著者
小澤 雄樹 岩倉 政城 田浦 勝彦 押切 邦中 坂本 征三郎
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.678-684, 1998-10-30
被引用文献数
8

某健康保険組合支部が運営している歯科診療室において,被保険者本人に対する歯科保健活動を行った。本研究の歯科保健活動内容は,歯科検診,歯科保健指導,歯科処置,歯科治療の一般開業医への依頼である。歯科検診として質問紙調査,口腔内写真撮影,硬組織検査,WHOのCPITNの評価, O'Learyらのplaque control record(PCR)の評価を行った。歯科保健指導として歯口清掃指導を行った。歯科処置としては,主にスケーリング,ルートプレーニングを中心とした歯両疾患の基本処置と初期う蝕の充填処置を行った。 歯科保健活動導入前後の歯科診療報酬請求件数と請求点数を集計した。また,同じ健康保険組合で歯科保健活動を行っていない隣接した地域での被保険者群を対照とし,同様の集計を行い統計学的に差の検定をした。 その結果,以下の知見が得られた。1.被保険者1人あたりの診療報酬請求件数と請求点数は,歯科保健活動を始めると一時的に増加するが,2から3年目になると歯科保健活動を行っていない対照群よりも統計学的有意に低くなった。2.被保険者1人あたりの累積診療報酬請求件数と累積請求点数の増加率は,歯科保健活動開始後,対照群より統計学的有意に小さくなった
著者
千葉 潤子 小澤 雄樹 坂本 征三郎
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.305-314, 2001-07-30

ヒトの唾液分湯量は種々の全身性疾患により影響されるが,これらの疾患に対する罹患性はヒト白血球抗原(HLA)のクラスII遺伝子の多型により影響されることが知られている。そこで,この研究の目的はHLAの遺伝子型が唾液分泌量に影響するのか否かを調べるために,唾液分泌量とHLA対立遺伝子型の発現頻度との相関を明らかにすることである。HLA-DRB1,HLA-DQA1,HLA-DQB1の各対立遺伝子型を,親戚関係にない日本人105名(男性78名,女性27名),平均年齢20.5歳(18〜28歳)の健康な青年を被験者とし,ポリメラーゼ連鎖反応一シークエンス特異性オリゴヌクレオチドプローベ法(PCR-SSOP)を用いて分析した。パラフィンワックスでの刺激唾液量を測定し,被験者を各々0.7ml/min 以下,0.7〜2.0ml/min,2.0ml/min以上の3群に分類した。0.7ml/min以下群でのHLA-DRB1*0901,HLA-DQA1*0301,HLA-DQB1*0303の対立遺伝子頻度は2.0ml/min以上群のそれらに比較して統計学的に有意に高かった(各々p=0.015,OR=6.33;p=0.0053,pc=0.042,OR=14.17;p=0.0062,OR=7.92)。これに対して,2.0ml/min以上群のHLA-DRB P0802,HLA-DRB1*1302,HLA-DRB1*1501,HLA-DQA1*0102の対立遺伝子頻度は0.7ml/min 以下群に比較して統計学的有意に高かった(各々p=0.04;p=0.04;p=0.04;p=0.0024,pc=0.019,OR=0.06)。以上の結果から,HLAクラスII対立遺伝子,もしくはこれに連鎖している遺伝子が唾液分泌に関与していることが示唆された。