著者
木村 恵 壁谷 大介 齋藤 智之 森口 喜成 内山 憲太郎 右田 千春 千葉 幸弘 津村 義彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

クローナル繁殖は植物の個体群動態と遺伝構造を特徴付ける重要な要因である。本研究では全国のスギ天然林13集団を対象に、クローナル繁殖の1つである伏条繁殖の頻度を明らかにし、遺伝要因と環境要因が伏条繁殖に与える影響を調べた。核SSR8座を用いたクローン解析の結果、10集団で伏条がみられ空間遺伝構造に強く影響していた。伏条の頻度は集団間で異なったことから、説明変数に環境要因(積雪深)、遺伝要因(Structure解析による<i>Q</i>値)、個体サイズ(胸高断面積合計:BA)、目的変数に各ジェネットが伏条繁殖するか否かとジェネットあたりのラメット数の2項目を用いて一般化線形混合モデルによりモデル選択を行った。その結果、伏条するか否かには<i>Q</i>値、積雪深との交互作用、BAが選択され、積雪の多い地域では個体サイズが小さく、遺伝クラスター1に由来しないジェネットほど伏条を行うという結果が得られた。またジェネットあたりのラメット数はBAが小さいほど減少する傾向がみられた。以上から、スギにとって伏条は氷期のような厳しい環境下で個体群を維持するための重要な繁殖様式として機能してきたと考えられた。
著者
千葉 幸弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.481-491, 1994-11-01
被引用文献数
3

1991年9月の台風19号によって発生したスギ人工林の激害地を1992年3月に調査して、暴風によって生じる樹幹の折損機構を沢田モデルによって解析した。ほとんどの個体が折損した二つの壊滅的被害地それぞれに20m×20mのプロットを設け、すべての個体のサイズ(樹高、胸高直径など)および折損木の折損高、折損部直径を測定した。樹高曲線に拡張相対成長式を採用し、生枝下高が林分に固有の一定値をとると仮定することによって、風圧力によって樹幹内に生じる応力をシミュレートした。幹形を単テーパービームとみなして推定された折損高は、概して実際の値とよく一致した。樹幹内曲げ応力分布から、風圧力による樹幹の折損位置は材内部の物理的欠点のために予測位置を中心にばらつき、台風を生き残った立木でも樹幹に沿ってモメが発生していると考えられた。いくつかの樹幹形状比に応じた折損位置についても検討したが、このことは被害材の利活用および被害林分のその後の処理を考える上で重要である。