著者
南條 沙也香 矢崎 純子 松田 泰典 小松 博
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成29年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.26, 2017 (Released:2017-06-30)

真珠は、主に炭酸カルシウムとタンパク質からなる多層薄膜構造である。文化財において古墳から出土した真珠は白濁化しており、タンパク質が分解などにより大部分が消失した結果との報告がある(1987 年、「鳥浜貝塚」調査報告)。このことはタンパク質が保存環境により変質する場合があることを示し、タンパク質シートが真珠の結晶層の維持に重要な役割を果たしていると考えられる。現在流通している真珠は加工されているものが多く、その工程の中に行われる溶液に浸漬、加熱乾燥などで真珠層内部の有機物を多く含む稜柱層などの脆弱な箇所から、層われ、ヒビ、剥離などの劣化が起こる場合もある。さらにこれらの劣化現象は保管時の温湿度変化などでさらに顕在化する。これらの真珠の欠陥は真珠の品質に大きく関係しているため、流通の際には注意する必要がある。今回はこれらの劣化現象のうち加工キズの劣化現象について、見え方、構造、原因などで体系化することを目的とした。特に加工キズの中のひびについて断面の構造を観察し、その成因について考察した。また、温度サイクルによる加速実験を行い、どのように顕在化するかを検証した。