- 著者
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古賀 靖敏
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児神経学会
- 雑誌
- 脳と発達 (ISSN:00290831)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.6, pp.401-406, 2022 (Released:2022-12-07)
- 参考文献数
- 9
ミトコンドリア病の診断に役立つ感度・特異度の高いバイオマーカーを開発する事は,世界中のミトコンドリア病研究者にとって喫緊の課題である.我々は,この課題を解決する目的で,MELASのA3243G変異を持つサイブリッドモデルのメタボローム解析を行い,新規バイオマーカーを探索した.さらに,日常診療において,血清中のGDF15測定を可能にするために,ミトコンドリア病の自動診断薬として,新しいラテックス比濁免疫測定法(LTIA)を開発した.次に,ミトコンドリア病患者,遺伝子異常を有する保因者,および健常者を対象に,市販の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キットと新しいLTIAデバイスを用いた臨床性能試験を実施し,両者の同等性を調べた.その結果,ミトコンドリア病の新規診断バイオマーカーとしてGDF15を発見し,特許を取得した.全自動分析装置に搭載できるLTIAデバイスは,既存のELISAシステムと同等性を示した.LTIAデバイスを用いることで,感度94%,特異度91%の確率でミトコンドリア病の迅速な診断が可能となった.この自動化されたハイスループット技術は,ELISAキットよりも処理時間がわずか10分と短く,サンプル測定あたりの推定コストが低いという明確な利点があり,ミトコンドリア病の早期診断と治療が可能となる.この発見は,トランスレーショナルリサーチの成功例であり,世界のミトコンドリア病の診断アルゴリズムに革命をもたらすと考えられる.