著者
成澤 朋之 江原 雅人 原田 雅典 海野 まりえ 金子 雅明 仲島 日出男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00002, (Released:2023-04-13)

本研究では高灰分粉の使用による国産小麦を原料としたパンの味・香り成分の変化を確認した. LC/MSおよびGC/MS測定の結果, 共通して高灰分粉20 %以上の置換により呈味成分や揮発性成分の傾向が分かれた. 高灰分粉の添加により, アミノ酸の含有量およびアルコール類やラクトン類といった発酵生成物と考えられる化合物群の面積値が増加した. また, メイラード反応生成物も高灰分粉の添加により面積値が増加した. 官能評価において, 国産小麦のパン用小麦粉の特徴を表す単語として「甘味」や「塩味」などが, 高灰分粉40 %置換の特徴を表す単語として「焦げ臭」や「酸味」, 「えぐみ」などが選定された. 高灰分粉の添加により発酵生成物やメイラード反応生成物が増加しており, これらの化合物群が高灰分粉添加のパンの官能評価特性に影響を与えていることが示唆された. 高灰分粉をパンの添加材料として活用することで, 低コストで従来のパンとの風味差別化を図ることが可能になると考えられる.
著者
長 徹二 根來 秀樹 猪野 亜朗 井川 大輔 坂 保寛 原田 雅典 岸本 年史
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1115-1120, 2010-11-15

はじめに アルコール依存症患者は自ら治療を受けることは少なく,家族などの勧めで医療機関を訪れることが多い。これはアルコール依存症に特徴的であり,「自分がアルコールに関連した困難を抱いていること」をなかなか認めることができないことに起因する。そのためか,わが国には治療を必要とするアルコール依存症者だけでも約80万人存在する23)と推定されているが,実際に治療機関を受診している患者数は約4.3万人16)しかいない。 アルコール依存症はさまざまな疾病とのかかわりも多く,一般病院に入院していた患者のうち17.8%(男性患者では21.4%)もの人がアルコールに関連した問題を抱えている可能性があった27)と報告されているように,医療機関を受診する患者の中に占めるアルコール関連の臓器障害や機能障害の割合は想像を はるかに上回るものであると予測される。また,総合病院において,他科から精神科への紹介患者におけるアルコール・薬物関連疾患の割合は30%前後2,18)と報告されており,連携医療の必要性が示唆されている。 アルコール依存症を一般病院でスクリーニングし,専門治療機関に紹介する連携医療を展開するために,1996年3月に,三重県立こころの医療センター(以下,当院)が中心となって三重県アルコール関連疾患研究会(以下,当研究会)を発足させた。当研究会はアルコールに関連する問題を抱えている患者を対象とした研修や研究発表に加え,断酒会員やその家族の体験発表などを中心とした内容で構成されている。三重県内の100床以上の総合病院の中で,当研究会を開催した病院は8割を超えており,参加者総数は2,000人に達している。当研究会発足前の1996年の三重県の報告では,アルコール関連疾患により一般病院に入院してからアルコール専門医療機関受診するまでの期間は平均7.4年もの月日を要しており14),アルコール関連疾患にて一般病院で治療を受けてもアルコール依存症の治療が始まるまでに長い月日を要してきた。そのため,治療介入後の最初の10年間の死亡率が最も高い26)と報告されており,早期診断・早期介入が急務の課題であるといえる。 一般病院でアルコール依存症の教育,啓発そして連携を進めてきた当研究会の成果を調べるため,今回はアルコール専門医療機関である当院に受診するまでの経緯に関する調査を行った。