著者
奥山 秀樹 三上 隆浩 木村 年秀 占部 秀徳 高橋 徳昭 岡林 志伸 平野 浩彦 菊谷 武 大野 慎也 若狭 宏嗣 合羅 佳奈子 熊倉 彩乃 石山 寿子 植田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.352-360, 2014-04-01 (Released:2014-04-10)
参考文献数
12

摂食機能障害において,全国で 26 万人と推定されている胃瘻造設者は最近の 10 年間に急速に増加してきた。胃瘻については,その有効性,トラブル,および予後等に類する報告が今までにされているが,対象者は,胃瘻を管理する医療施設や高齢者施設に軸足が置かれており,実際に胃瘻を造設した術者や,患者側の視点での調査はほとんど行われていない。 そこで今回,医療施設,高齢者施設に加えて,胃瘻を造設した医療施設と在宅胃瘻管理者(家族)とを対象にして,胃瘻に関する実態を調査し,課題の抽出,胃瘻を有効な手段とするための要因等について検討を行った。調査対象は国民健康保険診療協議会(国診協)の直診施設(国保直診施設)全数の 833 件,国保直診の併設および関連介護保険施設(介護保険施設)の 138 件,および国保直診票の対象施設において入院中もしくは在宅療養中の胃瘻造設者の家族 485 件である。 その結果,国保直診施設において胃瘻造設術件数は「減っている」が 53.1%であり,過去 3 年間に減少傾向にあるものの,介護保険施設では「減っている」が 20.3%であり,胃瘻造設を実施する側と,それを受け入れる側とに差を生じた。患者側の胃瘻に対する満足度は,造設前に胃瘻の長所,短所の説明があり,それも医師以外の職種からも説明を受け,自宅療養であること,また結果的に造設後 3 年以上経過しているといったことが,満足する要因になっていた。
著者
原 豪志 戸原 玄 和田 聡子 熊倉 彩乃 大野 慎也 若狭 宏嗣 合羅 佳奈子 石山 寿子 平井 皓之 植田 耕一郎 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.289-295, 2014-01-14 (Released:2014-01-24)
参考文献数
35

過去に,喉頭挙上筋が開口筋であるため嚥下機能の評価を目的として開口力測定器を開発し,健常者の開口力を測定した。本研究では開口力が嚥下障害のどのような要素を反映しているかを調べるために,開口力と誤嚥,咽頭残留の有無との関係を調べた。 対象者は慢性期嚥下障害の患者95名 (男性49 名,女性46 名) で平均年齢は男性75.4±9.7 歳,女性 79.3±9.6 歳である。 誤嚥あり群 (男性:4.1±2.8 kg,女性:3.4±1.7 kg) と誤嚥なし群 (男性:5.6±2.9 kg,女性:4.4±1.8 kg) では,男女別で開口力に有意差を認めた。喉頭蓋谷に残留あり群 (男性:4.2±2.3 kg,女性:3.6±1.4 kg) となし群 (男性:8.5±3.4 kg,女性:5.0±2.0 kg) では,男女別でともに有意差を認めた。梨状窩に残留あり群 (男性:4.1±2.1 kg,女性:3.5±1.5 kg) となし群 (男性:6.7±3.6 kg,女性:4.7± 1.9 kg) においても,男女別でともに有意差を認めた。 誤嚥は口腔期の問題でも生じるが不十分な咽頭収縮や喉頭挙上により起こり,咽頭残留は不十分な喉頭蓋の翻転や咽頭短縮が主な成因である。これらはいずれも不十分な舌骨,喉頭の挙上に起因する。以上より開口力は,嚥下時の機能評価において誤嚥と咽頭残留の有無を反映していることが示唆された。