著者
籠谷 裕人 南谷 崇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.548-556, 1994-08-25
被引用文献数
12

従来,認識されてきた非同期式回路の有用性が,近年の論理素子の高速化に伴い再び注目を集めている.本論文では,論理素子遅延や配線遅延の上限が予測できないという厳しい遅延仮定のもとに,非同期式回路を合成する基本的な手法を提案する.本手法は,レジスタ間の転送や演算といった基本的な操作の間に成り立つべき依存関係を仕様とし,それを信号遷移の因果関係に直接写像することによって非同期式回路を実現する.具体的にはまず基本操作間の依存関係からなるグラフを仕様として与える.この依存性グラフから正しく回路が合成できるための条件としてsafenessなどを定義する.次にこれをもとに,その機能ノードを対応した回路素片に置換し,これらを接続することで制御回路を合成する.この制御回路はハンドシェークによって2相方式でデータパス部の制御を行う.本手法は,並列性を仕様中に容易に記述でき,論理合成のコストが低いという特徴がある.