著者
原田 奈名子
出版者
佐賀大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

高齢者の身体的自立を促す指導プログラム開発のために、佐賀県内の60歳以上高齢者約500人を対象に股関節と膝関節の解剖学的な知識と、椅子に座位する際の体幹部と脚部の境界認識と、階段昇降時の身体の使い方についての意識について調査行った。その結果、股関節位置の正解率は2.3%、膝関節位置の正解率は13.8%、(p<0.01)だった。椅子に座位する際の脚部の位置認識について約65%が解剖学的に正しく認識していた。しかし、約65.0%が「脚は胴体部を挟むように位置する(という図を選択)と正しく認識していたにもかかわらず股関節について、身体図に書き入れるという方法から正しい知識を有していたと判断できたのは1.9%だった。逆に、股関節について正しい知識を有していた1.9%は椅子に座位する認識も正しかった。これより、多くの人が、椅子に座位する図を正しい知識に基づいて選択したのではないことがわかる。これらから、骨格構造に依拠した「からだの使い方」に関して、股関節や膝関節についての誤認・無知や、知識と自分の行為についての認識との間に齟齬があることが明らかになった。本調査では身体の使い方の意識や認識を明らかにするために提示した図を選択するという方法をとった。しかし必ずしもこの方法によって意識や認識の実態を正確に把握したとは言えない。しかし、知識について正確に実態を把握するためには、選択肢方式ではなく、図に直に書き入れる方法が妥当であると判断できた。この方法によって、高齢者特有の丸背(猫背)の誘因である肩関節や環椎後頭関節や環椎軸椎関節の位置に対する知識の実態も把握できる見通しが持てた。本研究期間中に高齢者向けに高齢者の身体の使い方に関する自主学習用テキストを作成することが最終目的であったが、さらに調査を経てから作成することとした。