著者
升岡 正 黛 正己 新井 拓 谷 純一
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.93-98, 2007-03-15 (Released:2007-08-31)
参考文献数
17
被引用文献数
8 13

冷間圧延により圧下率を10%から40%まで変化させた低炭素ステンレス鋼SUS316L材を用いてCT試験片を製作し,BWR炉水模擬環境におけるSCCき裂進展試験を実施した.試験では一定荷重を与えコンパクト型 (1 T-CT) 試験片の初期応力拡大係数が20 MPa√mあるいは30 MPa√mになるようにした.マイクロビッカース硬さ (平均値:Hv) の増加に伴い,き裂進展速度は増大する傾向を示し,Hv 250以上では熊谷らによる加工硬化材の割れ進展速度暫定線図より大きな進展速度を示した.しかし,これら硬さ (圧下率) の大きい試験片の割れ形態はシュラウド熱影響部などに生じたSCC損傷と異なり粒内型SCCが支配的であった.一方,Hv 230 (圧下率 10%) の条件の試験片ではほぼ完全な粒界割れとなり,実機に生じたSCCと同様の割れ形態であった.これらの結果から,冷間加工材に対するき裂進展試験を行う際には,破面形態を十分に考慮し,実機と同等な破面を呈する加工度の試験片を用いる必要性が示唆された.