著者
卜田 真一郎
出版者
大阪教育大学 幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.33, pp.13-33, 2013-03-31

本論は,日本における多文化共生保育研究の動向を整理することを目的として,この分野の研究から約50本の論文を取り上げ,整理を行ったものである。取り上げた論文は,そのテーマごとに「『呼称』や『表記』を巡る課題」「多文化共生保育の状況と課題についての研究」「外国にルーツを持つ子どもの園生活の実態についての研究」「オールドカマーの子どもの保育についての研究」「多文化共生保育の理念についての研究」「多文化共生の視点からの保育内容についての研究」「多文化共生保育に関わる保育者養成についての研究」の7つのカテゴリーに分類し,研究動向に関わる考察を行った。その結果,多文化共生保育研究の今後の課題として,「『多文化共生保育』が意味することの範囲の広さを視野に入れ,研究全体を俯瞰できるような整理が必要であること」,「地域の多文化化の状況要因による実践の違いを整理し,状況の違いに応じた実践のありようを検討すること」「これまでの研究成果の積み上げをもとに,より具体的な『多文化共生保育の指導法』の確立が求められるということ」の3点を指摘した。
著者
川西 正子 小西 洋太郎 岡 佐智子 礒沢 淳子 卜田 真一郎
出版者
常磐会短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

幼児期の適切な食育は、その子どもの生涯の健康にかかわるとともに、子どもを取り巻く家族・社会の健康・健全性にもつながる。本研究では、食育の素材として"雑穀"に着目し、幼稚園,保育所での食育実施を試みた。素材の特性として、市販の雑穀の澱粉・雑穀粉の理化学的性質を検討し、澱粉ではその種類によりうるち種・もち種の両者があり、特にキノア澱粉の糊化温度が低いこと、ヒエ穀粒の粉では老化しやすいことが明らかとなった。また、アマランサス・ヒエを焼成パンの材料として小麦粉と置換し、調理科学的特性と食味との関連について検討した結果、雑穀を添加するとかたさと凝集性が増加すること、小麦粉との置換の上限は20%程度までであること、雑穀をポップ・熱処理することで栄養価(アミノ酸価)は変わらず食味が改善する可能性があることがわかった。大阪府下の保育所における食育の現状は、配膳・片付けに関わる体験、アレルギー児童への対応などについては比較的積極的に実施されていたが、食育に取組む体制づくり、地域を包括した活動などが今後の課題であることがわかった。旬を意識した食材・和食献立はある程度取り入れられていたが、地産地消への意識がまだ低い状況であった。また、餅つき・節分の豆まき・さつまいもの栽培とその食体験は多くの保育所で実施されていた。保育士などを対象とした質問紙調査では、雑穀を保育・食農教育に取り入れることができる可能性はある程度高いと考えられた。公立のH保育所にて雑穀を用いた食育実践を1年を通して実施した。種まき、栽培、収穫、おやつ作りと試食、わらを用いたエコクラフト、食と健康に関する話題提供、雑穀原産地(外国)の話などを4、5歳児対象として年間保育の中に組み込んだ。子ども達が楽しみながら食に関する興味をもったことなどが評価され、保育所全職員が食育活動に携わること、保護者へのアプローチが改善点として挙げられた。