著者
川西 正子 小西 洋太郎 岡 佐智子 礒沢 淳子 卜田 真一郎
出版者
常磐会短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

幼児期の適切な食育は、その子どもの生涯の健康にかかわるとともに、子どもを取り巻く家族・社会の健康・健全性にもつながる。本研究では、食育の素材として"雑穀"に着目し、幼稚園,保育所での食育実施を試みた。素材の特性として、市販の雑穀の澱粉・雑穀粉の理化学的性質を検討し、澱粉ではその種類によりうるち種・もち種の両者があり、特にキノア澱粉の糊化温度が低いこと、ヒエ穀粒の粉では老化しやすいことが明らかとなった。また、アマランサス・ヒエを焼成パンの材料として小麦粉と置換し、調理科学的特性と食味との関連について検討した結果、雑穀を添加するとかたさと凝集性が増加すること、小麦粉との置換の上限は20%程度までであること、雑穀をポップ・熱処理することで栄養価(アミノ酸価)は変わらず食味が改善する可能性があることがわかった。大阪府下の保育所における食育の現状は、配膳・片付けに関わる体験、アレルギー児童への対応などについては比較的積極的に実施されていたが、食育に取組む体制づくり、地域を包括した活動などが今後の課題であることがわかった。旬を意識した食材・和食献立はある程度取り入れられていたが、地産地消への意識がまだ低い状況であった。また、餅つき・節分の豆まき・さつまいもの栽培とその食体験は多くの保育所で実施されていた。保育士などを対象とした質問紙調査では、雑穀を保育・食農教育に取り入れることができる可能性はある程度高いと考えられた。公立のH保育所にて雑穀を用いた食育実践を1年を通して実施した。種まき、栽培、収穫、おやつ作りと試食、わらを用いたエコクラフト、食と健康に関する話題提供、雑穀原産地(外国)の話などを4、5歳児対象として年間保育の中に組み込んだ。子ども達が楽しみながら食に関する興味をもったことなどが評価され、保育所全職員が食育活動に携わること、保護者へのアプローチが改善点として挙げられた。
著者
伊與田 浩志 小西 洋太郎 井上 保 吉田 香梨 西村 伸也
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.167-172, 2006-03-20
参考文献数
15
被引用文献数
1

アマランスの種子は栄養価が高く,また適切な条件下で加熱すると急激な水分蒸発と共に膨化(ポッピング)する性質を有しており,膨化は消化性が改善されるなど有用な加工法の一つである.本研究では,膨化に大きな影響を与える種子含水率に注目し,その調整と測定方法,ならびに機械的強度に与える影響について検討した.さらに,種子の初期含水率と気流温度が膨化による体積増加ならびに膨化後の性状に与える影響について,熱風として高温空気と過熱水蒸気を用いて流動床型の膨化装置により調べた.その結果,種子の初期含水率が約0.15,気流温度が約260°Cの高温空気中で,体積増加率は約8.7倍と最も大きくなった.また,気流温度が高いほど種子の変色が激しいことがわかった.一方,過熱水蒸気中では,体積増加率が最大となる初期含水率は,空気の場合よりもわずかに低くなる傾向がみられ,最大の体積増加率も空気中に比べてやや小さくなった.その原因は水蒸気の初期凝縮により,アマランス種皮の機械的強度が低下したためと考えられる.また,アマランス種子の水分吸着等温線より,体積増加率が最大となる含水率は,相対湿度の増加に対して,平衡含水率が急増し始める直前の含水率付近であり,それ以上の含水率では,体積増加率が減少するとともに,弾性率低下が顕著となることがわかった.また,これらの結果から最適な含水率に調整するための指針を示した.
著者
小西 洋太郎
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-16, 2020-06-30

キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)は7000年前から中央アンデス地方で栽培化された擬穀物である。気温,水,塩のストレスに耐性を示す種々な品種が存在する。キヌア種子はタンパク質含量が高く,かつ優れたアミノ酸組成を有し,またカルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛などのミネラルも多い。さらに生活習慣病を防ぐ種々のフィットケミカルが含まれる。このようにキヌアは世界の食料安全保障に貢献する作物として注目されている。しかし,キヌアの開発にあたっては,生産の場において持続可能な農業生態系,生物の多様性を維持しながら進めていくことが重要である。
著者
伊與田 浩志 小西 洋太郎 吉田 香梨 西村 伸也 野邑 奉弘 吉田 正道
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.94-99, 2003-01-20
参考文献数
6
被引用文献数
4 6

大気圧の過熱水蒸気雰囲気下で食品を乾燥あるいは加工処理する方法は,食品が水蒸気の凝縮により処理直後に急速加熱されること,殺菌効果が期待できること,また,空気を用いた処理と比して高温でも製品が酸化されにくいことなど,さまざまな特徴を有している.そのため,過熱水蒸気は乾燥分野のみならず,製品の高品質化・高機能化のために食品加工分野への適用が期待されている.<br>本研究では,代表的な炭水化物系の食材であるジャガイモの生スライスを試料とし,170℃および240℃の過熱水蒸気ならびに高温空気気流中で乾燥実験を行い,特に表面の色の変化とその原因について調べた.その結果,過熱水蒸気乾燥では表面近傍においても澱粉が糊化されることにより,空気乾燥時よりも表面の色味が強くなり,また,光沢を有することが明らかになった.また,試料全体の成分定量結果から,過熱水蒸気乾燥の方が糊化澱粉(水溶性多糖)量の増加がはやく,また,着色に寄与すると思われる低分子糖と遊離アミノ酸の増加量も空気乾燥のものより多くなる傾向が得られた.
著者
村田 絵美 志方 万莉奈 岡田 真実 佐橋 磨衣子 横山 実香 小西 洋太郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.14, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】本研究は,玄米の発芽過程で生じる内因性酵素や機能性成分を利用し,製パン性(品質と機能性)を向上させる最適条件について検討した.【方法】強力粉100%パン(コントロール)および10%発芽玄米粉(2012年産コシヒカリを0,1,2,5日間発芽)を添加した計5種類のパンを,Panasonic SD-BMS104ホームベーカリー(約2時間のShort Course, SCおよび4時間のLong Course, LC)で焼成した.パン材料,発酵生地,焼成後のパンについて,還元糖量(BCA法),総遊離アミノ酸量(TNBS法),フィチン酸量(Wade法),GABA量(酵素法)を測定した.またパンのクラムについては卓上型物性測定機TPU-2CLを用いて硬さと凝集性を測定した.【結果】(1)発芽玄米の還元糖量は発芽2日目までは減少し,3日目以降は増加した.総遊離アミノ酸量とGABA量は,発芽日数を長いほど増加する傾向にあった.フィチン酸量は発芽3日目までは増加したが,その後減少した.(2)製パン工程において,還元糖量,総遊離アミノ酸量,GABA量はいずれも,発酵生地の段階で有意に増加し,パン焼成により減少した(しかし材料中の含量よりは高い).フィチン酸量は材料,発酵生地,パンの順に減少した.(3)SC, LCにかかわらず,焼成後のパンの比容積はコントロールと差はなかった(4~5 ml/g).SC, LCにかかわらず,発芽日数の長い発芽玄米を使ったパンほど,柔らかくなる傾向にあり,5日発芽パンが最も柔らかかった.発芽玄米パンの凝集性はいずれもコントロールよりも低かったが,発芽玄米パン同士で比較すると1,2日発芽玄米パンにおいて高かった.