著者
坂井 健太郎 田中 秀明 古原 千明 下村 有希子 杉山 友貴 吉水 秋子 松井 礼 井上 智博 上野 正克 塚本 竜生 東 治道
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.283-288, 2018 (Released:2018-04-28)
参考文献数
20

にがりは食塩を海水から精製する過程で得られるものであり, マグネシウム (Mg) やカルシウム (Ca) などのさまざまな電解質を含む. したがって過剰摂取は電解質異常を起こし得る. 今回われわれは, にがり大量飲用に起因する高Mg血症, 高Ca血症から心肺停止に至った症例を経験したので報告する. 症例は21歳の女性で, にがり1本を飲用し8時間後に当院へ救急搬入された. 搬入時には会話可能であったが, その後心肺停止に至った. 来院時の血液検査でMg, Caの異常高値が判明したため, 蘇生後直ちに血液透析を行った. 血中Mg, Ca濃度は透析開始後次第に低下していき, 第3病日までには正常化した. にがりの大量飲用では電解質をチェックし, 早期に血液透析を行うことが肝要である. また高Mg血症は心肺停止のみならず, さまざまな臓器の出血傾向を助長し得るため, 集学的な全身管理が非常に重要となってくる.
著者
中井 健太郎 山本 修太郎 友岡 知加 井上 めぐみ 古原 千明 宿理 朋哉 髙江 啓太 谷口 拓也 池田 綾 小江 雅弘 満生 浩司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.61-69, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
24

透析患者の心臓手術においてガイドラインに即した周術期プロトコールを作成し, 多職種が連携して管理を行ってきた. 当院における周術期合併症を調査することによりプロトコールの検証を行った. 2016年から2018年に心臓手術を行った症例のうち大血管の同時手術を除く128例を対象として, 維持透析29例 (透析群) と, 非透析群99例を比較検討した. 心臓手術の内訳は, 大動脈弁置換術および冠動脈バイパス術が最も多く, 両群間で差を認めなかった. 入院中死亡は透析群で2例 (7%), 非透析群で3例 (3%) であり有意差を認めなかった. 術後在院日数は透析群で有意に長く (30.7日 vs. 23.3日), 予定外の体外循環を要した割合は透析群で有意に高率であった (17% vs. 1%). ただし, CABG単独においては, 術後在院日数, 予定外の体外循環は両群間で同等であった. 特に弁膜症手術に際しては, 予定外の体外循環を減らし入院期間を短縮するため, さらなる検討を行っていきたい.