著者
塚田 義弘 喜多村 啓介 原田 久也 海妻 矩彦
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.390-400, 1986-12-01
被引用文献数
6

ダイズ種子貯蔵タンパク質には,β-コングリシニンとグリシニンの2つの主要成分が含まれ,その食品化学即および物理化学的性質が広く研究されている.しかし,他の豆類の貯蔵タンパク質に比べ,ダイズの貯蔵タンバク質サブユニットの遺伝様式や連鎖関係に関しては,あまり知られていない。 本研究は,この2主要貯蔵タンパク質サブユニット変異を探索し,見い出された変異の遺伝様式とそれらの遺伝子座間の連鎖関係を明らかにしようとした.ダイズ850品種・系統を,β-コングリシニンとグリシニンの変異を探索するために,それぞれSDS-ゲル電気泳動とアルカリ側尿素系電気泳動で分析Lた・その結果,β-コンクリシニンのαサブユニットに2つの変異が見い出された・すなわち,SDS-ゲル電気泳動で電気泳動移動度(以下,単に移動度)が従来のαサブユニットの移動度よりもわずかに遅いバンドを示すタイプ(α-slow-type)と,αサブユニット生産量が低下したタイプ(α-1ow-type)である.これらの変異は,単一座の共優性対立遺伝子によることが示され,従来のαサブユニットの生産を支配する遺伝子およびそれよりも移動度の遅いαサブユニットの生産を支配する遺伝子をそれぞれCgy2aとCgy2bの遺伝子記号で表わした.また,β-コングリシニンは3つの主要サブユニット(α,α'およびβ)から成るとされていたが,βサブユニットよりも移動度カミ連いもう一本の主要バンドを有する変異体が見い出され,この変異バンドをβ'サブユニットと命名した.このβ'サブユニットの存在は,単一慶性遺伝子(Cgy3)に支配され,この遺1公子の劣性ホモ(cgy3ccgy3)によりβ'サブユニットの欠失を生じることが示された.