- 著者
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南 享二
河村 喜美恵
- 出版者
- 日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.5, pp.136-140, 1954
アカメガシワとスギについてその木材と木材の室温こよる1%NaOH抽出残渣の乾溜を行つた。<br> アカメガシワの場合,アラカシの場合と同様に20°C毎の溜出液量の変化を見ると260°Cにおける極大値が1% NaOH処理により消失すること力現出された。酸の生成の少いスギにおいてはこの現象は見られない。<br> 溜出する酷酸量についてみると次のことがわかつた。溜出全量において1% NaOH抽田残渣の場含無処理木材に比し著しく酸量を誠じ,しかもその減量は1% NaOH抽出液中に定最された酷酸にほぼ等しい。また注目すべきはアカメガシワ・スギ・アラカシの3種の樹種間において, 1% NaOH抽出残1査の場合ほぼ等しい酸量が得られており,溜出曲線もほぼ相等しい。<br> 単位溜分中の溜出酸の濃度については,アメガシワおよびスギは共に,木材の場合はそれぞれ240°C, 260°Cに最大値をもつが、1% NaOH抽出残渣の場合はこれが失われている。また1% NaOH抽出残渣については上述の2樹種およびアラカシの間においてほぼ似た変化の曲線をえがき.最大値は280~300°Cの溜分にあり,全酸として約10%, 揮発酸として約5%のほぼ一致した値を示した。なお酸の生成の少いスギにおいては無処理木材の場合において同じ溜分に極大が存在し,その極大値が上記のものとほぼ等しい。ペントーザンの母は木材の場合と1%NaOH抽出残淺:の場含との間に署しい差はなく,かつ樹種の聞では甚しく異るので,もしペントーザンが溜出する醋酸の有力な根源であるとすれば, 1% NaOH抽出残澄の乾溜において一定の酸の溜出量を得る事実を説明し得ない。<br> 以土の事実にもとずいて考えると, 著量の醋酸を溜出する本材の場合には大部のものが室温で1% NaOHにより除去ぜられる原木材中のアセチル基に由来するものであり、したがつて溜出酸量の樹腫による差異はこのアセチル基の量の差によるものであると考えられる。