著者
生田 純一 外川 佑 那須 識徳 川間 健之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.141-150, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)

脳血管障害者の自動車運転評価において,簡易型ドライビングシミュレーター(以下,DS)における運転パフォーマンス特性が運転適性に関連する因子となりうるかどうかを検討することを目的に,実車評価を実施した脳血管障害者149名を後方視的に調査した.DS評価項目について主成分分析を実施し,5つの主成分に次元圧縮を行った.運転適性との関連については,従属変数を運転適性,独立変数をDS評価の主成分得点,共変量を年齢,SIAS上肢,FIM運動項目,MMSE,KDBT,SDMT,ROCF模写とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果,運転適性に関連して,配分性注意と車線走行能力,左右の注意配分といった3つのDS評価特性が示された.
著者
松田 徹 吉田 晋 井上 美幸 村永 信吾 大嶋 幸一郎 川間 健之介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.719-726, 2013 (Released:2014-01-21)
参考文献数
33
被引用文献数
1

〔目的〕臨床経験10年以上の理学療法士(PT)の臨床判断による転倒予測の視点と確かさを検討すること.〔対象〕臨床経験10年以上のPT 17名.〔方法〕PT 11名に,フォーカスグループインタビューを実施し,timed “up& go” test(TUG)チェックリストを作成した.次に別のPT6名が,TUGチェックリストを使用し,21名の高齢者映像からの転倒予測を行った.〔結果〕visual analogue scale(VAS)評価は既存の転倒予測指標と有意な関連性を示し,チェックリスト評価項目の「着座動作に問題がある」の転倒予測の的中精度が高かった.〔結語〕臨床経験10年以上のPTの転倒予測の正確性は高く,既存の転倒予測指標にTUGの着座場面の観察を加えることで,予測の精度向上が期待できる.
著者
芝崎 律子 川間 健之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.176-184, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)
参考文献数
19

近年,特別支援学校ではリハビリテーション専門職の活用が活発化しているが,その活用は各自治体によって異なっている.全国的には外部専門家の活用が一般的ではあるが,特別支援学校で常勤職員として働くOTも少数ながら存在しており,勤務形態や業務内容も異なっていると思われる.本研究では,特別支援学校で働くOTの実態を明らかにすることを目的に,34名の特別支援学校に関わるOTにインタビュー調査を実施した.外部専門家はそれぞれの専門性を活かしてOTとしての業務を中心に行っていたが,常勤で働くOTは,教員としての業務も担いながらOTとしての役割も果たしていることが明らかとなった.
著者
松田 徹 吉田 晋 井上 美幸 村永 信吾 大嶋 幸一郎 川間 健之介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.69-75, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
29

〔目的〕臨床判断を基盤とした転倒危険性の感じ方が,臨床経験により異なるか,Timed “Up& Go” Test (TUG)遂行時の高齢者映像から検討すること.〔対象と方法〕「学生」群32名,臨床経験「1-2年目」群46名,「3-4年目」群34名,「5-9年目」群43名,「10年目以上」群15名.映像を見て,Visual Analogue Scale(VAS)で評価した.本研究上定義した転倒リスク分類との一致率とVAS測定値を臨床経験で比較した.〔結果〕転倒高リスク映像にて,「学生」群よりも「1-2年目」群,「10年目以上」群の一致率が有意に高く,「10年目以上」群で最も高かった.〔結語〕10年以上臨床経験を積むことで,転倒リスクの高い高齢者映像をより正確かつ明確に評価できる可能性が示唆された.
著者
平野 康之 夛田羅 勝義 川間 健之介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>近年,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の需要が拡大する一方で,訪問リハ従事者が経験する事故や病状急変などの件数は増加傾向にある。このような現状からサービス提供における安全管理の徹底が求められるが,訪問リハ従事者におけるこれらのアセスメント能力(技術)の実態については明らかではない。本研究の目的は,訪問リハ従事者が実施する健康状態や病状把握のために用いるアセスメント項目の知識(技術)の程度や実施の程度,必要性の認識などについての実態を把握することである。<b>【方法】</b>対象は,全国の訪問リハ事業所(病院)に勤務する訪問リハ従事者である。方法は都道府県ごとにランダムに抽出した540施設に対して,以下に示す訪問リハビリテーションアセスメント(以下,vissiting rehabilitation assessment:VRA)に関する自己記入式質問紙を郵送した。VRAは利用者の健康状態や病状把握に必要と考えられる①心理・精神に関する項目,②生命・身体に関する項目,③生活に関する項目の3領域からなるアセスメント(全42項目)で構成され,回答にあたっては知識(技術)の程度(以下,知識度),アセスメント実施の程度(以下,実施度),訪問リハ実施時における必要性(以下,必要性)について5段階のリッカート尺度により回答を得た。解析は,まず知識度,実施度,必要性についてアセスメント項目ごとに記述統計を行い,その傾向を検討した。次に知識度,実施度,必要性の関連性についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。なお,質問紙の作成にあたっては信頼性,妥当性を確認し,統計学的有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>郵送時に本研究の主旨に関する説明書を同封し,質問紙の返送をもって同意とした。なお,本研究は徳島文理大学倫理委員会の承認を得た。<b>【結果】</b>質問紙の回答は63施設:120名(11月11日現在,回収率:12%)から得られた。回答者属性は,男性:62名,女性:58名,年齢は20歳代:45名,30歳代:53名,40歳代:16名,50歳代:6名であった。職種は理学療法士:81名,作業療法士:38名,言語聴覚士:1名であり,経験年数は10年未満:77名,10年以上:43名であった。VRAの結果より,知識度に関して"知っている"と回答した者が最も多かった項目は「バイタルサイン(以下,VS)」であり,次いで「意識レベル」,「転倒」,「経皮的酸素飽和度(以下,SpO2)」の順に多かった。実施度に関して"実施する"と回答した者が最も多かった項目は「VS」であり,次いで「意識レベル」,「視診」,「運動に伴うVSの変動」の順に多かった。必要性に関して"必要がある"と回答した者が最も多かった項目は「VS」であり,次いで「意識レベル」,「転倒」,「SpO2」の順に多かった。次に知識度,実施度,必要性の関連性については,「VS」,「内服薬」,「認知機能」の一部以外のすべてにおいて弱い,または中等度以上の相関を認めた。知識度と実施度の関連において,相関係数が0.6以上を示したのは「非がん性の痛み」,「心音聴取」,「がん性の痛み」など17項目であった。必要性と実施度の関連において相関係数が0.6以上を示したのは「非がん性の痛み」,「食事」,「SpO2」など12項目であり,「うつ」,「頸静脈怒張」,「心電図変化」,「胸部打診」は0.4未満であった。また,知識度と必要性の関連において相関係数が0.6以上を示した項目はなく,「VS」,「内服薬」,「認知機能」については相関を認めなかった。<b>【考察】</b>必要度の上位に位置した「VS」,「意識レベル」,「転倒」などは"必要である"と回答した者が約80%を超え,知識度や実施度においても知識を有し,いつも実施しているとの回答が得られていたことから,訪問リハサービスの提供において重要なアセスメント項目であると考える。また,知識度と実施度の関連が認められた「非がん性の痛み」,「心音聴取」,「がん性の痛み」など17項目については,知識量が多ければ多いほど実施度が高い傾向にある項目であると考える。また,必要性と実施度の関連が認められた「非がん性の痛み」,「食事」,「SpO2」などの12項目については,訪問リハの実践に必要であると認識しているほどよく実施している,またはよく実施しているほど訪問リハの実践に必要であると判断している項目であると考える。また,「うつ」,「頸静脈怒張」,「心電図変化」,「胸部打診」で相関係数が低かったことについては,訪問リハにおいて内部障害系のアセスメント項目の必要性や実施の程度に偏りや乖離がある可能性が示唆された。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>本研究結果は訪問リハの教育カリキュラムや研修計画などの作成にあたっての有効な資料となり,訪問リハの質向上に寄与すると考える。
著者
大畑 友香 川間 健之介
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.107-115, 2019

<p>本稿は, 院内学級や訪問教育の利用が不可能な児童生徒の学習がどのように行われているのか, その課題は何であるかについて, 国内文献を概観し検討を加えた. 院内学級を利用していない児童生徒に対する学習支援として「ボランティアによるもの」, 「病院勤務者によるもの」, 「入院中の児童生徒に対する原籍校により行われるプリント配布等」, 「個別に行うもの」, 「ICT を活用するもの」が挙げられた. また院内学級の利用が不可能な理由として, 「計画的な設置が困難であること」, 「学籍移動にかかわる問題」, 「治療上の理由」が挙げられた. 入院している児童生徒に対して, 病院や原籍校から行われている学習支援には課題があり, 各々の事情に依存することになる. そして学習支援の課題を改善するためには, 国や自治体が原籍校の教員等, 入院児童生徒の周囲の人が行う学習支援の指針・具体的な方法を示すことが必要だろう.</p>
著者
山ノ上 奏 川間 健之介 中津 真美
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.156-166, 2019-12-25 (Released:2021-02-28)
参考文献数
23

【目的】脳性まひ者の就労状況と二次障害の変容を明らかにすることを目的とする. 【方法】現在, 一般就労している, または過去に就労していた20歳代から50歳代の脳性まひ者11名を対象とした. インタビュー調査で得られたデータは, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) 手法により分析を実施した. 【結果】脳性まひ者の叙述から就労に関わる二次障害の概念が生成された. 脳性まひ者は二次障害と機能低下への対応の必要性に気づき, 就労と自身の身体の変化を再考する経緯が認められた. これは脳性まひ者にとって仕事に影響を与える重要な側面であり, 二次障害の変容に合わせて就労意欲を維持することが重要という概念図が得られた. 【結論】脳性まひ者は, 仕事に意欲ややりがいをもって働いているが, 二次障害による身体の変化に合わせて, 就労状況を変えることが就労意欲の維持につながる.
著者
古山 貴仁 川間 健之介
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.163-172, 2018-03-31 (Released:2018-10-06)
参考文献数
29

二分脊椎症は、先天的に脊椎骨が形成不全となって起こる神経管閉鎖障害の1つであり、脳と脊髄の機能不全により神経学的認知特性を伴う。教科学習においても、これらの認知特性が要因となり、学習上の困難を呈すると思われるが、二分脊椎症児の学習の困難さに焦点を当てた研究は少ない。本研究では、二分脊椎症児12名を対象に、認知特性が算数学習に及ぼす影響について検討を行った。二分脊椎症児の知能検査(WISC-Ⅳ) の指標得点の分析を行った結果、全検査IQは標準の範囲内であるが、知覚推理・処理速度の指標得点の低さが指摘された。また、教研式標準学力検査( CRT)を用いた算数の学習習得状況の把握を行い、WISC-Ⅳの指標得点との相関関係を検討した結果、知覚推理と図形関連の問題の間で正の相関がみられた。これらの結果から、二分脊椎症児の算数学習において、図形や計算等の処理に困難さが見られることが示唆される。
著者
財前 知典 小関 博久 小関 泰一 小谷 貴子 田中 亮 平山 哲郎 多米 一矢 川崎 智子 清川 一樹 川間 健之介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.615-619, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
3 2

〔目的〕本研究は,入谷式足底板における長パッドが歩行および筋力に与える影響について,歩行時の骨盤加速度,大腿部筋活動,荷重応答期の時間的変化及び,静止時股関節内外転筋力変化を計測することにより明確にすることが目的である。〔対象〕健常成人男性15名(平均年齢25.1±3.2歳)を対象とした。〔方法〕表面筋電図,加速度計,Foot Switch,およびHand Held Dynamometerを用いて,歩行時大腿部筋活動,前額面上における加速度,並びに荷重応答期時間変化,股関節内外転筋力変化を自由歩行と長パッド貼付後で測定し,得られた測定値を対応のあるt検定を用いて分析した。〔結果〕長パッド貼付により,荷重応答期は早期に生じ,内側加速度の増大がみられ,立脚期初期における大腿二頭筋の活動減少,大腿直筋および大殿筋の活動増大,立脚期後半において長内転筋活動減少がみられた。また,長パッド貼付側の股関節外転筋筋力は増大した。〔結語〕長パッド貼付は,内側加速度及び歩行時大腿部筋活動を変化させ,股関節外転筋筋力を増大させる可能性が示された。
著者
財前 知典 小関 博久 田中 亮 多米 一矢 川崎 智子 小谷 貴子 小関 泰一 平山 哲郎 川間 健之介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI1023, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】歩行は個人によって特徴があり、それは健常成人においても同様である。健常成人における歩行の特徴を把握することは運動器疾患の予防の観点からも大変重要であると考える。そこで今回、踵離地(以下HL)において早期群と遅延群に分類し、両群における歩行時下肢筋活動の違いについて調査し、中足骨後方部分の横アーチ挙上における下肢筋活動変化と主観的歩きやすさの変化について比較検討した。【方法】被験者は健常成人17名24脚(男性16脚、女性8脚、平均年齢24.7±2.2歳)とした。各被検者の自然歩行をFoot switchにて計測し、その信号を基に立脚期を100%として時間軸の正規化を行った。Perryの歩行周期を基に49%をHL標準値として、49%よりHLが早い群を早期群、遅い群を遅延群に分類した。入谷式足底板における中足骨後方部分の横アーチパッドの貼付位置に準じて、パッドなしから2mmまでを0.5mm刻みで貼付し、その時の下肢筋活動と膝関節及び骨盤前方加速度を多チャンネルテレメータシステムWEB7000(日本光電社製)にて測定した。なお、それぞれの歩行距離は40mとした。被検筋は腓腹筋内外側頭(以下GM・GL)・前脛骨筋(以下TA)・後脛骨筋(以下TP)・長腓骨筋(以下PL)・大腿直筋(以下RF)・内外側ハムストリングス(以下MH・LH)とした。サンプリング周波数は1kHzとし、得られた加速度波形ならびに筋電図波形をBIMUTAS-Video for WEB(キッセイコムテック社製)で取り込み、筋電図波形では30~500Hz、加速度波形は0~10Hzの周波成分を抽出した。また、各被検筋に対して最大等尺性随意収縮を行い、安定した2秒間の筋電積分値(以下IEMG)を基準として各筋における歩行中の%IEMGを算出した。各被検筋における%IEMGを1%階級に分割したうえで、HL前10%、HL後10%の%IEMGを比較検討した。なお、加速度に関してはHL前10%、HL後10%及びHL時の加速度も併せて算出した。また、早期群及び遅延群におけるパッドの高さによる主観的歩きやすさの違いに関してはマグニチュード推定法(以下ME法)を用いて比較検討した。統計処理にはJava Script-STAR version 5.5.4jを用いて2要因5水準の混合配置の分散分析を行い、有意確率は5%未満とした。【説明と同意】被験者にはヘルシンキ宣言に沿った同意説明文書を用いて本研究の趣旨を十分に説明し、同意を得たうえで実施した。【結果】 HL早期群と遅延群では、遅延群においてHL前10%でGLの筋活動増大がみられ〔F(1,20)=11.11〕、HL後10%でTP、PLの有意な筋活動増大がみられた〔TP:F(1,20)=5.75、PL:F(1,20)=5.99〕。膝関節前方加速度に関しては、HL後10%で早期群に比較して遅延群において有意な増大がみられたが〔F(1,20)=7.51〕、骨盤の前方加速度においては有意差がみられなかった。また、ME法における歩きやすさの主観的評価については、早期群と遅延群において有意な差はみられなかったものの早期群において1.5mm以上のパッドを歩きやすいと感じ、遅延群においては1mm以下のパッドが歩きやすいと感じる傾向にあった〔F(1,20)=2.35〕。【考察】本研究の結果により、HL遅延群ではHL前10%においてGLの筋活動が増大し、HL後10%においてTPとPLの筋活動が増大した。これは遅延群ではHLが遅く、下腿前傾が増大するために制御作用として働くGLの筋活動が増大するものと推察する。また、HL後に生じるTPとPLの筋活動増大は、HLが遅延することにより、その後の身体前方推進力を増大する作用としてTPやPLの筋活動を増大させた事が考えられる。このことは、遅延群においてHL後の膝関節前方加速度の増大がみられたことと関連があるものと思われる。 また、ME法における歩きやすさの主観的評価に関しては有意差がみられなかったものの早期群では高めのパッドが歩きやすいと感じ、遅延群では低めのパッドを歩きやすいと感じる傾向にあった。中足骨後方部分の横アーチパッドは高く処方するとHLが遅延し、低めに処方するとHLが早期に生じるとされている。早期群ではパッドの高さを高く処方することで、HLが遅延した結果、主観的歩きやすさが増大し、遅延群ではパッドの高さを低く処方することでHLが早期に生じ、主観的歩きやすさが増大したものと推察される。【理学療法学研究としての意義】本研究ではHLを基準に健常成人を早期群と遅延群に分類し、歩行時下肢筋活動の違いを検証し、かつHLの速さに影響を及ぼすと考えられる中足骨後方部分の横アーチパッドの高さの変化によって両群の主観的歩きやすさの変化を比較検討した。健常成人は今後運動器疾患になる可能性があり、健常成人の歩行の特徴を明らかにすることは、運動器疾患の予防を行う上で非常に重要であると考える。
著者
榎本 洋司 川間 健之介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BbPI2174, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】理学療法において教示やフィードバック等の言語指示は、患者の運動学習を促進する上で重要であり、治療技術の一つとして考えられるが、実際の臨床で理学療法士(以下PT)がどのような教示・フィードバックを行っているのかを検討した報告は見当たらない。本研究の目的は、脳血管障害患者(以下CVA患者)への言語指示がどのように行われているのかを明らかにすることを目的とする。【方法】PTが、CVA患者に対し起立動作練習を実施している場面をVTR、ICレコーダーにて記録した。起立動作練習開始から起立動作を5回行うまでを1セッションとして記録した。対象は、当院に勤務する経験年数3年以上のPT15名(男/女:12/3、平均経験年数4.2±1.3年)であり、治療対象となる患者は、当院入院中のCVA患者42名(男/女:20/22、平均年齢73.5±13.5歳)とし、疾患の内訳は、脳梗塞25名、脳出血16名、くも膜下出血1名であり、右片麻痺12名、左片麻痺25名、両片麻痺2名であった。計42セッションの記録を行った。対象となるPTには、「治療対象となる患者に対して、起立動作を安全かつ安定して行えるよう動作の自立を治療目標とすること」と呈示した。記録から、言語指示の内容をテキスト化し、「教示・KP」、「KR」、「合図」、「その他」に分類した。言語指示の分類方法に関しては、信頼性の検討を目的とし、経験年数3年以上のPT8名により、分類方法に基づき4セッションのVTRの分析を行い、分類結果について一致率を求めた。その結果、κ係数0.754~0.948が得られ、分類方法の信頼性を確認した。分析は、言語指示の付与されるタイミングにより動作遂行中である起立・着座動作中と静止位である座位・立位の2場面での付与頻度を求めた。また徒手的操作として、VTRよりPTが介助・促通を行っている時間を計測し、またジェスチャーなど視覚的情報に関しては、その付与頻度を求めた。言語指示の付与頻度に関して、CVA患者の起立動作能力レベル(Berg Balance Scale起立動作項目:以下BBS)による比較、セッションの総時間に占める徒手的操作が加えられている時間の比率(以下%SUP)による差異を比較した。また、言語指示、視覚的情報の付与頻度について、治療対象となったCVA患者を失語群(失語症を有し、FIM理解の項目が5点以下:9例)、認知群(MMSE20点以下で、FIM理解の項目が5点以下:14例)、対照群(MMSE21点以上で、FIM理解の項目が6点以上:12例)に分類し比較した。分析は一元配置分散分析にて行い、有意確率5%未満を統計学的に有意とみなした。また、言語指示の内容に関しては、テキストマイニングを行い3群間で比較した。なお、テキストマイニングはテキストマイニングソフト・KH Coder(Ver.2)にて行った。【説明と同意】本研究は、筑波大学人間総合科学研究科研究倫理委員会の承認を受け、対象となるPTおよび患者には、研究内容について十分な説明のもと、書面にて同意を得た。【結果】BBSにより介助を有する1点以下と介助を有さない2点以上の者の2群で言語指示の付与頻度を比較すると、起立・着座動作中の「合図」の頻度が介助を有する群で有意に多かった。%SUPが50%未満と50%以上で比較したところ、50%以上の群では、座位・立位時の「教示・KP」および起立・着座時の「合図」が有意に多かった。また、患者の分類による3群の比較では、対照群に比較し、認知群において起立・着座時の合図が有意に多かったが、その他は有意な差異を認めなかった。また、言語指示の内容に関して、頻出語を抽出したところ、3群とも「はい」「そう」や「一回目」などの「回数」を示す語が上位を占めたが、対照群では、体の部位である「尻」や「膝」などが上位に挙がった。【考察】運動の方法を内容に含まない言語指示である「合図」は、治療対象となる患者の動作能力、徒手的操作の量、理解力によって、その付与頻度に差があったが、運動の方法を内容に含む「教示やKP」は、徒手的操作の量によってのみ差を認めた。このことは、学習段階に応じて、PTが「教示やKP」を付与する量を調整していることを示していると考えられる。また、3群間の比較より、「教示やKP」は患者の理解力に応じて、付与頻度ではなく、その内容を変化させることで治療を実施していることが明らかとなった。今後は、言語指示を患者がどの程度理解しているかや、言語指示の患者の運動学習への効果についての検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】運動学習を促進する上で教示やフィードバックなどの言語指示は、治療の成否を左右する要素の一つであると考えられるが、臨床においては経験則によるところが大きいと考えられる。本研究は、教示やフィードバックを一つの治療技術として発展させる上で、有用な知見を得るものになると考える。
著者
川間 健之介 佐島 毅
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

重度・重複障害児42事例の学習場面における車いす座位姿勢について検討した。その結果、頭部、体幹、足底の安定が図られていない事例が多かった。ポジショニングの改善により視覚探索と上肢の操作性に良好な変化の見られた8事例について検討した。学校の授業における腹臥位姿勢の活用とキャスパーアプローチの適用について検討した。集団による授業場面でのポジショニングについて3つの授業において検討した。これらの結果から、狭い学習空間の構築、能動的な視覚探索と主体的な上肢の使用を促すポジショニングが有効であった。
著者
安藤 隆男 西川 公司 川間 健之介 徳永 豊 千田 捷熙
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の二つから構成した。まず、(1)学習の主体である脳性まひ児の学習特性、(2)脳性まひ児の教科指導を行う担任教師、(3)地域における支援の担い手である肢体不自由特別支援学校の支援体制に注目し、通常学級における脳性まひ児の学習支援モデルの開発に関わる基礎的な資料・知見を得る研究である。次に、これらの基礎的な知見をふまえて、とくに附属肢体不自由特別支援学校との開発と展開に関わる共同研究である。この共同研究は、脳性まひ児の学習特性をふまえた教科指導モデルの構想と実践(第一研究)と通常学級における脳性まひ児の学習支援の展開(第二研究)からなる。前者は通常学級における脳性まひ児の学習支援に資する教科指導モデルを、肢体不自由特別支援学校において培ってきた専門性に基づいて構想、実践するものである。後者は前者で構想、実践した教科指導モデルを通常学級に適用、展開するものである。まず、第一研究では、WISC-IIIなどの結果から、認知的な課題がある児童生徒を対象とした各教科の指導の手だて等を開発し、授業において検証した。その結果、認知的な特性をふまえた指導の導入が脳性まひ児の学習パフォーマンスを高めることが事例的に明らかになった。第二研究では、第一研究で構想した教科指導モデルを通常学級の脳性まひ児に適用してその有効性を明らかにしつつも、脳性まひ児の認知に関わる担当教師の気づきの位相によって彼らへの支援を細かく想定する必要性が示唆された。脳性まひ児の学習パフォーマンスに関しては、認知的特性のみならず、運動動作の障害との因果関係も示唆され、改めて自立活動の指導との関連から課題を整理する必要がある。