- 著者
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原 豪志
戸原 玄
和田 聡子
熊倉 彩乃
大野 慎也
若狭 宏嗣
合羅 佳奈子
石山 寿子
平井 皓之
植田 耕一郎
安細 敏弘
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.3, pp.289-295, 2014-01-14 (Released:2014-01-24)
- 参考文献数
- 35
過去に,喉頭挙上筋が開口筋であるため嚥下機能の評価を目的として開口力測定器を開発し,健常者の開口力を測定した。本研究では開口力が嚥下障害のどのような要素を反映しているかを調べるために,開口力と誤嚥,咽頭残留の有無との関係を調べた。 対象者は慢性期嚥下障害の患者95名 (男性49 名,女性46 名) で平均年齢は男性75.4±9.7 歳,女性 79.3±9.6 歳である。 誤嚥あり群 (男性:4.1±2.8 kg,女性:3.4±1.7 kg) と誤嚥なし群 (男性:5.6±2.9 kg,女性:4.4±1.8 kg) では,男女別で開口力に有意差を認めた。喉頭蓋谷に残留あり群 (男性:4.2±2.3 kg,女性:3.6±1.4 kg) となし群 (男性:8.5±3.4 kg,女性:5.0±2.0 kg) では,男女別でともに有意差を認めた。梨状窩に残留あり群 (男性:4.1±2.1 kg,女性:3.5±1.5 kg) となし群 (男性:6.7±3.6 kg,女性:4.7± 1.9 kg) においても,男女別でともに有意差を認めた。 誤嚥は口腔期の問題でも生じるが不十分な咽頭収縮や喉頭挙上により起こり,咽頭残留は不十分な喉頭蓋の翻転や咽頭短縮が主な成因である。これらはいずれも不十分な舌骨,喉頭の挙上に起因する。以上より開口力は,嚥下時の機能評価において誤嚥と咽頭残留の有無を反映していることが示唆された。