著者
中村 雅一 千原 典夫 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.277, 2014 (Released:2014-10-07)

自己免疫疾患におけるプラズマブラスト(PB)は自己抗体,あるいはサイトカイン産生により病態形成に寄与すると考えられる.実際に,全身性エリテマトーデスなどいくつかの自己免疫疾患では,末梢血PBの増減と病勢との関連が報告されている.また,PBはCD20の発現を欠くためRituximabの標的外であり,関節リウマチや特発性血栓性紫斑病などにおける同薬抵抗性例の存在は,自己免疫疾患におけるB細胞除去治療の標的としてのPBの重要性を示唆する.  私達は,中枢神経系の自己免疫疾患である視神経脊髄炎(NMO),及び多発性硬化症(MS)の臨床検体を用いてPBと病態との関連を検討してきた.NMOでは,CD138+ PBがCXCR3介在性に中枢神経系に浸潤し,IL-6依存性の生存,及び自己抗体産生により病態形成に寄与することを明らかにするとともに,Tocilizumab治療の有効性を確認した.また,古くから自己抗体介在性亜群の存在が指摘されるMSにおいても,一部の患者で末梢血IL-6依存性PBの増加を認め,これらの患者は既存治療抵抗性であることを見出した.従って,MSにおいてもPBは有力な治療標的になる可能性があり,MSにおけるPB研究は,これまでのランダム化比較試験結果に基づく画一的な治療薬選択から病態に応じたテーラーメイド治療への発展の契機となることが期待される.