著者
北野 健
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.291-293, 2019-05-15 (Released:2019-05-24)
参考文献数
15

多くの魚種は,遺伝的な要因により性が決定するシステム(遺伝的性決定システム)だけでなく,環境に依存して性が決定するシステム(環境依存的性決定システム)を保持している。1) この環境依存的性決定システムにおいては,温度,pH,社会環境など,様々な環境要因で性が決定(転換)することが知られているが,この基本原理及び分子機構については未だに解明されていない。
著者
中村 將 北野 健 野津 了 加賀谷 玲夢
出版者
一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

高水温飼育により不妊化したナイルティラピアの性行動を調べた。30日齢の幼魚を高水温飼育(37℃,50日間)した後25カ月齢まで飼育し供試魚とした。高水温飼育オス3尾と正常なメス5尾を一群として大型水槽に入れ、5日にわたって性行動を観察した。その結果、同じ実験を8回行なったうち6回で繁殖行動が観察された。正常オスを用いた対照実験においても同様な結果が得られた。実験に用いた高水温飼育した全てのオスの精巣は透明色で、組織学的な観察においても精子は認められなかった。以上のことから、高水温飼育オスは、処理後少なくとも25カ月にわたって不妊化が維持され、メスに対して正常な性行動を行なうことが明らかとなった。高水温飼育により不妊化したモザンビークティラピアのメスの長期飼育による生殖特性について調べた。ふ化後10日の幼魚を高水温飼育(37℃、56日間)した後約21カ月齢まで成長させた。高水温飼育メスは婚姻色を示さず、泌尿生殖突起も未発達で外見的に明らかに正常成熟メスと異なっていた。卵巣は著しく小さく糸状で卵は確認出来なかった。組織観察でも生殖細胞は全くみとめられなかったが、卵巣の特徴である卵巣腔が認められた。ステロイド代謝酵素の抗体による免疫染色では強い陽性反応を示す少数の細胞が確認された。血中の性ホルモンも正常成熟メスと比べても著しく低かった。このことから、不妊化メスはオスと異なり長期に渡り性的成熟が起こらないことが明らかとなった。メダカの生殖細胞増殖におけるHSPの役割を明らかにするため、hsp70.1過剰発現メダカ系統を作製して生殖細胞の増殖状況を調べた。その結果、孵化時期におけるこの系統の生殖細胞数は、野生型個体と比較して、雌雄ともに有意差は認められなかった。