- 著者
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佐々木 正輝
菅原 正和
SASAKI Masaki
SUGAWARA Masakazu
- 出版者
- 岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
- 雑誌
- 岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
- 巻号頁・発行日
- no.8, pp.107-117, 2009
文部科学省のアンケート調査(2008)では,いじめられたことを親や教師にいう児童は約3割弱,いじめられた児童が在籍する学級の担任教師の約4割が「自分の学級にいじめはない」と答えている現状を指摘している。教師が日常の教育実践の中で行う児童理解は,日常観察や言葉かけなどの面接法が主となっており、児童の表面的な行動や態度だけを見て「自分の学級にいじめはない」などと判断するのは危険である。いじめや不登校等の問題が生じてからから対応する後追い型の指導-ではなく,児童同士のふれあいを深め,問題を起こさない予防的指導の重要性が指摘されている。囲分.・中野(2000),図分.・図分(2004)の「育てるカウンセリング」は,いじめや不登校の予防を意識して考案されたカウンセリング技法である。学級における望ましい人間関係づくりに有効と思われる構成的グループ.・エンカウンター(SGE)のねらいは,エンカウンターの具体的な体験である自己知覚,感情表現,自己主張,他者受容,宿頼感,そして役割遂行をとおして,参加者間の人間関係をつくり,参加者の自己発見を促進し,人間関係を援助することである。本研究は,SGEの継続的な実施によって,小学生の学校生活満足度や,学校生活意欲度に及ぼす影響を検証し,学校心理士やスクールカウンセラー(SC)の介入法の一助になることを目指している。 SGEの実施効果を検証した報告は多数あるが<例えば,石隈,1999 ; 四杉・加藤,2003 ; 田上,2003a,2003b>,本研究の特徴は,(i)学級担任以外のリーダーが学級のアセスメントを行い,SGE実施後の学級担任-のコンサルテーションの有効性を検証していることと,(ii)学校現場は,即効性.・実効性をどうしても求めるので,吹の3点を注視しながら,SGEが学校生活満足度,学校生活意欲度の向上にどの程度影響を及ぼすかを分析した点にある。 (1) 3校10クラスにおいてSGEエクササイズを学級活動や道徳活動に盛り込み,約1か月程度の短期集中プログラムとした。 (2) 実施前(Pre),実施後(Post),フォローアップ(For)データを取り,各クラスの担任の先生方とコンサルテーションを行い,効果を確認しながら実施した。 (3) 担任以外の外部講師(学校心理士:筆者)が仝10クラスを3時間ずつ(45×3)sGEを実施。これによりスクールカウンセラー(SC)等の学級への介入の方法を探った。