著者
坂井 健太郎 田中 秀明 古原 千明 下村 有希子 杉山 友貴 吉水 秋子 松井 礼 井上 智博 上野 正克 塚本 竜生 東 治道
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.283-288, 2018 (Released:2018-04-28)
参考文献数
20

にがりは食塩を海水から精製する過程で得られるものであり, マグネシウム (Mg) やカルシウム (Ca) などのさまざまな電解質を含む. したがって過剰摂取は電解質異常を起こし得る. 今回われわれは, にがり大量飲用に起因する高Mg血症, 高Ca血症から心肺停止に至った症例を経験したので報告する. 症例は21歳の女性で, にがり1本を飲用し8時間後に当院へ救急搬入された. 搬入時には会話可能であったが, その後心肺停止に至った. 来院時の血液検査でMg, Caの異常高値が判明したため, 蘇生後直ちに血液透析を行った. 血中Mg, Ca濃度は透析開始後次第に低下していき, 第3病日までには正常化した. にがりの大量飲用では電解質をチェックし, 早期に血液透析を行うことが肝要である. また高Mg血症は心肺停止のみならず, さまざまな臓器の出血傾向を助長し得るため, 集学的な全身管理が非常に重要となってくる.
著者
田中 秀明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.220-223, 2011-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

現代社会のエネルギー媒体の主役である化石燃料(石油,石炭,天然ガス)には限りがあり,現状の勢いで消費が続くと早晩逼迫・涸渇する。一方,次世代を担うエネルギー媒体として期待されている水素は,物質としては地球上に大量に存在し,燃焼生成物も水のみである。このため,エネルギー・環境問題の緩和にも繋がるものと期待されるが,太陽光,風力,水力,地熱等,再生可能エネルギーを利用した水電解などにより抽出(製造)していく必要がある。加えて,水素の大量供給には高効率で安全な輸送・貯蔵技術も必要とすることから,経済産業省やNEDOなどの下にこれまでに様々な研究開発が実施され,課題克服や安全性検証が図られてきた。それでもなお「水素は危険」という先入観のために,その大量貯蔵に違和感を覚える向きもある。このような中,水素貯蔵に対する危険性を科学的・客観的な規準に基づいて正しく把握し,適切な安全対策を立て,将来の利用・普及に繋げることは,科学及び教育に携わる者の責務である。本稿では,水素の高効率貯蔵媒体として約半世紀にわたって開発されてきた水素貯蔵材料を採り上げる。そして,その安全に関する数ある性状の中から発火・爆発危険性について,我々が実際に行った新規に開発された当該材料に対する危険性の検証例を示し,他の貯蔵材料との比較についても紹介する。
著者
森下 登史 田中 秀明 井上 亨
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.810-819, 2021-07-10

Point・通常,視床神経核の可視化は困難であるため,典型的な電極留置部位の座標決定方法を学ぶことが大切である.・微小電極記録では,somatotopyと運動誘発電位・感覚誘発電位から電極位置を推測することができる.・治療用電極留置時の試験刺激は,振戦制御効果と刺激誘発性副作用出現閾値を確認する上で非常に有用な手技である.
著者
田中 秀明 大森 不二雄 杉本 和弘 大場 淳
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究のテーマは、「高等教育改革の軌跡」であり、リサーチ・クエスチョンの第1は、日本及び比較対象諸国において、「高等教育改革は、グローバライゼーションや国際競争といった外的な要因、大学への期待や要請の増大、政治・行政システム及び歴史的な経緯の帰結としての高等教育システムにどのように影響を受けて、どのように行われたのか、その結果はどうなっているか」である。第2は、「昨今指摘されている国立大学法人化の諸問題はなぜ生じているのか、諸外国の高等教育改革の軌跡とどう違うのか、なぜ類似の改革が異なる結果をもたらしたのか」である。これらにより日本における国立大学法人制度を分析する。
著者
田中 秀明
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.147-170, 2018-05-25 (Released:2019-05-25)
参考文献数
33

2017年,政府は「人づくり革命」を政策アジェンダとして掲げ,保育・教育の無償化に2兆円を投じることを決めた.人的投資の充実は,現代の福祉国家における喫緊の課題となっているが,日本における教育無償化を巡る議論では,教育の問題点や解決策などについてデータに基づく分析が乏しい.本稿では,年金や医療等の社会保障の問題を分析するとともに,教育財政と公的支援のあり方を議論する.教育は福祉国家のあり方に関係するからである.保険制度に過度に依存した日本の社会保障を改革し,人的投資に資源を振り向けることができるかが,少子高齢化を乗り切るための鍵である.ただし,教育への公的資金の投入には逆進性などの問題があるため,慎重な制度設計と高等教育全般にわたる改革と戦略が必要である.
著者
田中 秀明 井舟 正秀 石渡 利浩 川北 慎一郎 西願 司
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100594, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】臨床実習において,対象者との信頼関係や知識・技術向上のために理解しやすく円滑な実習が行えるよう対象者選定を行っている.学生のスキルにもよるが,理学療法プロセスを理解してもらうために経過が比較的安定している神経系・運動器障害を対象者とすることが多い現状がある.しかし,各施設の対象者としては内部障害が年々,増加している.また,神経系・運動器障害の対象者であっても,合併症として内部疾患を有しているケースは多々見られる.これからの理学療法士は施設の特徴もあるが,就職後すぐに内部障害を担当することも多くなってくると予想される.今回,当院での臨床実習で学生に内部障害対象者を担当してもらい,実習終了後に意識調査を実施し学習の効果について検討したので若干の考察を加えここに報告する.【方法】対象は,当院で臨床実習を行った学生10名(男性6名,女性4名)であった.実習内容についての大まかな流れについて説明する.対象者は実習期間中に退院でき,理学療法開始後早期の対象者を選定し説明と同意を得た上で学生が担当した.疾患は間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患,冠動脈バイパス手術後,慢性心不全急性増悪,急性呼吸窮迫症候群であった.指導内容は事前に電子カルテで疾患に対しての情報収集をし,病態の把握を行ってもらい医師に直接確認する場を設けた.収集した情報が的確であるか否かを指導者が確認し,不足している情報があれば修正し対象者の評価を行った.実習中では適宜,軌道修正を加え日々,変化する病態把握に対応した.全体像の把握してもらうために,退院の目途が立ち次第,家屋評価や介護保険の申請をし,退院後の生活支援にも関わった.また,症例に関わる文献抄読も行ってもらった.意識調査の方法は学校卒業後にアンケートを実施した.内容は(1)以前に内部障害を担当したことがあるか.(2)実習は学習になったか.(3)学校で習得した知識は生かせたか.(4)実習後の学習に役に立ったか.(5)内部障害に対する意識に変化はあったか.(6)今後も内部障害を担当したいか.(7)自由記載.以上の7項目についてアンケートを実施した.回答は,「はい」・「いいえ」・「どちらでもない」,その他自由記載とした.統計学的分析はKolmogorov-Smirnov検定を用い分析を行い,有意水準は5%とした.【説明と同意】倫理的配慮として,本研究の目的に対し十分な説明を行い,同意を得た上で実施した.【結果】(1)「はい」0名,「いいえ」10名.(2)「はい」10名,「いいえ」0名.(3)「はい」1名,「いいえ」9名.(4)「はい」10名,「いいえ」0名.(5)「はい」9名,「いいえ」1名.(6)「はい」8名,「いいえ」1名,「どちらでもない」1名.(7)症例が少ないので見られてよかった,考え方の変化があった,実習を通して苦手意識が解消された,国家試験対策になった,座学でわからなかった内容が実践を通してわかりやすかった,血液データの読み方が難しかった,離床を進める上での患者のアセスメントが難しい,まずは脳血管や運動器障害を見たい,手技的なテクニックを身につけたいなどの回答が得られた.尚,統計学的分析の結果(2)は「いいえ」,それ以外の項目は「はい」の方で有意差を認めた(p<0.01).【考察】今回の結果から,内部障害を担当したことで興味を持ち,有益な学習ができたと考えた.各養成校では,カリキュラムで様々な工夫をして授業を行っている.循環器・呼吸・代謝系理学療法を独立した授業を行っている養成校もある.座学では知識を整理し学習することが困難との意見があった.充実した授業で得た知識を活用するためにも,臨床実習で学習することで,学生のスキルが向上し国家試験対策に繋がるものと考えた.離床する際やデータの読み方などは各症例に対しケースバイケースで考える必要があるため,難しいとは思うが,臨床実習を通して考え方を経験することが重要と考えた.一部の学生から学習にはなったが,まずは神経系・運動器障害の担当希望や徒手療法などのテクニックを習得したい意見もあった.当然,あってしかるべきであり研鑽してほしいと考えるが,全身状態を考えた時に理学療法を施行する上での阻害因子を十分考慮し,リスク管理のために学習してほしいと思う.指導者側では,以前からの実習スタイルがあり,学生のみの問題ではなく指導者が内部障害の理学療法プロセスを十分に指導ができないことも要因として挙げられるため指導方法を確立することが重要と考えた.【理学療法学研究としての意義】内部障害を臨床実習で担当し経験をすることで有益な学習ができた.今後,臨床実習での指導方法を確立していくことが重要であると考えた.
著者
田中 秀明 井舟 正秀 諏訪 勝志 藤井 亮嗣 川北 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2120, 2010

【はじめに】神経痛性筋萎縮症は急性の激痛で発症,痛みの消失とともに出現する(肩周囲の)弛緩性運動麻痺,多くが自然回復,の3つの特徴がある.本症はウイルス性の腕神経叢炎と言われているが現在の所,明確な病理学的裏づけがないのが現状である.臨床症状と他疾患の除外によって診断される「症候群」と考えるべきと言われている.今回,本症を経験する機会を得たので報告する.<BR>【症例紹介】50歳代男性,職業は事務職.左利き.<BR>【説明と同意】本人に説明を行い,本報告の同意を得た.<BR>【経過】1ヶ月前より発熱があり内科を受診.その2日後,左肩から上腕の疼痛あり,翌日には両前腕に疼痛が広がり,神経内科を受診。採血では炎症所見が認められ,RA疑いで整形外科へ紹介.整形外科ではRAは否定され,多発性筋痛症の疑いでリハビリテーション科へ紹介.両三角筋、棘上筋、棘下筋、左前腕筋などに著明な萎縮がみられ肩周囲の筋力はMMTで右3-レベル,左4レベル,握力は右18kg,左19kg,両肩に夜間痛,両上腕・前腕外側、母指・示指背側の感覚異常を認めた.関節可動域に関しては特に制限は認めなかった.車の運転やデスクワーク,更衣動作などに障害があった.針筋電図検査施行され右肩周囲と左前腕・手指筋にPSW,fbを認め神経原性筋萎縮症と診断された.以後,週1回来院し関節可動域運動,筋力維持・増強運動の自主練習内容の確認と評価を実施した.運動療法開始当初の目標は拘縮予防と筋力維持・増強とし,肩関節以外の上肢筋力運動,腱板の収縮が可能となり次第,セラバンドでの筋力強化を代償動作が入らない程度の回数で実施してもらった.また抗重力が不可能な時期は仰臥位、腹臥位で上肢の重力を除いた状態での三角筋を最大限に動かす運動を実施した.例としてテーブル上をバスタオル等で抵抗をなくしすべらせる方法での運動について指導した.2ヵ月後,握力は右25kg,左26kgに増加したが肩周囲に関しては症状の変化はほとんどなかった.6ヵ月後,握力は右27kg、左27kgと増加したが肩周囲の筋力に変化はなかった.感覚異常も左前腕は初期に比べ中等度まで,その他は軽度まで改善した.肩周囲の関節可動域に関しては若干制限を認めるも自己練習にて維持は出来ていた.10ヵ月後,左肩周囲の筋力は5レベルに改善,右も4レベルと抗重力運動が可能となり握力は左右30kg,感覚異常も左前腕は軽度まで軽減,その他はほぼ正常に改善した.筋力増強運動に関してはセラバンドの種類を変更し負荷を強めていった.1年後,握力は右37kg,左35kgと改善.感覚異常も左前腕に若干の違和感を残しその他は改善した.1年5ヵ月後,左41kgと改善,針筋電図施行され右肩周囲と左前腕・手指筋のPSW・fbの減少,polyNMU・NMUの出現を認め改善傾向と説明をうけた.左前腕の感覚異常は消失した.以後,経過観察必要なため定期的に来院している.<BR>【考察】神経痛性筋萎縮症の予後として90%以上が回復良好とされ1年以内36%,2年以内75%,3年以内89%と報告がある.少なくとも2年以上の長期観察が必要であるとされている.不全麻痺例や,完全麻痺であっても3ヶ月程度で正常にまで回復するものがあり,非変性型の神経障害も起こりうると推測される.一方,予後不良因子としては,痛みが長く持続・再燃するもの,障害範囲が広く腕神経叢全体と考えられるもの,下位神経根領域が主体のもの,3カ月以内に回復の徴候がないもの,などがあげられている.上位型の麻痺に比べて下位型の麻痺の回復が不良な理由について,障害部位から麻痺筋までの再生距離が長いことによって説明しようとする考えがある.発症後1-4週の早期に回復傾向が現れるものでは,予後は良いとされている.本症例においてはリハビリテーション科受診までに改善した部分はあったとのことで傾向は見られていた.その後,下位においては徐々に改善してきたが、上位は改善の傾向が見られるまでに1年近く時間を要した.理学療法としてはごく一般的な内容で自動運動が不可能な時期においては拘縮予防を中心に自己にて可能な上肢関節の他動運動,自動介助運動の指導を行い、自動運動が出現してくれば筋力増強運動を実施した.通院頻度は職業もあり頻回には来院できない為,的確な自己運動方法を指導することや,経過が長期にわたるため医師からのインフォームドコンセントや精神面でのフォロー,合併症予防につとめることが重要な要素であると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】希少な症例の症候や治療内容を提示することで,疾患に対する理解やよりよい治療方法を確立することに意義があると思われた.今回の症例は,報告数の少ない症例で理学療法の介入点について更なる検討が必要と思われた.
著者
菊池 由則 皆川 猛 宮森 俊光 田中 秀明 田中 龍太 高居 和弘 野中 公文
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.928-942,a1, 1999-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

昭和24年の土地改良法制定以降の土地改良事業制度について, 時代の要請を踏まえ, また農政の展開方向に即してその内容を充実・発展させてきたことの概要を述べる。ついで, かんがい排水事業, ほ場整備事業, 農道整備事業, 農地防災事業, 農地開発事業のそれぞれにっいて, 制度創設の背景, 展開にっいて述べる。
著者
福与 徳文 田中 秀明 合崎 英男 遠藤 和子 小泉 健
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.115-120,a2, 2007-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

デルファイ法を用いて農村資源管理の将来を予測するとともに, その影響の大きさと対策の有効性を評価した。20年後には農地面積は現在の474万haから413万haに減少し, 農業水路は現在の40万kmの3割に当たる12万kmが管理困難に陥るという結果を得た。また, 耕作放棄増加による影響としては, 畦畔・法面の崩壊による土砂崩壊や洪水被害の発生が最も危ぶまれ, 管理困難水路増加の影響としては, 土砂小枝の堆積による湛水被害の増加や灌漑排水への支障が最も危ぶまれる。また, 対策としてはハード整備にあわせた保全管理体制の構築や保全管理に対する公的助成の拡大などの有効性が高いと評価された。
著者
足立 幸男 飯尾 潤 細野 助博 縣 公一郎 長谷川 公一 田中 田中 小池 洋次 山谷 清志 金井 利之 田中 秀明 鈴木 崇弘 渡邉 聡 宇佐美 誠 土山 希美枝 秋吉 貴雄 佐野 亘 蒔田 純 清水 美香
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトによって以下の点が明らかとなった。日本政府はこれまで政策改善に向けた努力を疎かにしてきたわけではない(職員の政策能力向上に向けた施策の展開、省庁付属の政策研究機関および議員の政策立案作業支援のための機関の設置、審議会の透明化・民主化など)。大学もまた公共政策プログラムを矢継ぎ早に開設してきた。にもかかわらず、政策分析はいまだ独立したプロフェッションとして確立されておらず、その活用もごく限られたレベルに留まっている。我々は、政策分析の質を向上し、より良い政策の決定・実施の可能性をどうすれば高めることができるかについて、いくつかの具体的方策を確認することができた。
著者
田中 秀明
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.2, 2002-03-20

2000年3月期決算から, わが国では国際会計基準と同様な会計基準の導入が本格的に始まった。時価会計(部分時価会計), 連結会計, 年金会計など一連の会計基準の改定はこれまでの日本の会計を大きく変えるだけでなく, 日本型経営システムを大きく揺さぶるものである。2000年12月には, 主要各国の会計基準設置主体により構成される共同作業部会(ジョイント・ワーキング・グループ-JWG)によって, 原則としてすべての金融資産と金融負債を公正価値で測定し, その変動をすべて損益計算書に計上することを骨子とする, 国際会計基準の公開草案「金融商品及び類似項目」が公表されている。これがいわゆる全面時価会計導入案である。本論文では全面時価会計の導入を視野に入れた銀行ALM(Asset Liability Management)の手法として, 金融資産と金融負債の相関関係に注目したサープラス・アプローチによるALMを研究の対象としている。第1章では, 2000年4月(2001年3月期)からスタートした金融商品の時価会計(部分時価会計)について概観し, それが銀行経営に及ぼした影響を確認する。ここでは(1)配当可能利益(2)自己資本比率(BIS規制)という2つの観点から考察を行なっている。第2章では, 全面時価会計を念頭においたALMを研究するうえで, まず全面時価会計の概略についてまとめている。ここでのポイントは, 負債の時価評価の問題である。負債の時価評価に注目する理由は, 銀行の資金調達が多様化しているからである。近年では預金以外に, 普通社債, 転換社債, 劣後社債等の中長期での資金調達が活発化しており, 負債の時価会計への対応に今後十分用意していく必要がある。第3章では, バランスシート型ALM(サープラス・アプローチ)の理論を展開する。サープラス(Surplus)とは, 「余剰」という意味であるが, ここでは, 資産の時価評価から負債の時価評価を差し引いたものをいう。サープラス・アプローチでは, 資産の時価評価から負債の時価評価を差し引いたサープラスの変動をサープラスのリスクと捉える。サープラスのリスクの定義から, 資産と負債のリターンの相関係数ρ_ALが大きくなるほど, サープラスの分散は小さくなる。資産だけで考えるアセット・アプローチでは, 各資産のリターンの相関関係が低くければ, リターンを得るためのリスク低減効果が期待できる。一方サープラス・アプローチでは, 資産と負債のリターンの相関関係が高くなるほど, リスクが低減するのである。第4章では, サープラス・アプローチにおける最適ポートフォリオの問題について採り上げる。効率的フロンティア上で, どのポートフォリオを選択すべきかというが, ポートフォリオの最適化問題である。ここで述べる手法は, ショートフォールする確率を一定以下に抑えるという条件(ショートフォール制約条件)を課した上で, 最適ポートフォリオを求めるというものである。ここでは目標自己資本比率の達成をショートフォール制約条件とするALMモデルを定式化している。終章では, 全面時価会計に向けて現在邦銀がかかえている金利上昇リスクについて述べる。2001年3月19日の日本銀行金融政策決定会合により, 金融市場の調節方式の変更と一段の金融緩和が実施され, 実質ゼロ金利政策が復活した。しかしさまざまな要因によって, 長期金利は上昇リスクを孕んでいる。景気回復を伴わない金利上昇リスクは, サープラスを減少させることで, 不良債権処理で体力の弱まっている銀行にとって, さらなる打撃を与える可能性がある。
著者
田中 秀明 加藤 公児 山下 栄樹
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.189-194, 2009-06-30 (Released:2010-12-01)
参考文献数
18

Vaults are among the largest cytoplasmic ribonucleoprotein particles and are found in numerous eukaryotic species. Although roles in multidrug resistance and innate immunity have been suggested, the cellular function remains unclear. We have determined the X-ray structure of rat liver vault at 3.5 Å resolution. A vault particle shell was composed of 78 MVP (Major vault protein) chains with 39-fold dihedral symmetry. The shoulder domain of MVP is structurally similar to SPFH (stomatin/prohibitin/flotillin/HflK/C) domain involved in lipid raft association.
著者
白松 利也 栗田 昌幸 三宅 晃司 SUK Mike 大木 聡 田中 秀明 三枝 省三
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2005, no.5, pp.285-286, 2005-09-18

In order to realize ultra-low flying heights, magnetic spacing variations due to manufacturing tolerances, environmental variations, and write-induced thermal protrusion need to be reduced. To decrease the flying height, we have developed a thermal flying-height control (TFC) slider that carries a micro-thermal actuator. Using the device, the magnetic spacing of these sliders can be controlled in-situ during operation of the drive. First prototype had shown insufficient characteristics when evaluated at a component-level prototype. Therefore, the purpose of this research is to verify drive-level feasibility and better actuator characteristics. After analytical design by simulation of heat transfer and thermal deformation, second type of TFC device was fabricated. Component level evaluation showed sufficient actuator characteristics that met the requirements leading to the development of drives with controllable flying-height sliders. Drive level evaluation showed its effectiveness in reducing the magnetic spacing.
著者
栗田 昌幸 白松 利也 三宅 晃司 加藤 篤 曽我 政彦 田中 秀明 三枝 省三 SUK Mike
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2005, no.5, pp.283-284, 2005-09-18

Today's head/disk interface design has a wide flying height distribution due to manufacturing tolerances, environmental variations, and write-induced thermal protrusion. To reduce the magnetic spacing loss due to these effects, we have developed an active head slider with nano-thermal actuator. The magnetic spacing of these sliders can be controlled in-situ during operation of the drive. After simulating the heat transfer in the slider and resulting thermal deformation of the air-bearing surface, we fabricated a thermal actuator by thin film processing. The evaluation by a read/write tester showed a linear reduction in magnetic height as electric power was applied to the actuator. The actuator's stroke was 2.5nm per 50mW with time constant of 1 msec. We found no significant impact to the reliability of the read element.