著者
南方 久和
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.743-749, 1998-10-05

最近スーパーカミオカンデ実験グループによってニュートリノ振動現象の証拠が発見された. これはニュートリノという粒子が質量をもつことを意味し, 弱い相互作用に関する大発見にとどまらず, 素粒子の標準模型の彼方を初めてプローブした画期的成果である. 本稿では, この発見に導いた宇宙・天体起源のニュートリノ観測におけるニュートリノ振動現象の包括的説明を与え, この事実から帰結されるニュートリノ質量の物理について主に理論的観点から解説する. スーパーカミオカンデ実験の最新結果については, 本号「話題」欄の梶田氏の記事を参照していただきたい.
著者
南方 久和 安田 修 梶田 隆章 梶田 隆章
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

スーパー神岡実験によって質量とフレーバー混合が存在することが発見されたニュートリノという素粒子が未知の非標準的相互作用(NSI)をもつ可能性について研究した。NSIが存在する系におけるニュートリノ振動の全般的性質を明らかにし、全く新しいタイプの多重解の存在を見いだした。ニュートリノファクトリーを用いるNSI探索における積年の問題である1-3角とNSIとの混同の問題の解決方法を提示し、NSIの最も感度の高い探索方法を明らかにした。さらに、ミュー・タウニュートリノチャンネルにおける非標準的相互作用の探索には数年前に提唱した神岡・韓国2検出器系が有利であることを指摘し、この感度評価を行った。
著者
浅川 正之 南方 久和
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.263-272, 2000-04-05

宇宙初期に存在していたと考えられるクォークがもはや核子や中間子内に閉じ込められていない相への転移に際しては,同時に「カイラル対称性」の回復という相転移が起きると信じられている.本稿ではこのカイラル相転移に伴って生じると考えられている「誤ったカイラル軸を持つ偽真空」のドメイン形成の力学について,非専門家向けに解説する.超相対論的原子核衝突実験によってこれらの相転移を実験室で観測できる可能性が現実的になってきた現在,このドメイン構造の物理は非平衡な環境下で進行する動的相転移過程の実験室として,広い分野の方々に興味をもって頂けると期待している.