著者
三村 雄一 柴田 誠司 久田 茂 児玉 晃孝 吉田 正尚 増山 剛 成田 隆博 立花 滋博 古谷 真美 桑形 麻樹子 早川 和宏 青木 豊彦 細川 暁 牧 栄二
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-44, 2012

Wistar HannoverラットはSDラットに比して小型であり、生存率が高く、自然発生腫瘍が比較的少ないことから、安全性試験への利用が注目されている。今回、IGSラット研究会の活動として、4施設参画によるCrl:WI(Han)ラットの一般毒性試験に関する背景データの収集を実施した。下記の共通プロトコールを基に、各施設で試験条件を設定し、Crl:CD(SD)ラットの背景データとの比較を行った。共通プロトコール: • 観察・投与期間 : 4週、13週または26週 • 動物数 : 雌雄 n=10/ 性 (無処置または溶媒投与) • 飼育条件 : 任意 (実施施設で決定,飼料等の条件設定はしない) • 検査項目 : GLP 適用試験で実施する検査項目結果及びまとめ:Crl:WI(Han)ラットは、Crl:CD(SD)ラットと比較して、以下の特徴が認められた。なお、主要な所見について、施設間に相違は認められなかった。 • 体重及び摂餌量:低値 • 眼科学的検査:角膜混濁 頻度増加 • 血液学的検査:WBC、Platelet低値 • 血液生化学的検査:脂質系、AST及びALT低値 • 器官重量(相対):胸腺高値 • 眼の病理組織学的検査:角膜鉱質沈着 増加
著者
瀬沼 美華 古谷 真美 高島 宏昌 太田 亮 森 千里 小川 哲郎 桑形 麻樹子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-70, 2012 (Released:2012-11-24)

ヒ素は飲水への混入が問題となっている環境汚染物質であり,疫学調査では高濃度汚染地域における児童のIQ低下が報告されている.動物実験においても,発達期(胎児期-授乳期)のヒ素暴露により離乳後に自発運動減少,記憶力低下,それに伴ったモノアミン濃度の変化といった発達神経毒性(DNT)が認められ,DNT試験法のバリデーションにおける陽性対照物質の1つに挙げられている. 我々はヒ素の神経発生初期への影響を検討する目的で,ラットの器官形成期(妊娠9-15日)にヒ素を投与し,投与直後の妊娠16日に胎児脳を観察し,ヒ素の直接的な神経発生への影響を検討してきた(第51回日本先天異常学会学術集会).その結果,母動物には体重増加抑制などの重篤な毒性が観察されたが,胎児死亡率,胎児体重に影響はなかった.また,組織中の含量分析の結果,ヒ素の胎児脳への移行は確認されたが,胎児脳の神経上皮細胞において細胞死の誘発は認められず,また,神経幹細胞の分裂能にも影響は認められなかった.今回,さらにヒ素暴露による胎児脳のモノアミン神経発生への影響について免疫組織学的方法を用いて詳細に検討した. Tyrosine hydroxylase陽性細胞の分布は,その神経核である腹側被蓋野および黒質緻密部で変化はなく,その投射先である線条体,大脳皮質における線維にもヒ素暴露の影響は認められなかった.一方,背側縫線核および正中縫線核のSerotonin (5-HT)陽性細胞数の減少が観察された.連続切片による詳細な観察から,5-HT陽性細胞の分布様式に異常はなく,全体的にその数が減少していることが明らかとなった.この結果から,胎生期のヒ素暴露は発生初期の5-HT神経細胞の発生に影響を及ぼすことが示唆された.