著者
坂井 健太郎 田中 秀明 古原 千明 下村 有希子 杉山 友貴 吉水 秋子 松井 礼 井上 智博 上野 正克 塚本 竜生 東 治道
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.283-288, 2018 (Released:2018-04-28)
参考文献数
20

にがりは食塩を海水から精製する過程で得られるものであり, マグネシウム (Mg) やカルシウム (Ca) などのさまざまな電解質を含む. したがって過剰摂取は電解質異常を起こし得る. 今回われわれは, にがり大量飲用に起因する高Mg血症, 高Ca血症から心肺停止に至った症例を経験したので報告する. 症例は21歳の女性で, にがり1本を飲用し8時間後に当院へ救急搬入された. 搬入時には会話可能であったが, その後心肺停止に至った. 来院時の血液検査でMg, Caの異常高値が判明したため, 蘇生後直ちに血液透析を行った. 血中Mg, Ca濃度は透析開始後次第に低下していき, 第3病日までには正常化した. にがりの大量飲用では電解質をチェックし, 早期に血液透析を行うことが肝要である. また高Mg血症は心肺停止のみならず, さまざまな臓器の出血傾向を助長し得るため, 集学的な全身管理が非常に重要となってくる.
著者
坂井 健太郎 生長 幸之助 金井 求
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】医薬品候補化合物の構造中にC(sp3)が多いほど臨床段階での開発成功確率が向上することが知られているように、C(sp3)-H官能基化は医薬品開発において望ましい反応形式の一つである。触媒的C(sp3)-H官能基化を実現する手法として近年、可視光レドックス触媒(PC)と水素原子移動(HAT)触媒からなるPC-HAT触媒系が、温和な反応条件、優れた官能基許容性から注目を集めている[1]。既存のPC-HAT触媒系の多くでは化合物中の最も反応性の高いC(sp3)-H結合、つまり、最小の結合解離エネルギー(BDE)を有する結合やヒドリド性の高い結合が変換されていた。化合物依存の反応性ではなく、触媒制御の反応位置選択性を実現する戦略として、特定の結合のBDEを低下させる結合弱化触媒の利用があげられる。結合弱化現象は主に錯体化学の分野で研究されており、触媒的に有機合成に用いられた例は限られている[2,3]。しかも広く研究されている低原子価金属の配位による結合弱化は、酸化的な条件であるPC-HAT触媒系を阻害する恐れがあった。そこで、PC-HAT触媒系によるC(sp3)-H官能基化に適応可能な新規結合弱化触媒の開発に取り組んだ。【結果】モデル反応としてアルコールα位C-Hアルキル化を開発することとし、アルコールの水酸基と相互作用することによって結合弱化が起きる化合物群を探索した。DFT計算を行ったところ、ケイ素化合物がエタノールと5配位のアニオン性シリカートを形成した場合に結合弱化が起きることを見出した。この計算結果を基にケイ素触媒の探索を行ったところ、下図のスピロシラン[4]が新規結合弱化触媒として機能し、PC-HAT触媒系によるアルコールα位C-Hアルキル化を促進することを見出した[5]。(1) (a) Shaw, M. H.; Twilton, J.; MacMillan, D. W. C. J. Org. Chem. 2016, 81, 6898. (b) Capaldo, L.; Ravelli, D. Eur. J. Org. Chem. 2017, 2056.(2) Tarantino, K. T.; Miller, D. C.; Callon, T. A.; Knowles, R. R. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 6440(3) For the precedents of bond-weakening phenomenon used in the cooperation with PC-HAT hybrid system, see: Jeffrey, J. L.; Terrett, J. A.; MacMillan, D. W. C. Science 2015, 349, 1532.(4) Perozzi, E. F.; Martin, J. C. J. Am. Chem. Soc. 1979, 101, 1591.(5) Sakai, K.; Oisaki, K.; Kanai, M. Adv. Synth. Catal. 10.1002/adsc.201901253.