著者
安藤 隆男 西川 公司 川間 健之介 徳永 豊 千田 捷熙
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の二つから構成した。まず、(1)学習の主体である脳性まひ児の学習特性、(2)脳性まひ児の教科指導を行う担任教師、(3)地域における支援の担い手である肢体不自由特別支援学校の支援体制に注目し、通常学級における脳性まひ児の学習支援モデルの開発に関わる基礎的な資料・知見を得る研究である。次に、これらの基礎的な知見をふまえて、とくに附属肢体不自由特別支援学校との開発と展開に関わる共同研究である。この共同研究は、脳性まひ児の学習特性をふまえた教科指導モデルの構想と実践(第一研究)と通常学級における脳性まひ児の学習支援の展開(第二研究)からなる。前者は通常学級における脳性まひ児の学習支援に資する教科指導モデルを、肢体不自由特別支援学校において培ってきた専門性に基づいて構想、実践するものである。後者は前者で構想、実践した教科指導モデルを通常学級に適用、展開するものである。まず、第一研究では、WISC-IIIなどの結果から、認知的な課題がある児童生徒を対象とした各教科の指導の手だて等を開発し、授業において検証した。その結果、認知的な特性をふまえた指導の導入が脳性まひ児の学習パフォーマンスを高めることが事例的に明らかになった。第二研究では、第一研究で構想した教科指導モデルを通常学級の脳性まひ児に適用してその有効性を明らかにしつつも、脳性まひ児の認知に関わる担当教師の気づきの位相によって彼らへの支援を細かく想定する必要性が示唆された。脳性まひ児の学習パフォーマンスに関しては、認知的特性のみならず、運動動作の障害との因果関係も示唆され、改めて自立活動の指導との関連から課題を整理する必要がある。