著者
田中 雄太 加藤 茜 伊藤 香 五十嵐 佑子 木下 里美 木澤 義之 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.129-136, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
24

【目的】緩和ケアの実践には,現場の医療者の認識や受容性などを考慮することが重要である.本研究の目的は,救急・集中治療領域の医師の緩和ケアに対する認識や緩和ケア実践の障壁を明らかにすることである.【方法】集中治療室および救命救急センターに勤務する医師を対象に緩和ケアに関する質問紙調査を実施し,自由記述データを質的に分析した.【結果】873名に質問紙を送付し,436名から回答を得た(回収率50%).そのうち,自由記述欄に回答した95名(11%)を分析対象とした.【結論】本研究の結果から,わが国における救急・集中治療領域の医師は緩和ケアを自らの役割と捉え,日常的なケアの一部と考えて実践している一方で,緩和ケア実践の難しさや不十分さを感じていることが推察された.実践の障壁として,緩和ケアチームのマンパワー不足と利用可能性,救急・集中治療領域における緩和ケアに対する認識が統一されていないことなどが存在していた.
著者
大坂 巌 坂下 明大 木澤 義之 細川 豊史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.31-37, 2018 (Released:2018-02-16)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

【目的】非がん疾患に対する緩和ケアについて実態調査を実施した.【方法】日本緩和医療学会代議員196名を対象にインターネットアンケート調査を行った.非がん疾患の診療経験,緩和ケアに関する考え方,緩和ケアを実践するうえでの困難感,必要な教育内容について選択式の質問で尋ねた.【結果】111名(57%)より回答を得た.回答者の99%は非がん疾患の診療を経験していたが,63%は終末期の累計経験患者数が50人未満であった.回答者の80%は非がん疾患に対する緩和ケアに自信がなく,予後予測の難しさや緩和ケアに関する診療加算が算定できないことなどのために83%が困難感を感じていた.教育において重要なことは,コミュニケーション,多職種チーム医療の順であった.【結論】日本緩和医療学会代議員は,非がん疾患に対する緩和ケアの必要性を認識しているが,経験豊富な代議員は少なく,8割以上が自信のなさと困難感を感じていた.
著者
古村 和恵 宮下 光令 木澤 義之 川越 正平 秋月 伸哉 山岸 暁美 的場 元弘 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 森田 達也 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.237-245, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

より良い緩和ケアを提供するために, がん患者やその家族の意見を収集することは重要である. 本研究の目的は, 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM)の介入前に行われた, 進行がん患者と遺族を対象とした質問紙調査で得られた自由記述欄の内容を分析し, がん治療と緩和ケアに対する要望と良かった点を収集・分類することである. 全国4地域の進行がん患者1,493名, 遺族1,658名に調査票を送付し, 回収した調査票のうち, 自由記述欄に回答のあったがん患者271名, 遺族550名を対象とした. 本研究の結果から, がん患者と遺族は, 患者・医療者間のコミュニケーションの充実, 苦痛緩和の質の向上, 療養に関わる経済的負担の軽減, 緩和ケアに関する啓発活動の増加, 病院内外の連携システムの改善, などの要望を持っていることが明らかとなった. Palliat Care Res 2011; 6(2): 237-245
著者
岩満 優美 平井 啓 大庭 章 塩崎 麻里子 浅井 真理子 尾形 明子 笹原 朋代 岡崎 賀美 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.228-234, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

本研究では, がん診療連携拠点病院を中心とした緩和ケアチームで一定の活動経験のある7名の医師および看護師を対象に, フォーカスグループインタビューを実施し, 緩和ケアチームが心理士に求める役割について検討した. インタビュー内容の質的分析の結果, 緩和ケア領域に携わる心理士が役割を果たすために必要な知識として, 第1に, 基本的ならびに専門的な心理学的知識とスキルが挙げられた. 第2に, がんに関する全般的ならびに精神医学的知識が挙げられた. その他に, 他職種の役割と医療システムに関する知識が求められており, 医療者への心理的支援を望む声も認められた. 以上より, 本研究で明らかにされた心理士に求める役割とは, がん医療に関する幅広い知識をもとに他職種と十分にコミュニケーションをとりながら, 心理学的な専門性を活かして, 患者・家族, および医療者に心理的支援を行うことであった. Palliat Care Res 2009; 4(2): 228-234
著者
平山 英幸 里見 絵理子 木澤 義之 宮崎 万友子 田上 恵太 関根 龍一 鈴木 梢 余谷 暢之 菅野 康二 安保 博文 坂下 明大 佐藤 一樹 中川 左理 中澤 葉宇子 浜野 淳 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.171-180, 2022 (Released:2022-12-14)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】患者報告型アウトカムを用いて緩和ケアの質をアウトカムの視点から評価するための患者登録システムの実施可能性を検証すること.【方法】電子的データ収集による患者登録システムを2021年に8施設で運用した.1カ月間に緩和ケアチームが新規介入依頼を受けた全入院患者を前向きに登録した.症状評価はIPOSまたはESASを介入時,3日後,介入から1週間ごとに取得した.主要評価項目は患者と医療者による症状評価尺度への回答率である.【結果】318人が登録.患者の回答率は介入時59.1%,介入後37.0%で医療者の回答率は介入時98.4%,介入後70.3%だった.緩和ケアチームからは「患者の回答はサポートが必要で,タブレットよりも紙がよい」,「調査日や全体の管理が負担」などの意見が出た.【考察】実施可能性があると考えられる一方で,システムや運用方法の改善点が明らかになり,実装に向けた貴重な情報が得られた.
著者
伊勢 雄也 森田 達也 前堀 直美 轡 基治 塩川 満 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.213-218, 2010 (Released:2010-08-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

現在, 麻薬及び向精神薬取締法施行規則が改正され, 麻薬小売業者間での麻薬の譲渡/譲受が可能となったが, その制度の問題点については明らかにされていない.本研究は, この制度の普及と運用上の障害を明らかにすることを目的として行われた. 全国3,000施設の薬局の薬剤師に対して質問紙による郵送調査を行い, 1,036施設より回答を得た. 麻薬小売業者間譲渡許可免許を取得することにより麻薬が取り扱いやすくなる, またはなったと回答した施設は全体の20.2%であった. 取り扱いやすくならない, またはならなかった理由として, 手続きの煩雑さに関する問題のほかに, 麻薬の譲渡/譲受の規制についての問題点が挙げられた. 以上の結果より, がん患者の除痛を適切に地域で行えるよう薬局が機能するためには, 他の医薬品と同じように「医薬品販売業者への返品を可能にする」, または「備蓄薬局からの継続的な譲渡を可能にする」などが必要であることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 213-218
著者
田口 菜月 升川 研人 青山 真帆 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-200, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
15

【目的】緩和ケア病棟の質改善活動の実態と遺族調査のアウトカムとの関連を明らかにする.【方法】J-HOPE4に参加した187施設にアンケート調査を実施し,質改善活動実施状況と,施設を利用した遺族の全般的満足度,ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)との関連を検討した.【結果】日本ホスピス緩和ケア協会の自施設評価共有プログラムへの参加,多職種カンファレンスの開催頻度・カンファレンス参加職種数が多い施設で全般的満足度やGDIが有意に高かった.遺族ケアを実施している施設で全般的満足度,CESが有意に高かった.遺族への電話を実施している施設でBGQが有意に低く,葬儀や通夜への参列を実施している施設でPHQ-9が有意に低かった.【結論】質改善活動を積極的に実施している施設では,緩和ケアの質が高く遺族の悲嘆や抑うつを軽減する可能性がある.
著者
木澤 義之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-109, 2020

アドバンス・ケア・プランニングとは「将来の意思決定能力の低下に備えて、今後の治療・ケアに関する意向、代理決定者などについて患者・家族、・医療者があらかじめ話し合うプロセス」を指す。その実践の要点は、1)侵襲的でないコミュニケーション、2)代理決定者をまず選定し、代理決定者とともに意思決定を進めること、3)事前指示書などの書類の作成にとらわれず、患者の価値感や決断の理由を探索すること、である。
著者
山本 亮 木澤 義之 永山 淳 上村 恵一 下山 理史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.73-78, 2021 (Released:2021-03-16)
参考文献数
9

【目的】がん対策推進基本計画の改定で緩和ケア研修会の開催方法が変更され,対象が医師以外にも拡大された.本研究の目的は,新指針緩和ケア研修会の教育効果を受講生の自己評価により検証することである.【方法】2018年度に新指針緩和ケア研修会を修了したすべての受講生を対象とし,研修開始時と修了時の緩和ケアの知識(PEACE-Q)および緩和ケアの困難感(PCDS)のスコアを比較した.【結果】11,124名が研修会を修了した.研修開始時と修了時を比較すると,PEACE-Qは24.1から30.0と上昇(p<0.0001),PCDSは45.2から39.2へと低下した(p<0.0001).職種ごとの解析でも同様の結果であった.【結論】新指針緩和ケア研修会でも,研修会修了時に緩和ケアの知識は向上し,困難感は低下していた.職種ごとの解析でも同様の結果であり,本研修会の教育効果は職種によらず認められることが示唆された.
著者
岩満 優美 平井 啓 大庭 章 塩崎 麻里子 浅井 真理子 尾形 明子 笹原 朋代 岡崎 賀美 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.228-234, 2009
被引用文献数
2 5

本研究では, がん診療連携拠点病院を中心とした緩和ケアチームで一定の活動経験のある7名の医師および看護師を対象に, フォーカスグループインタビューを実施し, 緩和ケアチームが心理士に求める役割について検討した. インタビュー内容の質的分析の結果, 緩和ケア領域に携わる心理士が役割を果たすために必要な知識として, 第1に, 基本的ならびに専門的な心理学的知識とスキルが挙げられた. 第2に, がんに関する全般的ならびに精神医学的知識が挙げられた. その他に, 他職種の役割と医療システムに関する知識が求められており, 医療者への心理的支援を望む声も認められた. 以上より, 本研究で明らかにされた心理士に求める役割とは, がん医療に関する幅広い知識をもとに他職種と十分にコミュニケーションをとりながら, 心理学的な専門性を活かして, 患者・家族, および医療者に心理的支援を行うことであった. Palliat Care Res 2009; 4(2): 228-234
著者
野里 洵子 宮本 信吾 森 雅紀 松本 禎久 西 智弘 木澤 義之 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.297-303, 2018 (Released:2018-09-26)
参考文献数
24

【目的】緩和ケアの研修・自己研鑽に関するニーズに影響する要因を探索すること.【方法】緩和ケア医を志す卒後15年以内の医師を対象に質問紙調査を行い,満たされないニーズ(以下ニーズ)を5件法で評価した.ニーズは因子分析を行い,各因子の平均点を従属変数,背景要因を独立変数として単変量解析を行った.【結果】対象者284名に対して回答者は253名(89%),初期研修医・緩和ケア専門医などを除く229名を解析対象とした.ニーズは,研究・時間・キャリア・ネットワーク・質・幅広さの6つの因子が同定された.ニーズの因子得点に効果量≥0.4の有意差があった背景要因は,1)認定研修施設に勤務していない,2)勤務先・研修先が大病院ではない,3)施設内緩和ケア医数が2名以下であった.【考察】認定研修施設ではない病院,または小規模,または緩和ケア医の少ない環境で働く若手医師が受ける研修体制の改善は優先度が高い課題と考えられる.
著者
米永 裕紀 青山 真帆 森谷 優香 五十嵐 尚子 升川 研人 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.235-243, 2018 (Released:2018-08-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

緩和ケアの質や遺族の悲嘆や抑うつの程度に地域差があるかを目的とし,2014年と2016年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスはCare Evaluation Scale(CES),ケアのアウトカムはGood Death Inventory(GDI),悲嘆はBrief Grief Questionnaire(BGQ),うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)で評価した.関東をリファレンスとし対象者背景で調整し,比較した.CESとGDIは調整後も九州・沖縄で有意に高かった(p<0.05).BGQは調整後も中部,近畿,中国,九州・沖縄地方で有意に低かった(p<0.05).PHQ-9は調整後,有意差はなかった.いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.
著者
長岡 広香 坂下 明大 濵野 淳 岸野 恵 岩田 直子 福地 智巴 志真 泰夫 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.789-799, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
14

緩和ケア病棟への転院に関する障壁を明らかにすることは,がん患者が望んだ場所で療養できる体制の整備を通して,quality of lifeへの寄与が期待できる.本研究では,がん終末期患者の緩和ケア病棟転院の障壁を明らかにすることを目的に,がん拠点病院424施設のソーシャルワーカー・退院調整看護師を対象に自記式質問紙調査を行った.探索的因子分析により,緩和ケア病棟への転院の障壁11因子が同定された.病状・予後に関して医師から患者に十分説明を行うこと,適切な時期に気持ちの配慮をしながら多職種で意思決定し緩和ケア病棟に紹介すること,がん拠点病院と急性期病院,緩和ケア病棟,在宅等の地域の医療機関との緩和ケア連携体制を整備すること,緩和ケア病棟への入院が必要な患者を適切に評価する仕組みを作ることは,ソーシャルワーカー・退院調整看護師から見た緩和ケア病棟転院の障壁を軽減する可能性があると考えられた.