- 著者
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千葉 幸弘
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.6, pp.481-491, 1994-11-01
- 被引用文献数
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3
1991年9月の台風19号によって発生したスギ人工林の激害地を1992年3月に調査して、暴風によって生じる樹幹の折損機構を沢田モデルによって解析した。ほとんどの個体が折損した二つの壊滅的被害地それぞれに20m×20mのプロットを設け、すべての個体のサイズ(樹高、胸高直径など)および折損木の折損高、折損部直径を測定した。樹高曲線に拡張相対成長式を採用し、生枝下高が林分に固有の一定値をとると仮定することによって、風圧力によって樹幹内に生じる応力をシミュレートした。幹形を単テーパービームとみなして推定された折損高は、概して実際の値とよく一致した。樹幹内曲げ応力分布から、風圧力による樹幹の折損位置は材内部の物理的欠点のために予測位置を中心にばらつき、台風を生き残った立木でも樹幹に沿ってモメが発生していると考えられた。いくつかの樹幹形状比に応じた折損位置についても検討したが、このことは被害材の利活用および被害林分のその後の処理を考える上で重要である。