著者
王 梓 大畑 佳久 千葉 卓哉
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.55-60, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
36

老化や寿命は,環境などに影響される確率的な要素が大きいと考えられていたため,遺伝学や分子生物学の研究対象として扱われるようになるのが発生学などと比べて遅れていた。しかし近年,モデル生物や高等生物をもちいた寿命研究が精力的に行われ,いくつかの老化制御シグナルが複数の生物種に共通して存在していることが明らかとなってきた。それらはインスリン/インスリン様成長因子-1(insulin/insulin-like growth factor-1: IGF-1),sirtuin 1(SIRT1),mammalian target of rapamycin(mTOR)経路などである。さらに,これらの細胞内シグナル伝達経路を標的として,実験動物の寿命を延長させる物質がいくつか報告されている。それらの物質は,カロリー制限による寿命延長効果を模倣する物質としても知られている。米国では,そのような物質の一つをもちいて抗老化薬としての大規模なヒト臨床試験が行われており,数年後にはその結果が報告されることになっている。本稿では,上記のこれまでに明らかになっている老化制御シグナル,およびその制御物質について概説するとともに,植物由来の機能性成分の中で老化制御因子として注目されている物質について紹介する。
著者
下川 功 森 亮一 千葉 卓哉
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

カロリー制限(CR)は、ミトコンドリア機能制御を通して抗老化効果を示すのかもしれない。我々は、CRがミトコンドリアタンパク質Cox6b1(cytochrome c oxidase (Cox)のサブユニット)を増加させることをすでに報告した。本研究は、Cox6b1の役割を明らかにするために、in vitro実験を行なった。結果は、Cox6b1がCoxを含むスーパーコンプレックスを形成することによって、ミトコンドリアの呼吸機能を増強すること、同時に発生する活性酸素は、Nrf2の活性化によって防御されることを示唆した。我々は、Cox6b1の発現にGSK-3βの抑制が関与することも示した。