著者
大石 真莉子 川井 元晴 小笠原 淳一 古賀 道明 神田 隆
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.744-749, 2012 (Released:2012-10-15)
参考文献数
25
被引用文献数
2 2

症例は38歳男性である.実子のポリオ生ワクチン経口投与の1カ月後に左上肢と右下肢の筋力低下が出現した.同部位の針筋電図で異常所見なく,筋力低下は一旦自然軽快したが針筋電図の2週間後に再増悪した.MRIでは頸髄前角と腰髄前根にT2高信号域があり,ペア血清で抗ポリオ2型中和抗体価の有意な上昇をみとめたためワクチン関連麻痺性ポリオ(VAPP)と診断した.γ-グロブリン大量静注療法を施行したが筋力改善はなかった.VAPPは通常一相性の経過をたどるが,本例はポリオウイルスの曝露期間中に施行した針筋電図による骨格筋障害がウイルスの感染経路を活性化したため,被検筋を中心とした二相性の症状増悪をきたしたと考えられた.
著者
古賀 道明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1322-1324, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
4
被引用文献数
2 3

ビッカースタッフ型脳幹脳炎(BBE)の発症機序として,先行感染にともない誘導された自己免疫的機序がギラン・バレー症候群と同様に推測されている.一方で,三主徴(眼球運動障害,運動失調,意識障害)が急性進行性に一過性の経過でみられるという臨床像で規定される“症候群“としても捉えられており,ことなる病因に起因する症例も一定の割合でふくまれることが予想される.筆者らが世界的にもはじめておこなった,BBEに関する本邦での全国疫学調査では,BBEの年間発症数などの疫学的な情報に留まらず,BBEの病因の多様性を示すデータがえられており,その知見を中心にBBEを概説した.
著者
古賀 道明 神田 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1958-1964, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
12

脳炎の代表格であるヘルペス脳炎は,脳炎の一般的な特徴(発熱や髄膜刺激徴候,脳脊髄液異常)に加え,辺縁系脳炎としての臨床像(記憶障害や精神症状,大脳辺縁系にみられるCT・MRI病変分布)が特徴的である.本症を疑った時点でアシクロビル投与を開始するが,同時に他の辺縁系脳炎(HHV-6脳炎や自己抗体介在性脳炎)の可能性を想定しておくべきである.プリオン病はいまだに有効な治療法はなく感染予防が重要で,厚生労働省研究班の感染予防ガイドラインに基づき診療することが推奨される.