著者
落合 敏秋 臼井 章夫 松本 清司 関田 清司 内藤 克司 川崎 靖 降矢 強 戸部 満寿夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.605-616_1, 1985-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

緑青の主成分とされる塩基性炭酸銅の急性及び慢性経口毒性試験をSlc: Wistarラットを用いて行った. 急性毒性試験で, LD50値は雄: 1350mg/kg, 雌: 1495mg/kgであった. 慢性試験では0, 70, 220, 670及び2000ppm塩基性炭酸銅添加固型飼料を12か月間投与した. 2000ppm群で体重増加抑制 (雄, 雌), 血清GOT,GPT, LDHの上昇が実験期間を通して観察された. 組織学的には, 雌雄2000ppm群で肝臓の単細胞壊死の発現数が有意に増加した. 以上, 塩基性炭酸銅の2000ppmはラットに肝臓障害を起こすものと結論された.
著者
有坂 宣彦 平尾 雅郎 西尾 綾子 友澤 寛 松本 清司 武藤 信一 奥原 裕次 松見 繁 筒井 康貴 酒井 里美 竹澤 英利 山田 寛臣 三上 博史
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.36, pp.4164, 2009

【目的】Wistar Hannover(WH)ラットは欧州での毒性試験における頻用系統であるが,本邦での使用実績は少ない。近年,WHラットはSprague Dawley(SD)ラットに比して小型,温順な性質,優れた長期生存性等の理由で毒性試験における有用性が期待されている。しかし,WHラットと頻用系統であるSDラットとの比較例は少ない。今回,亜急性毒性試験を想定した週齢でWH及びSDラット間の系統差を検討したので報告する。【方法】無制限給餌で飼育した雌雄のWH(Crl:Wl(Han))及びSD(Crl:CD)ラットについて,8及び10週齢で血液生化学(Hitachi 7180),血球計測(Sysmex XT-2000),血液凝固(Sysmex CA530)及び骨髄検査,臓器重量測定を実施した。また,9~11週齢で回転かご付ケージ内での体重,摂餌量及び摂水量測定,自発行動解析を実施した。【結果及び考察】WHラットはSDラットに比して以下の特徴を示した。血液生化学検査では,雌雄でAST,ALT及びALPの低値が,10週齢のみでUNの高値がみられた。血球計測検査では,雌雄で赤血球及び網赤血球数の高値,好中球及びリンパ球数の低値に基づく白血球数の低値,MCV及びMCHの低値がみられた。末梢血と同様に骨髄でも赤芽球系細胞数の高値及び骨髄系細胞数の低値がみられ,両系統間で造血能又は造血ステージが異なる可能性が考えられた。凝固系項目には両系統間の差はみられなかった。臓器重量測定では,雌雄とも脾臓体重比重量の高値を示した。体重,摂餌量及び摂水量は雌雄とも低値を示し,自発運動量は雄で少なかった。以上,WH及びSDラット間でWHラットの小型かつ温順な性質という特徴と一致する差異に加え,血液パラメータを中心とした差異がみられた。これらはWHラットを理解する上での一助になるものと考えられた。
著者
武田 由比子 天野 立爾 内山 充 松本 清司 降矢 強 戸部 満寿夫 本田 喜善 中村 幸男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.50-57_1, 1980-02-20 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

1976年から1978年まで宮崎, 佐賀, 鹿児島において17件の鯉摂取によるとみられる食中毒が発生し患者125名に達した. 中毒症状は嘔吐, 痙れん, 麻痺などで, 疫学調査により共通食品に鯉があげられ, 食べ残りの鯉をイヌに与えたところ, 人の場合と同様に発症した. この有毒鯉からの熱エタノール抽出物をエーテルに転溶しTLCを行った結果Rf値0.5~0.7 (展開溶媒ベンゼン, アセトン, 酢酸, 90+5+5)で硫酸噴霧後加熱により特異な青緑色を呈するスポットに毒性を認めた. この物質をさらに精製しUVλEtOHmax 220, 282nm, MSより分子量575を得たが化学構造などについてはなお検討中である.
著者
吉田 緑 鈴木 大節 松本 清司 代田 眞理子 井上 薫 高橋 美和 小野 敦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-72, 2012

現在日本では農薬のヒト健康影響指標には、一日許容摂取量が慢性曝露に対する指標として設定されている。近年、海外や国際評価機関においては、この指標に加え、ヒトが極めて短期間に農薬を摂取した際の急性曝露影響に対する健康影響が評価され、その指標として急性参照用量(acute reference dose, ARfD)が設定されている。日本では急性影響評価は実施されていないが、ヒトが農薬等を短期間曝露した場合の急性影響評価およびその指標を設定は、食の安全のために重要である。そこで本研究では、食品安全委員会で公開された評価書およびFAMICで公開された農薬抄録を用いて、これらの農薬のARfDの設定を試みた。設定の基準として農薬の国際評価機関であるFAO/WHO 合同残留農薬専門家会議の基準を基本とした。[結果及び考察] 約200農薬の公開データからシミューレーションを行った結果、90%以上の農薬についてARfDの設定を行うことができた。ARfD設定根拠となる試験は発生毒性試験、急性神経毒性試験、薬理試験が多く、約30%の農薬で設定の必要がないと考えられた。農薬の作用機序別の比較では、全てのコリンエステラーゼ(ChE)阻害剤でARfD値設定が必要であり、その値は他の剤に比べて低く、ADIと近い値を示した。これはChE阻害作用が短時間に起きるためと考えられた。長鎖脂肪酸の合成阻害、細胞分裂時の紡錘糸機能阻害および昆虫の神経細胞に作用する剤ではADIとARfDの乖離が平均で300倍以上と大きいものが多かった。約10の農薬では急性影響に関するデータ不足によりARfDを設定できなかった。これらのデータ不足の多くは、評価書内の記載の充実(=投与開始直後に認められた変化の種類と観察時期)や投与翌日の検査を追加することで、多くの場合改善されると考えられた。