著者
加來 浩器
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1917-1924, 2018-12-01

マスギャザリングは,「一定の期間,限られた地域で,同じ目的の人が多く集まる状態」と定義され,さまざまな健康危機管理事態を想定した備えが重要である.マスギャザリングによって公衆衛生基盤の一部が破綻すれば,① 病原体の増加,② 非土着の病原体の侵入,③ 空間環境による感染リスクの増大,④ 感染経路対策の不徹底,⑤ 外来種節足動物による感染,⑥ 土着種節足動物による感染,⑦ 感受性者層の増加,などが起こり,感染症の発生のリスクが増加する.国際的なマスギャザリング時には,① 輸入感染症の発生,② 国内の流行疾患の発生,③ イベント会場から国内の他地域への拡散,④ 輸出感染症,などの影響が発生する.
著者
金山 敦宏 加來 浩器
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.697-704, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
16

目的 近年,国民の食生活の多様化に伴い,海外からの輸入食品を喫食する機会が増えている。海外における主な食中毒事例の原因食品は,国内発生事例の原因食品と必ずしも一致するとは限らず,潜在的に輸入食品が国内で食中毒を発生させる原因となりうる。本研究では,2011–2012年の 2 年間に海外で発生し公表•報道された食中毒のうち,原因食品の特定された主な事例を分析し,輸入食品のリスクを調査した。方法 本研究において「食中毒事例」は,食品衛生法第58条に従って,「食品,添加物,器具若しくは容器包装に起因した中毒事例(疑い例を含む)」と定義した。海外の食中毒事例に関する情報は,国際感染症学会の公式プログラムである ProMED-mail(the Program for Monitoring Emerging Diseases; http://www.promedmail.org,以下 ProMED)に2011–2012年の 2 年間に掲載されたものを使用した。国内の食中毒事例との比較には,食品安全委員会の公表している統計や国立感染症研究所の病原微生物検出情報の資料などを参照した。結果 2011–2012年に ProMED に掲載された感染症関連事例のうち,続報などを除いた主な海外の食中毒事例は113件で,原因病原体として細菌が98件(86.7%)と大多数を占めた(表 1)。このうちサルモネラ属菌が39件(39.8%)と最も多く,ボツリヌス菌20件(20.4%)と合わせると約 6 割を占めた。サルモネラ食中毒事例の特徴は,原因食品として国内では想定しにくい果実類(6 件)や豆類•種実類(3 件)があること,野菜類や魚介類の割合が多いことであった。また,野菜等の缶詰等がボツリヌス中毒の原因としてリスクの高いことが分かった。さらに,メロンの喫食からリステリア症を発症した事例や,イチゴからノロウイルスのアウトブレイクが発生するなど国内では稀な事例が存在した。結論 海外における食中毒事例では,国内の常識が当てはまらない事例が数多く報告されていることが明らかとなった。これらの食品が輸入され国内流通した場合には食中毒発生リスクのあることが示された。
著者
松井 珠乃 高橋 央 大山 卓昭 田中 毅 加來 浩器 小坂 健 千々和 勝巳 岩城 詩子 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.161-166, 2002
被引用文献数
6

2000年7月にG8サミットが福岡・宮崎市で開催された際, 報告施設を設定し, 急性感染症が疑われる全ての症例を, 出血性・皮膚病変症候群, 呼吸器症候群, 胃腸炎症候群, 神経症候群, および非特異的症候群の5群に分類して集計した. サミット前後各1週間 (第27, 28週) の各症候群の報告数を, 感染症サーベイランスの全数および定数把握対象疾患の関連疾病群の報告数に対する比で表し, 第27週比の第28週比に対する比を算出して, その変動性を検討した. 福岡市の変動比は, 平均±標準偏差=0.99±0.291, 95%信頼区間0.71~1.28, 宮崎市は, 平均±標準偏差=1.19±0.298, 95%信頼区間0.93~1.45と算出され, 共に変動性は低いことが分かった. 宮崎市では複数の症状を有する症例は, 重複報告を許したが, 1症例1症候報告の福岡方式の方が解析は容易であった. 呼吸器感染症の動向は, 感染症サーベイランスでは成人症例が報告対象疾患に少ないため, 症候群サーベイランスの方が検出良好であった. 重大イベント (high-profile event) における症候群サーベイランスは動向を迅速に集計でき, 少ないコストと人力で実施でき, 実効性があると評価された. しかし, 報告集計の基線が観測期間の前後に充分ないと的確な判定が出来ないことや, 報告定点の数や種類に配慮が必要であることが分かった.