の理由、設立者の特質、課題などに若干の考察を行ない、これまでに発表されたいくつかの報告に補充を加えるものである。松村の書簡及び当院に関係する教育史的史料などの文献により考察した結果、(1)松村は天然痘とその余病により、聴覚・言語・運動障害をもっていた、このことが当院の特質であった、(2)彼は障害者に理解のある師に教えられ、協力を惜しまない親友をもっていた、(3)加賀藩に紹介された欧米の盲・聾教育が、松村の成長に間接的に影響していた、(4)中村正直に師事したことや、帰郷途中、京都で楽善会友に出会い、京都盲唖院を参観したことが、松村の設立の動機であった、(5)研究・調査に大阪、京都校を訪れた、(6)経済的変動やコレラの流行、県令の更迭、就学勧誘の努力の不足も閉院の要因であったなどの結論を得た。
著者
佐野 新一 蒲 真理子 北野 与一
出版者
北陸大学
雑誌
北陸大学紀要 (ISSN:0387074X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.223-240, 1987

本研究では,本学における今後の保健体育科教育の在り方を再検討するための基礎的資料を得ることを目的とし,学生の健康・スポーツに関する意識および実態について分析・検討を試みた。本調査は,本学1年次生489人を対象に5月中旬に実施され,462人(94.5%)の回答を得た。得られた結果は,次に示すとおりである。1)健康のとらえ方(複数回答)としては,「身体各器官の構造・機能が正常である」(76.0%)が最も多く,以下「便通・排尿が順調である」(71.0%),「食欲旺盛である」(63.6%)等の順であり,身体的側面の内容を一次的に,精神的・社会的側面に関する内容を二次的に考えている。2)現在の健康や体力の状態については,全体の17.5%が「あまり健康でない」,そして,19.7%が「体力がない」と回答した。3)心身の主な自覚症状については,「疲れやすい」「悩みがある」「肩がこる」「かぜをひきやすい」および「イライラする」などを挙げる者が多く,また4人に1人が「学習意欲がない」と回答した。4)自分の健康や体力について「常に注意を払っている」が19.1%,「時々注意を払っている」が54.3%であるが,関心のない者も4人に1人の割合を示した。5)健康や体力維持増進のため心掛けていること(複数回答)は,男子では「睡眠や休養をよくとる」(60.3%)が最も多く,以下「体操や散歩などの運動(スポーツを含む)をする」(52.7%)「栄養や食事などの食生活に気をつける」(44.8%)などの順である。一方,女子の第1位は男子と同様「睡眠や休養」(62.3%)であり,次いで「規則正しい生活」(43.9%),「栄養や食事」(42.6%)等の順となり,「運動やスポーツをする」は男子に,「規則正しい生活」は女子に多く示された。6)男女とも身体活動に対して好意的態度を示す者が多い。また,「運動不足による運動欲求」や「運動への心掛け」の点において,女子より男子の方に好意的態度が強い傾向がみられる。7)現在の運動部および同好会への所属率は,全体的では41.8%である。女子より男子の方に,また,外国語学部より薬学部の方に所属者が多い。8)加入した動機(複数回答)は,「好きだから」(70.7%)「体力増強のため」(61.0%)「親睦」(50.0%)などが多い。逆に加入しない理由は,「自由時間を制限される」(55.9%)が最も多く,以下「好きな種目のクラブがない」(39.1%)「スポーツ以外のものをしたい」(37.3%),「通学時間の関係で時間的余裕がない」(32.3%)の順である。9)体育実技の授業を除く運動・スポーツの実施状況は,全体では,38.3%が「全然していない」と回答しており,体育系サークルに加入してない一般学生のスポーツに親しむ機会は極めて少ない。また,実施量の少ない者の割合は,性別では男子より女子に,学部別では薬学部より外国語学部の方に多い。10)現在の運動量に対しては,68.6%が「不満である」とし,80.3%が「もっと運動したいとか,しなければならない」と感じている。