著者
松井 珠乃 高橋 央 大山 卓昭 田中 毅 加來 浩器 小坂 健 千々和 勝巳 岩城 詩子 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.161-166, 2002
被引用文献数
6

2000年7月にG8サミットが福岡・宮崎市で開催された際, 報告施設を設定し, 急性感染症が疑われる全ての症例を, 出血性・皮膚病変症候群, 呼吸器症候群, 胃腸炎症候群, 神経症候群, および非特異的症候群の5群に分類して集計した. サミット前後各1週間 (第27, 28週) の各症候群の報告数を, 感染症サーベイランスの全数および定数把握対象疾患の関連疾病群の報告数に対する比で表し, 第27週比の第28週比に対する比を算出して, その変動性を検討した. 福岡市の変動比は, 平均±標準偏差=0.99±0.291, 95%信頼区間0.71~1.28, 宮崎市は, 平均±標準偏差=1.19±0.298, 95%信頼区間0.93~1.45と算出され, 共に変動性は低いことが分かった. 宮崎市では複数の症状を有する症例は, 重複報告を許したが, 1症例1症候報告の福岡方式の方が解析は容易であった. 呼吸器感染症の動向は, 感染症サーベイランスでは成人症例が報告対象疾患に少ないため, 症候群サーベイランスの方が検出良好であった. 重大イベント (high-profile event) における症候群サーベイランスは動向を迅速に集計でき, 少ないコストと人力で実施でき, 実効性があると評価された. しかし, 報告集計の基線が観測期間の前後に充分ないと的確な判定が出来ないことや, 報告定点の数や種類に配慮が必要であることが分かった.