著者
古市 久子 有村 圭織
出版者
大阪教育大学幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-14, 2005-03-31

最近の子どもが「疲れた」ということばを様々な意味をもって頻繁に使っている。子どもの「疲れた」ということばに隠された子どもの生活を見るために幼稚園25園、大阪府下の幼稚園の先生23名の合計136名を対象に「子どもの疲れ」に対する自由記述のアンケート調査を行い次のような結果を得た。子どもの「疲れた」は心疲れ型・体疲れ型・満足型・口癖型の4種類に分類できた。その中で体疲れ型が1番高い割合を占めた。次に心疲れ型の子どもは4歳児の全体に対するA心疲れ型の占める割合が5歳児のそれよりも少し高いが、子どもの「疲れた」は単に体の疲れのみならず「したくない」という気持ちをもち、「疲れた」という言葉で代弁する子どもの存在がわかった。十分活動して満足したときにも「疲れた」を言う子どももいる。また、D口癖型の###占める割合は他のどの型より低く、わずか3%にとどまった。また、男児の事例が109例と、女児よりも多いという結果になった。
著者
卜田 真一郎
出版者
大阪教育大学 幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.33, pp.13-33, 2013-03-31

本論は,日本における多文化共生保育研究の動向を整理することを目的として,この分野の研究から約50本の論文を取り上げ,整理を行ったものである。取り上げた論文は,そのテーマごとに「『呼称』や『表記』を巡る課題」「多文化共生保育の状況と課題についての研究」「外国にルーツを持つ子どもの園生活の実態についての研究」「オールドカマーの子どもの保育についての研究」「多文化共生保育の理念についての研究」「多文化共生の視点からの保育内容についての研究」「多文化共生保育に関わる保育者養成についての研究」の7つのカテゴリーに分類し,研究動向に関わる考察を行った。その結果,多文化共生保育研究の今後の課題として,「『多文化共生保育』が意味することの範囲の広さを視野に入れ,研究全体を俯瞰できるような整理が必要であること」,「地域の多文化化の状況要因による実践の違いを整理し,状況の違いに応じた実践のありようを検討すること」「これまでの研究成果の積み上げをもとに,より具体的な『多文化共生保育の指導法』の確立が求められるということ」の3点を指摘した。
著者
古市 久子 加藤 美恵
出版者
大阪教育大学幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.25, pp.15-30, 2005-03-31

本研究では、家庭教育について、幼稚園児をもつ親206名から得たデータをもとに、アンケート調査を実施した結果を報告している。「親の意識の変化」に焦点を当てて、家庭で重要と思われることと、実際に実行している程度の差を調べることで家庭の教育力の低下を考えた。その結果1 【子どもの反社会的行動への規制】【対人的なやりとり】【親子の触れ合いに関するもの】については教育する力が強く、【大人の時間的余裕を必要とするもの】【子どもの行動を規制するもの】に関しては教育する力が低いことがわかった。###本調査において、近年の親は自分の養育者から受けた育児をそのまま実践しているのではなく、影響を受けながらも自分流の子育てをしている、ということがわかった。そして、その内容については「好きな所・良かったと思う所」を取り入れている割合は非常に高く、「嫌いな所」を自然と行っている割合は意見を二分した。###これらを教育する力の低下の是非を問う判断材料とする時、少なくとも親の意識は「低下していない」という認識を持っていると考えられるであろう。やはり、家庭の教育力の低下の原点は「力不足」ではなく「意識の変化」にあると言える。
著者
二見 素雅子
出版者
大阪教育大学幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.27, pp.25-40, 2007-03-31

"Minkadoumoukai" by Sukekiyo Aoki (unknown-1909) was published in Meiji Era. The first and the second volumes were published in 1874, in which he collected ethical topics from Japanese, Chinese, and Western books. The third and forth volumes were published in 1876, which were translated from a moral schoolbook "Morals for The Young; or, Good Principles instilling Wisdom" written by Emma Willard (1787-1879) in the United State of America. The fifth volume was published in 1876 that explained about "the right," "the duty," "civilization" and "enlightenment." This book was recommended by the Ministry of Education as a moral book for young children together with "Doumou-osiegusa" translated by Yukichi Fukuzawa.The ethical thought in this book looks confused. This book by Aoki has been rarely paid attention by researchers of education history for several reasons. But the book is a quite interesting source for examinations when we look into the confusion of the ethical thoughts in it as an outcome of westernization, that is to say, a product of conflicts between the western and Japanese moral thoughts since Japan started westernization. A purpose of this paper describes the aspect of the ethical conflicts in Aoki's book. The result has 3 points. First, this book told children consistently the ethic based on Confucianism, even if using the new western words, Secondly, children could learn names of western things and words. Thirdly, children learned meanings of the right and the duty within the concept of nation-state, as Aoki wanted children to learn the new political system.
著者
ISHIGAKI Emiko Hannah
出版者
大阪教育大学幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21-34, 2000-03-31

New perspectives of 1 the Guidelines for kindergarten Education, noticed in December 1998 which came into force in April, 2000, and 2 the Juvenile Welfare Law which went into effect in 1998, will be explained. Reexamination of the Guidelines was decided at the time of revision ten years ago. The new Guidelines emphasize mainly the importance of the role of teachers and additionally children's intellectual activities through playing. The Guidelines encourage children to develop a foundation of the "zest of life," namely as the base for power of living. Concerning the revision of the Juvenile Welfare Law and the sharp decrease of the birthrate, the Japanese goverment enacted a law called" Angel-Plan" which over the next ten years is aimed at rearing children and supporting parents at homes and at day-care-centers. Another perspective toward the 21st century is 3that two-year-colleges are decreasing in number and four-year-colleges specializing in teacher education are increasing. At the conclusion, I refer to my 12 English papers, the full text of the Guidelines, the Chronology, and the "Angel-Plan" in English.先ず新しい展望として、1平成10年12月に改正され平成12年4月より施行された幼稚園教育要項、2平成9年に大規模改正がなされ平成10年より施行された児童福祉法について述べる。 幼稚園教育要領は10年毎に見直されることになっていたが、今回の小改正はその10年目のものである。 主な改正点として教師の役割、知的活動が子どもの遊びを通して行われるべきことが強調されている。まさに遊びは子どもの権利である。教師は遊びを通して知的知識を促進し、『生きる力』の基礎を育成することの重要性を論じている。 児童福祉法改正と少子化問題に関連して、厚生省が示しているエンゼル・プランでは、子育てや家庭育児や保育所支援について説明している。 21世紀に向けての日本における幼児教育者養成を展望すると、3幼稚園教諭や保育士の養成が4年制大学志向になりつつあり、幾らかの危機はあるものの好ましい教育者像を目指して挑戦しつつある。 最後に、筆者の英語論文12点を参考文献として挙げ、資料として英語に訳された新幼稚園教育要領全文、幼児教育年表、エンゼルプラン図を掲載した。
著者
池永 真義 東藤 弥生 橋之爪 美砂
出版者
大阪教育大学 幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.34, pp.9-23, 2014-03-31

今日,全国的に幼小・小中をはじめとする異校園種間連携が盛んである。だが,そのような連携パターンによる協働だけで,本当に豊かな表現活動における実践創造は生まれるのだろうか。このような疑問が生じるのも,円滑に連携教育が推進されている学校園がある一方で,学校文化の違いや対等互恵の原則が十分に踏まえられていないため,双方が多忙間しかもてない連携教育も見られるからである。このような"疲弊した連携教育"が生じる大きな原因の一つとして,当事者である教員自らの「主体的な実践創造」が弱いことがあげられよう。さらに,相手の校園がもつ子ども観や教育方法に対する無理解もあげられるだろう。本研究では,多くの連携教育研究につきまとうこれらの壁を克服するため,中学校教員による幼稚園の出前保育を一つの実践的媒介としながら,校種の隔たりの大きい中学校美術科(鑑賞領域)と幼稚園(領域「表現」)の教員間によるコミュニケーションを通して,連携教育ならではの表現教育における新しい実践創造のあり方を明らかにしたい。この第一報では,そのような中学校美術科教員による問題提起の内容と出前保育の実践概要を示す。第二報では,これらの内容を受けて幼稚園教員との座談を展開し,最後に本研究全体の省察を行う。出前保育では,18世紀に京都画壇で活躍した伊藤若冲(1716-1800)の屏風『鳥獣花木図屛風』(複製画)を幼児(5歳児:20名)に鑑賞させた上で,表現活動に取り組ませることを試みた。美術にかかわる表現の多くは,幼稚園の表現方法に限らず,「みる」活動よりも「えがく,つくる」活動が中心である。しかし実践では,その逆に「みる」活動にウエイトをおき,園児らの柔軟な言葉のやり取りを通して表現活動への興味づけを高められるようにした。
著者
辻村 英夫
出版者
大阪教育大学幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.21, pp.19-30, 2001-03-31

今日幼児や児童の注意欠陥・多動性・衝動性が問題視され、親や教師の強い関心事となっている。それらの子供達はLD (Learning Disabilities)とかADHD (Attention Deficit/Hyperactivity Disorders)###あるいはHD (Hyperkinetic Disorders)と呼ばれることで、しばしば障害児とみなされる。###しかし、そんなに簡単にそれらの子供達を分類し障害ということばを冠してよいものだろうか。なるほど注意欠陥・多動性・衝動性をもった子供は他の子供達とは著しく異なった言動をし、同時に周囲に多大の迷惑をかけたりして問題を引き起こす。だからといって容易に彼らを障害をもった子供とみなし、そういった先入感で子供に接することにならないよう注意しなければならない。したがって、もしそういう子供を発見した場合には早急に病名や障害名をつけることなく、慎重に子供や親への対応・対処の仕方を考え、支援と指導に当たることが大切である。注意欠陥・多動性・衝動性の症状はしばしば知的障害(Intellectually Disorders)###や自閉症(Autism)およびLD (Learning Disabilities)とオーバーラップする。###しかし同時に、それらのいずれにも属さない普通の子供の発達過程におけるその子供独自の発達の仕方を表すものでもある。もちろん当初における慎重かつ徹底した医学的検査が必要なことはいうまでもない。本研究では、まさに子供自身のもつ発達の特徴がLDやADHDと疑われ、幼稚園の先生をはじめ親および祖父母までもが大変心配したが、母親との殆ど1年10箇月に及ぶ教育相談の結果、当初の疑惑と心配が大部分払拭され、今では発達年令をはるかにしのぐ能力で生活するに至った子供の事例をとりあげる。###そして子供の日々の発達が、母親の子供に対する弛まない全身全霊の養育と教育の努力により、子供の能力を向上させ、子供のもつ現象記述的症状をいかにして消失させるに至ったかの検証としたい。Nowadays, the troubles of the children who have ADHD (Attention-Deficit/Hyperactivity###Disorders), HD (Hyperkinetic Disorders) and LD (Learning Disabilities) are often reported. The causes of them are supposed to be the disorders of the central nervous system or the influences of the environment, but it is still not clear. Originally, the symptoms of them are all###alike, in spite of the differences among those causes.###For instance the characteristics of Mental Retardation, Autism and Learning Disabilities are very similar to those of normal children who have the behavioral problems, as the individuality.###Needless to say,those behavioral problems should be diagnosed and medically treated as soon as the adults including parents know about it. But they must not be too conscious and neurotic about the symptoms. If not, they will be very emotionally instable. So it is better that we do not use the word "Shogai" in Japanese, so called Disabilities or Disorders in English, easily. People will be very disappointed when they hear "Shogai". The people around the identified child take it for granted that the child having "Shogai" should be specially treated. In this way, they will all badly treat the child as a natural course of event.###It is said that the behavioral problems of the children will normally change around the###third year of elementary school. Until then we must take care of the mother including father lovingly in the way that they bring up and educate their children so as not to irritate themselves.###This paper deals with the importance of the support for the mother whose child has the###problems of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorders,Learning Disabilities and others.