著者
千葉 潤子 小澤 雄樹 坂本 征三郎
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.305-314, 2001-07-30

ヒトの唾液分湯量は種々の全身性疾患により影響されるが,これらの疾患に対する罹患性はヒト白血球抗原(HLA)のクラスII遺伝子の多型により影響されることが知られている。そこで,この研究の目的はHLAの遺伝子型が唾液分泌量に影響するのか否かを調べるために,唾液分泌量とHLA対立遺伝子型の発現頻度との相関を明らかにすることである。HLA-DRB1,HLA-DQA1,HLA-DQB1の各対立遺伝子型を,親戚関係にない日本人105名(男性78名,女性27名),平均年齢20.5歳(18〜28歳)の健康な青年を被験者とし,ポリメラーゼ連鎖反応一シークエンス特異性オリゴヌクレオチドプローベ法(PCR-SSOP)を用いて分析した。パラフィンワックスでの刺激唾液量を測定し,被験者を各々0.7ml/min 以下,0.7〜2.0ml/min,2.0ml/min以上の3群に分類した。0.7ml/min以下群でのHLA-DRB1*0901,HLA-DQA1*0301,HLA-DQB1*0303の対立遺伝子頻度は2.0ml/min以上群のそれらに比較して統計学的に有意に高かった(各々p=0.015,OR=6.33;p=0.0053,pc=0.042,OR=14.17;p=0.0062,OR=7.92)。これに対して,2.0ml/min以上群のHLA-DRB P0802,HLA-DRB1*1302,HLA-DRB1*1501,HLA-DQA1*0102の対立遺伝子頻度は0.7ml/min 以下群に比較して統計学的有意に高かった(各々p=0.04;p=0.04;p=0.04;p=0.0024,pc=0.019,OR=0.06)。以上の結果から,HLAクラスII対立遺伝子,もしくはこれに連鎖している遺伝子が唾液分泌に関与していることが示唆された。