- 著者
-
古舘 信生
高橋 修
- 出版者
- 社団法人 日本写真学会
- 雑誌
- 日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.5, pp.366-377, 2013
銀塩カメラがデジタルカメラに置き換わっている中で,銀塩プリントが市場で活躍していることは,銀塩プリントの基となる銀塩カラーペーパーの品質,コスト,簡便さに負うところが大きい.<br>本「解説」では,銀塩カラーペーパーを構成する主要技術である写真用カプラー技術,特に,色相と画像保存性に関する技術の変遷について,イノベーションの成果が現れた4つの時期に焦点を当てて概観する.第1期は,1970年頃の近代的カプラー群の誕生の時期であり,第2期は1984年~85年頃で,日本企業がコダックに一部の技術で先行した時期である.第3期は,マゼンタ新骨格導入を巡り日本国内企業が大競争を展開した1989年~91年頃である.そして,第4期の1999年~2004年頃は,最後に残された課題(シアン,イエローの色相,画像保存性)を抜本的に解決した時期である.<br>銀塩カラーペーパーは,第4期のプリント感材完成の技術によって,デジタルプリントやフォトブックなどのサービスを通じて今後とも市場で生き続けて行くことであろう.