著者
林 ゑり子 高橋 明里 青山 真帆 升川 研人 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.109-118, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
23

【目的】(1)認知症患者の終末期における積極的治療の選好に関して遺族,医療者間での違い,(2)終末期医療の選好の関連要因を明らかにする.【方法】認知症患者の遺族(618名)と,医師(206名),看護職(206名),介護職(206名)の医療者に2019年10月にインターネット調査した.【結果】認知症患者の遺族は終末期に「食べられなくなった際の胃ろう;49%」(p<0.01),医療者は「大きな病気になった際の手術:39%」(p<0.01)を希望した.多変量解析で代理意思決定者を望む遺族は点滴(OR: 1.62, p=0.02),内服の継続(OR: 1.74, p<0.01)を,医療者はよい看取りの要件で人との関係性が重要な人ほど,手術(OR: 2.15, p<0.01),延命治療(OR: 2.00, p=0.01)を希望した.【結論】医療者と家族の間で,終末期の治療に関する選好が必ずしも一致しないため,治療選択時に配慮する必要がある.
著者
田口 菜月 升川 研人 青山 真帆 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-200, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
15

【目的】緩和ケア病棟の質改善活動の実態と遺族調査のアウトカムとの関連を明らかにする.【方法】J-HOPE4に参加した187施設にアンケート調査を実施し,質改善活動実施状況と,施設を利用した遺族の全般的満足度,ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)との関連を検討した.【結果】日本ホスピス緩和ケア協会の自施設評価共有プログラムへの参加,多職種カンファレンスの開催頻度・カンファレンス参加職種数が多い施設で全般的満足度やGDIが有意に高かった.遺族ケアを実施している施設で全般的満足度,CESが有意に高かった.遺族への電話を実施している施設でBGQが有意に低く,葬儀や通夜への参列を実施している施設でPHQ-9が有意に低かった.【結論】質改善活動を積極的に実施している施設では,緩和ケアの質が高く遺族の悲嘆や抑うつを軽減する可能性がある.
著者
宮川 裕美子 伊藤 怜子 升川 研人 宮下 光令 山極 哲也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-64, 2022 (Released:2022-05-24)
参考文献数
11

【目的】日本バプテスト病院ホスピス病棟において,チャプレンの司会により行っている「お別れ会」の実際を報告し,お別れ会に対する遺族の感想を記述する.【方法】遺族84名に対して,お別れ会の感想を質問紙票にて調査し,自由記述の内容分析を行った.【結果】回答者40名のうち,お別れ会を経験した遺族は15名であった.お別れ会の内容でよかった点として,[祈祷(祈り)],[スタッフの参加]などが抽出され,遺族はお別れ会を行うことによって,[区切り],[気持ちの平安],[心身の癒し]を感じ,[振り返りの機会]や,[心に残る特別な思い出]を得ていた.【考察】お別れ会は,遺族の気持ちの平安や喪失感の軽減の助けとなり,死別後の遺族の悲嘆の軽減につながる可能性が考えられた.本調査から得られた遺族の声をもとに,遺族の思いに寄り添った,より質の高い遺族ケアの実施や,今後のさらなる研究につなげていきたい.
著者
米永 裕紀 青山 真帆 森谷 優香 五十嵐 尚子 升川 研人 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.235-243, 2018 (Released:2018-08-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

緩和ケアの質や遺族の悲嘆や抑うつの程度に地域差があるかを目的とし,2014年と2016年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスはCare Evaluation Scale(CES),ケアのアウトカムはGood Death Inventory(GDI),悲嘆はBrief Grief Questionnaire(BGQ),うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)で評価した.関東をリファレンスとし対象者背景で調整し,比較した.CESとGDIは調整後も九州・沖縄で有意に高かった(p<0.05).BGQは調整後も中部,近畿,中国,九州・沖縄地方で有意に低かった(p<0.05).PHQ-9は調整後,有意差はなかった.いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.