著者
加來 洋子 山口 秀紀 石橋 肇 卯田 昭夫 下坂 典立 鈴木 正敏 田中 晃伸 渋谷 鑛
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.406-419, 2014-09

1980〜2013年の34年間に全国の報道機関紙(誌)が取り上げた歯科医療事故に関する記事について調査し,発生した事故内容について原因を分類し検討を加えた.1.報道件数の推移 1)34年間(1980〜2013)の全報道例数は167例,全報道件数は462件であった.2)全報道件数は,1980〜1989年:36件,1990〜1999年:56件,2000〜2009年:285件,2010〜2013年:85件で,2000年以降で急増し,2005年の57件が最多であった.2.全報道件数の内訳 1)民事訴訟関連:229件/110例が最も多く,次いで,事故発生関連:131件/29例,刑事訴訟関連:95件/25例,示談成立:7件/3例であった.2)民事訴訟関連:229件/110例の内訳は,賠償命令:85件/37例が最多で,次いで,提訴・控訴:68件/37例,和解:27件/11例,口頭弁論:26件/13例,棄却:22件/11例,調停申立て:1件/1例の順であった.3)事故発生病院種別からみた全報道件数の内訳は,歯科医院:296件/106例が最も多く,次いで大学病院:94件/36例,公的病院:63件/20例,国立病院:4件/1例,その他:5件/4例であった.3.全報道事故例数の内訳 1)全報道事故例数は100例であった.2)発生年別では,2001年の12例が最も多く,次いで1986年の9例,2002年の7例の順であった.3)診療行為(原因)別による内訳では,麻酔:18例(18.0%)(うち笑気吸入鎮静法:1例,全身麻酔:1例)が最多で,患者転帰別による内訳では,身体的後遺症:44例(44.0%)が最も多かった.4.診療行為(原因)別による報道件数の推移 麻酔:180件(39.0%)で,次いで,口腔外科手術:65件(14.1%),抜歯:57件(12.3%),一般診療:43件(9.3%),インプラント手術:41件(8.9%),誤認抜歯:21件(4.5%)の順であった.5.民事裁判で「賠償命令」が下された事故例について 賠償命令:37例中,34例が地裁判決,3例が高裁判決であった.診療行為(原因)別では,抜歯:10例が最多で,次いで,インプラント手術:7例であった.賠償請求額の最高額は,1億8,500万円で,智歯の抜歯手術後の身体的後遺症(2004年8月)に対しての訴訟で,地裁で4,000万円,高裁で3,310万円の支払いが命じられた.
著者
卯田 昭夫
出版者
日本大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

12年度の研究から神経性ショック前後の心拍RR間隔周波数解析パラメーターの特徴は明瞭化できた。しかし、Mem Calc^【○!R】による周波数解析には数時間から短いものでも数10分を要し、モニターとしての有用性に欠けていた。13年度は心拍RR間隔収集装置(メモリー心拍計LRR-03^【○!R】)を購入し、Tarawa/winシステム^【○!R】を用いパーソナルコンピューターと接続し、リアルタイムに解析結果をモニタリングした。本研究の目的・内容を理解し、同意の得られた患者を対象とした。神経性ショック予防モニター実用化のため、周波数解析より得られたパラメーターの有用性を、臨床応用から検討した。全身麻酔覚醒時には非脱分極性筋弛緩薬の拮抗薬として、抗コリンエステラーゼ薬あるエドロホニウム(エド)やネオスチグミン(ネオ)が用いられる。しかし、アセチルコリン受容体の反応には運動神経伝達をつかさどるニコチン作用と、副交感神経(PSN)刺激症状を示すムスカリン作用があるため、一般にPSN遮断薬である硫酸アトロピン(アト)が併用される。自律神経への作用機序が明らかなこれらの薬物を投与した時のRR間隔を周波数解析し、低周波帯域(LF)、高周波帯域(HF)、LF/HFおよびエントロピー(ENT)(理論上最もランダムなものを100%、等間隔なものを0%と規格化)の表す意義・有用性について検討した。その結果、1.アト投与により、HF減少の持続、LF/HF一過性の上昇を認めた。2.エドおよびネオ投与によりすべての症例で心拍数が減少した。心拍数の減少とHFの上昇に明らかな関係はなかった。3.ENTはHFの増加に同調し、アトによって低下したことから、PSN活動を反映することが示唆された。しかし、頻脈時は低値を示し、その解釈には、今後さらなる検討が必要である。これまでの研究から、神経性ショック前は過度の交感神経緊張状態(LF/HFの上昇)が観察され、ショック状態では逆にPNS亢進(HF上昇)(ENT上昇?)することが判明した。つまり、LF/HFを観察すれば神経性ショックの予防は可能ということになる。しかし、RR間隔の周波数解析から得られる数値は個人差が大きく、評価の基準が現在無いのが現状である。今後、ホルター心電図を用いた24時間正常値、負荷試験による変動観察、あるいは術中の変化率など、個人の評価をどのように行なうかの指標が発見されれば神経性ショックを予防するモニターが実用化できると思われる。