著者
半田 幸子 堀内 邦雄 青木 和夫
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.139-147, 2004-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
35
被引用文献数
30 15

足趾および足底が立位や歩行に果たす役割は重要である. 本研究は足趾把握筋力の測定器を作製し, 足趾把握筋力の加齢による変化と, 立位の平衡調整能力および歩行時間との関係について検討することを目的とした. 測定器は Smedley 式握力計を改良して試作した. 足関節を保持する支柱の位置は被験者の足長に応じて調整可能にした. 測定値の再現性はR=0.953で良好であることを確認した. 被験者は各年代層を含む男女97名 (20~84歳) とした. 測定項目は足趾把握筋力, 握力, 重心動揺, 片足立位保持時間, 上肢前方到達距離および, 10m歩行時間とした. その結果以下のことが明らかになった. (1) 足趾把握筋力は加齢により低下し, 低下率は握力よりも大きい傾向を示した. (2) 足趾把握筋力と握力, 開眼片足立位保持時間, 上肢前方到達距離および, 10m歩行時間の間には有意な相関が認められた. (3) 重心動揺とは相関が認められなかった. これらのことを検討した結果, 足趾把握筋力は立位の保持や前傾への耐性などの平衡調整に影響を与えると考えられ, 高齢者の転倒事故対策などに応用可能であると思われる.