著者
JIRIGALA 大西 健夫 千家 正照 SAMDAN Shiirev-Adiya
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.33-40, 2013-02-25 (Released:2014-02-25)
参考文献数
27

モンゴル国では,ゾドと呼ばれる家畜の大量死につながる寒候季の寒雪害が頻繁に発生し,遊牧に甚大な影響を与えている.ゾド発生の有無は,気象要因と人的要因とが複合して決まるため,両要因を峻別することはゾド被害軽減策のために極めて重要である.本研究では,モンゴル国東部のドルノド県を対象にして気象条件とゾド被害発生との関係を分析した.その結果,冬季多雪条件下で降雪量と斃死率との相関が明瞭になり,夏季少雨および冬季低温の条件が重なると,さらに傾向が顕著となることが明らかになった.他方,夏季少雨,冬季低温,冬季少雪の単独条件下では,気象条件と斃死率との間には明瞭な相関関係が見られなかった.以上より,冬季多雪が要因と言われるツァガン・ゾド(寒雪被害)は気象条件を規定要因とみなすことができ,その他のガン・ゾド(干ばつ被害),ハラ・ゾド(無降雪被害),フィテン・ゾド(寒冷被害)は気象要因のみが決定要因ではないことが示唆された.
著者
ロザキ ズフッド コマリア スマニ シ・デウィ ウィデイヤットミ 吉山 浩平 伊藤 健吾 千家 正照
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.59-66, 2017
被引用文献数
1

人間生活に与える気候変動の影響は避けがたく,とくに農業への影響は顕著である。ほとんどの国民が農業に従事しているインドネシアでは,多くの農家が気候変動の影響を感じ始めている。そこで,現在と過去における害虫による被害,水の充足,収穫被害の頻度に関する認識について,農家にインタビュー調査を実施し,集計したデータを統計分析した。その結果,雨季の初めの降雨がしばしば不安定であるため,農家は第1作目の作付け時期を遅らせており,そのため,第2作目の途中から乾季となり収穫が不安定になっていることが示された。本研究はこうした結果を踏まえて,農家が水不足の懸念なく雨季の初めから第一作目を開始できるよう圃場内に小規模貯水池を建造することを提案し,このような小規模貯水池は,収穫不良の原因となる雑草や害虫が発生しないよう水田内を湛水状態に維持するための用水を供給することもできる点を指摘した。
著者
久田 重太 千家 正照 伊藤 健吾 丸山 利輔
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-7, 2011-02-25 (Released:2012-02-25)
参考文献数
10

ヒノキを中心とした常緑針葉樹林流域とミズナラなどの落葉広葉樹林流域において水文観測を行い,林相の違いが水収支特性に及ぼす影響を検討した.短期水収支法を1時間単位の流量データに適用した結果,広葉樹林流域に比べて針葉樹林流域の蒸発散量が大きいことが明らかになった.また,蒸散量をPriestley-Taylor式により推定することで, 蒸発散量から遮断蒸発量を分離したところ,落葉広葉樹流域に比べて針葉樹流域の遮断蒸発量が大きいことが示唆される結果となった.さらに,総流出量を直接流出量および基底流出量に分離することで,両流域の流出特性を検討したところ,2流域間に直接流出率に差がみられず,総流出量の差を生じさせているのは基底流出量の違いであった.これら水収支の各成分の検討から,林相の違いが遮断蒸発量と基底流出量に大きく影響していることを明らかにした.
著者
近藤 美麻 伊藤 健吾 千家 正照
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.395-402, 2013-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
27

新規に造成されたビオトープ池への魚類の移動に伴うイシガイの定着と再生産に着目し,それに寄与した宿主魚種を検討した.イシガイの宿主として適性をもつ魚種を明らかにするために行なった寄生実験では,対象とした12魚種のうち6魚種から稚貝が得られた.そのうち寄生幼生の稚貝への変態率はオイカワおよびヨシノボリ類で高く,それぞれ95.3%と88.1%であり,他の魚種では5%に満たなかった.また,過去に行なわれたビオトープ池におけるイシガイ幼生の寄生状況およびイシガイと魚類の生息状況の調査結果より,オイカワは現地における幼生の平均寄生数と寄生率も高く,生息数も多い魚種であったことから,ビオトープ池においてはオイカワが主な宿主としてイシガイの定着と再生産に寄与したと考えた.
著者
近藤 美麻 伊藤 健吾 千家 正照
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.117-123, 2011-04-25 (Released:2012-04-25)
参考文献数
9

2008年5月から10月にかけて岐阜県に位置するビオトープ池と隣接排水路,その間に設置された魚道において魚類を採捕し,イシガイ類幼生の寄生状況を調査した.その結果,イシガイ類幼生の主な寄生主は,イシガイおよびトンガリササノハガイではオイカワ,ドブガイおよびマツカサガイではヌマムツであった.また,魚道において採捕した魚類のうち,ビオトープ池から排水路への降下魚と排水路からビオトープ池への遡上魚におけるイシガイ類幼生の寄生状況を比較した結果,遡上魚よりも降下魚において平均寄生数が大きく,かつ,寄生幼生の総数も多い結果となり,ビオトープ池がイシガイ類の繁殖場所としての機能を持ち,周辺水域への分布域の拡大や個体数維持に貢献していることが示唆された.