- 著者
-
熊谷 誠
南 正昭
- 出版者
- 東北地理学会
- 雑誌
- 季刊地理学 (ISSN:09167889)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.77-93, 2021 (Released:2022-01-14)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
4
4
釜石市唐丹町本郷は,三陸の津波常襲地にあって,昭和三陸津波後の高所移転集落として知られる。かつて山口弥一郎は,元の集落位置へ戻る「原地復帰」への懸念を指摘したが,「原地」には防潮堤建設等により居住はできなくなっていた。一方で,昭和津波浸水域を含む「低地」への居住が拡大していた。東日本大震災では,高所移転地では浸水被害を免れた一方で,「低地」は壊滅的な被害を受けた。東日本大震災後の復興事業に伴い,同津波浸水域への居住は法的に禁止され,「低地居住」への懸念も解消された。本稿は,唐丹本郷におけるこのような変遷の過程を,「低地居住」の実態と要因群も含めて,明らかにした。