著者
有坂 宣彦 平尾 雅郎 西尾 綾子 友澤 寛 松本 清司 武藤 信一 奥原 裕次 松見 繁 筒井 康貴 酒井 里美 竹澤 英利 山田 寛臣 三上 博史
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.36, pp.4164, 2009

【目的】Wistar Hannover(WH)ラットは欧州での毒性試験における頻用系統であるが,本邦での使用実績は少ない。近年,WHラットはSprague Dawley(SD)ラットに比して小型,温順な性質,優れた長期生存性等の理由で毒性試験における有用性が期待されている。しかし,WHラットと頻用系統であるSDラットとの比較例は少ない。今回,亜急性毒性試験を想定した週齢でWH及びSDラット間の系統差を検討したので報告する。【方法】無制限給餌で飼育した雌雄のWH(Crl:Wl(Han))及びSD(Crl:CD)ラットについて,8及び10週齢で血液生化学(Hitachi 7180),血球計測(Sysmex XT-2000),血液凝固(Sysmex CA530)及び骨髄検査,臓器重量測定を実施した。また,9~11週齢で回転かご付ケージ内での体重,摂餌量及び摂水量測定,自発行動解析を実施した。【結果及び考察】WHラットはSDラットに比して以下の特徴を示した。血液生化学検査では,雌雄でAST,ALT及びALPの低値が,10週齢のみでUNの高値がみられた。血球計測検査では,雌雄で赤血球及び網赤血球数の高値,好中球及びリンパ球数の低値に基づく白血球数の低値,MCV及びMCHの低値がみられた。末梢血と同様に骨髄でも赤芽球系細胞数の高値及び骨髄系細胞数の低値がみられ,両系統間で造血能又は造血ステージが異なる可能性が考えられた。凝固系項目には両系統間の差はみられなかった。臓器重量測定では,雌雄とも脾臓体重比重量の高値を示した。体重,摂餌量及び摂水量は雌雄とも低値を示し,自発運動量は雄で少なかった。以上,WH及びSDラット間でWHラットの小型かつ温順な性質という特徴と一致する差異に加え,血液パラメータを中心とした差異がみられた。これらはWHラットを理解する上での一助になるものと考えられた。