著者
南谷 和利 笠原 嘉介 ITOH Mamoru
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

近年、高齢者のスポ-ツ愛好家が増加する中、マラソンのような激しいスポ-ツ活動に参加する高齢者が目立つようになってきた。しかしながら、同時にスポ-ツ中に突然死する事故も急増している。その原因として、循環器系の器質的障害が報告されているが、未だ解明されていない点が多い。また、習慣的にトレ-ニングを継続してきた者にも運動中の急死が起こることがある。本研究では、運動中における急死の発生機序を検討するための基礎的資料を得ることを目的として、市民マラソンに参加した経験をもつ高齢者マラソンランナ-を対象に、循環器系機能を中心とした体力測定、および血液生化学検査を実施した。平成2年度は、被験者14名(平均年齢61.2歳)を対象に安静時の心電図記録、体力測定、血液生化学検査などを実施し、被験者らのトレ-ニング状況を調査した。平成3年度では、被験者らのトレ-ニング状況などを引き続き調査し、被験者7名(平均年齢68.2歳)を対象にマラソンレ-ス前後の血液生化学検査所見の検討を行った。被験者らの体力レベルは個々に異なり、バラツキはみられたものの、一般の高齢者と比較した結果、一部を除き全体的に優れていたと思われる。心電図の記録では、数名の被験者に異常所見が認められたが、現状の運動継続には支障のないものと判断された。血液生化学検査所見においては、加齢や運動による影響と考えられる異常値が認められた。現在、変化の認められた血液生化学検査結果について運動の影響を検討している。本研究結果から、突然死に対する科学的対処法を導き出すことはできない。今後、本研究結果を基礎にして、さらに同様な知見を積み重ねていくとともに、高齢者が安全に運動を行うためのメディカルチェックを検討していく予定である。