著者
中桐 貴生 安藤 大一 平山 周作 石川 重雄 丸山 利輔
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.242-249, 1999-05-05 (Released:2009-10-22)
参考文献数
3

西日本をおそった平成6年の(非超過確率年1000年を超えるほどの厳しい)大渇水時の農業用水管理の実態を整理・分析した.まず,供給サイドの問題として渇水調整協議会の構成,工業用水,生活用水,農業用水の節水率,渇水に伴う節水率の時間的経過,農業用ダムの節水率,ダムの貯水率と節水率の推移,節水に対する土地改良区の意向を示した.次に,取水施設サイドの対応を述べ,さらに土地改良区・農家の渇水対策として,水管理による節水と反復利用・井戸(地下水)による用水補給が行われたことを紹介するとともに,これらの対策状況に基づいて,いくつかの水系を5段階の渇水程度に分類した.最後に,要約としてこの年の農業用水と他種用水との対応について総括し,今後の農業用水のあり方やそれの持つ地域生態系の維持・保全の役割,管理用水の役割について述べた.
著者
大上 博基 丸山 利輔
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.162, pp.143-150,a3, 1992-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
78

これまでに, 蒸発散算定式や蒸発散機構に関する研究が進展する過程で, 蒸発計蒸発量は基準蒸発量としての役割を果たしてきた。近年は, コンピュータ処理に馴染みかつ物理的に明解とされる蒸発散算定法が発展している。本報では, まず, 基準蒸発量算定を目的とした測定基準化へのあゆみと, 蒸発計蒸発量の問題点を整理する。次に, 測定基準と蒸発散算定法の確立のための研究を整理し, 基準蒸発量としての蒸発計の役割はほぼ達成されたと評価する。また, 蒸発計は実測, コスト, 簡便, 気象環境の反映という点で優れているため, 狭い地域や気象観測設備の不十分な地域での蒸発散研究では, 蒸発計蒸発量が重要な役割を果たすことを強調する。
著者
久田 重太 千家 正照 伊藤 健吾 丸山 利輔
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-7, 2011-02-25 (Released:2012-02-25)
参考文献数
10

ヒノキを中心とした常緑針葉樹林流域とミズナラなどの落葉広葉樹林流域において水文観測を行い,林相の違いが水収支特性に及ぼす影響を検討した.短期水収支法を1時間単位の流量データに適用した結果,広葉樹林流域に比べて針葉樹林流域の蒸発散量が大きいことが明らかになった.また,蒸散量をPriestley-Taylor式により推定することで, 蒸発散量から遮断蒸発量を分離したところ,落葉広葉樹流域に比べて針葉樹流域の遮断蒸発量が大きいことが示唆される結果となった.さらに,総流出量を直接流出量および基底流出量に分離することで,両流域の流出特性を検討したところ,2流域間に直接流出率に差がみられず,総流出量の差を生じさせているのは基底流出量の違いであった.これら水収支の各成分の検討から,林相の違いが遮断蒸発量と基底流出量に大きく影響していることを明らかにした.