著者
濱嵜 朋子 酒井 理恵 出分 菜々衣 山田 志麻 二摩 結子 巴 美樹 安細 敏弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.156-165, 2014 (Released:2014-07-19)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

【目的】栄養状態と口腔内因子の関連については,多くの報告がみられる。これまでの報告は口腔機能との関連について検討したものが多い。本研究では舌の状態など,器質的な口腔内因子に着目し,栄養状態との関連について明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は通所高齢者82名とした(男性29名,女性53名,年齢81.5±7.2歳(平均±標準偏差))。栄養状態,生活および食習慣の状況,栄養素等摂取量,食事摂取時状況および口腔内の状況について調査を行い,口腔内状況と栄養状態評価との関連について比較検討を行った。【結果】栄養状態と関連のあった口腔内因子は,“食事中の食べこぼし”と“舌苔の厚み”であった。食習慣では,“間食としてパンを摂取する”,“加工食品を使用する”,“大豆製品摂取頻度が少ない”および“漬け物摂取頻度が少ない”もので,いくつかの口腔内因子との関連がみられた。“食べこぼし有り”の者は,“たんぱく質エネルギー比率”が低いという特徴がみられた。【結論】食事状況や器質的な口腔内因子が栄養状態,食習慣さらには摂取栄養素と関連が認められた。そのため,食習慣についての把握,食事状況や口腔についての十分な観察,食事介助の改善および口腔ケアの実施に取り組むことの重要性が示唆された。
著者
岩﨑 正則 福原 正代 大田 祐子 藤澤 律子 角田 聡子 片岡 正太 茂山 博代 正木 千尋 安細 敏弘 細川 隆司
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.42-50, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
24

男性労働者における主食の重ね食べ(1回の食事で炭水化物の供給源となる主食を2種類以上同時に食べること)と歯周病の関連を明らかにすることを目的に横断研究を実施した.福岡県内の一企業で行われた定期健康診断にあわせて実施した歯科健診,食事調査,質問紙調査に参加した539名の男性従業員(平均年齢47.9歳)のデータを用いた.歯科健診では10歯の代表歯の歯周ポケット深さを計測した.食事調査では1日あたりの炭水化物摂取量を推定し,摂取量上位20% を多量摂取と定義した.そして4 mm以上の歯周ポケットを有する歯数を目的変数とし,主食の重ね食べの頻度「1日1食以上」「1日1食未満」を説明変数とする負の二項回帰モデルを用いて両者の関連を解析した.さらに,主食の重ね食べの頻度が高い者には炭水化物を多量に摂取している者が多く,歯周病へ影響を与えているとの関連を仮定し,一般化構造方程式モデリング(GSEM)を用いて3者の関連を分析した.解析対象集団の14.8%が1日1食以上の主食の重ね食べをしていた.主食の重ね食べの頻度が1日1食未満の群と比較して,1日1食以上の群では4 mm以上の歯周ポケットを有する歯数が有意に多かった(発生率比=1.47,95%信頼区間=1.10–1.96).GSEMを用いた分析の結果,主食の重ね食べの頻度が高いことは炭水化物の多量摂取と関連があり,主食の重ね食べが歯周病に与える影響の一部は炭水化物の多量摂取を介していることが示された.
著者
安細 敏弘 粟野 秀慈 川崎 正人 嶋崎 義浩 邵 仁浩 宮崎 秀夫 竹原 直道
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.632-636, 1992-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this study was to evaluate the oral health of Iranian workers in Japan and their general life conditions, 125 Iranian subjects aged 20-43 yr congregating in Yoyogi and Ueno Parks in Tokyo were examined. The mean decayed, missing, and filled teeth (DMFT=7.8) and filled teeth (FT=2.3) scores were lower than the Japanese national average. The mean decayed teeth (DT=3.4) and missing teeth (MT=2.2) scores were higher than the Japanese national average. Calculus was the predominant periodontal problem, and shallow pockets prevailed in persons aged 30-34 yr. 39.7% of the subjects had complaints about their oral health, but only 16.8% desired dental treatment in Japan. Most of the subjects could not undergo dental treatment because of the high cost. Analysis of the results showed poor dental health in this survey group and emphasizes the necessity of improving the (dental) health service programs for foreigners.
著者
酒井 理恵 山田 志麻 二摩 結子 濱嵜 朋子 出分 菜々衣 安細 敏弘 巴 美樹
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.28-37, 2014 (Released:2014-01-30)
参考文献数
32

通所利用在宅高齢者のMini Nutritional Assessment( MNA®)による栄養状態評価と身体状況(日常生活動作、体重、ふくらはぎ周囲長など)、現病歴・既往歴との関連について調査を行い、これらの関連を明らかにすることを目的とした。対象者は通所利用する要介護在宅高齢者78 名、平均年齢81.0 ± 7.29 歳。摂取栄養素量はエネルギー、たんぱく質を含む10 項目で有意に低値であり、体重の維持は低栄養状態の予防に繋がるため、食事量の維持が必要であると考える。また、体重とふくらはぎ周囲長は男女ともに正の相関関係にあり、筋肉量の維持には適度な運動を取り入れサルコペニア予防とともに低栄養予防に繋げる必要がある。さらに、在宅高齢者は定期的に栄養状態評価のスクリーニングを実施し、低栄養の指標となる体重低下やふくらはぎ周囲長の減少を早期発見し重症化を予防することが必要である。
著者
秋山 理加 濱嵜 朋子 酒井 理恵 岩﨑 正則 角田 聡子 邵 仁浩 葭原 明弘 宮﨑 秀夫 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.76-84, 2018 (Released:2018-05-18)
参考文献数
47
被引用文献数
1

【目的】在宅高齢者を対象として簡易嚥下状態評価票(EAT-10)を用いて,嚥下状態と栄養状態の関連について明らかにすることを目的とした.【対象および方法】新潟市の85歳在宅高齢者129名を対象とした.口腔と全身の健康状態に関するアンケートを郵送し自記式にて調査を行った.調査内容は,EAT-10,現在歯数,簡易栄養状態評価(MNA-SF),主観的健康観,老研式活動能力指標,Oral Health Impact Profile-49(OHIP),嚙める食品数である.これらの因子について,EAT-10の合計点数が3点以上を嚥下機能低下のリスク有り群とし,3点未満の群との比較検討を行った.【結果】EAT-10によって,嚥下機能低下が疑われたものは52.7% であった.嚥下機能低下のリスク有り群ではOHIP 高値(p<0.001),嚙める食品数低値(p<0.001)と有意な関連がみられ,主観的健康観で“あまり健康ではない”者の割合が有意に高く(p<0.001),MNA-SFで“低栄養”の割合が有意に高かった(p=0.007).さらに,MNA-SF を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,栄養状態と嚥下機能には有意な関連がみられ,EAT-10の点数が高くなるほどMNA-SF で“低栄養のリスク有りまたは低栄養”となるオッズ比が有意に高かった (p=0.043).【結論】在宅高齢者の嚥下機能低下と低栄養状態との関連性が示唆された.
著者
秋山 理加 濱嵜 朋子 岩﨑 正則 角田 聡子 片岡 正太 茂山 博代 濃野 要 葭原 明弘 小川 祐司 安細 敏弘 宮﨑 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.136-146, 2021 (Released:2021-08-15)
参考文献数
37

わが国では,年々超高齢者数が増加している.健康度の高い在宅超高齢者の食生活の実態を把握することは健康寿命延伸の有益な知見になると考えられる.そのため著者らは,在宅超高齢者を対象として,食事パターンを同定し,栄養素摂取量,栄養状態および嚥下状態との関連について明らかにすることを目的として本研究を行った. 新潟市の91歳在宅高齢者86名を対象として,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ),簡易栄養状態評価(MNA-SF),簡易嚥下状態評価票(EAT-10)による調査を行った.食品群別摂取量から主成分分析を行い,食事パターンを同定し,それらと栄養素摂取量の関連を検討した.さらに,各食事パターンと食に関連する因子,MNA-SFおよびEAT-10との関連を比較検討した. 主成分分析の結果,4つの食事パターンが同定された.それぞれの主成分得点三分位によって栄養素摂取量を比較したところ,肉,魚,野菜類の摂取量が多く,ご飯,パンが少ない「副菜型」では,高得点群ほどたんぱく質やビタミンDなどの栄養素摂取量が多く,栄養状態も良好な者が多かった.また,MNA-SFで低栄養と判定された群では対照群と比べて嚥下機能低下のリスクのある者の割合が有意に高かった. さらに,「副菜型」の食事パターンでは居住形態や共に食事をする人の有無との関連も示唆された.
著者
有田 正博 北村 知昭 坂本 英治 佐藤 耕一 篠原 雄二 庄野 庸雄 瀬田 祐司 園木 一男 芳賀 健輔 村田 貴俊 黒川 英雄 西田 郁子 林田 裕 寺下 正道 横田 誠 西原 達次 吉野 賢一 小城 辰郎 中村 恵子 木尾 哲郎 大住 伴子 安細 敏弘 一田 利通
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会総会抄録プログラム
巻号頁・発行日
vol.64, pp.20, 2004

九州歯科大学においては,5年次生を対象に、第1回OSCEトライアル(86名)を2003年3月15日に,第2回OSCEトライアル(94名)を2003年12月6日に実施した。第1回目は5課題(医療面接,ブラッシング指導,ラバーダム防湿,概形印象採得,単純抜歯),第2回目は7課題(医療面接,フィルムマウント,レジン充填,根管治療,支台歯形成,矯正装置の説明,バイタルサイン)であった.平均点は,79.4点および80.4点で概ね良好であった.面接・説明系課題と比較して技能系課題の平均得点率は低かった。また技能系課題においては受験会場および受験時間の違いによる平均点の差が認められた。
著者
岩崎 正則 角田 聡子 安細 敏弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.865-875, 2021-12-15 (Released:2021-12-24)
参考文献数
22

目的 継続的な口腔管理,定期的な歯科受診は口腔の健康維持に重要である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により,感染への不安から医療機関への受診を控えるケースが報告されている。定期歯科受診による管理下にあった口腔の状態が,COVID-19感染拡大にともなう定期管理の中断により,どのように変化するかは明らかとなっていない。本研究は,高校生を対象に,学校健康診断(学校健診)のデータと学校健診と同時に実施した質問紙調査から得られたデータを用いて,COVID-19流行下の定期的歯科受診の状況と口腔の状態の変化を検討することを目的とした。方法 福岡県内の高等学校1校に在学する高校生のうち2019年度の1年生,2年生であった者878人を解析対象とした。COVID-19流行下での定期的歯科受診の状況,歯科医療機関受診に対する不安について質問紙により調査した。2019年度および2020年度学校健診結果にもとづく永久歯の状態と歯肉の状態の変化と定期的歯科受診の状況の関連をロバスト標準誤差を推定したポアソン回帰分析を用いて評価した。結果 対象者878人中,417人(47.5%)が定期歯科受診未実施,320人(36.4%)がCOVID-19流行下での定期歯科受診継続,141人(16.1%)が定期歯科受診中断であった。定期歯科受診中断群では,歯科医療機関受診に不安を抱いている者の割合が30.5%であり,有意に高かった。2019年度の歯科健診時に歯肉の炎症がない者521人における,2020年度の歯科健診時に歯肉の炎症を有する者の割合は,定期歯科受診未実施群で31.0%,定期歯科受診継続群で20.2%,定期歯科受診中断群で38.2%であった。定期受診継続群と比較して,定期歯科受診中断群および定期歯科受診未実施群では,歯肉の炎症を有する者の割合が有意に高く,共変量調整後の発生率比(95%信頼区間)は定期歯科受診中断群で1.95(1.34-2.84),定期歯科受診未実施群で1.50(1.07-2.10)であった。定期歯科受診中断と永久歯の状態の変化の間には有意な関連はなかった。結論 本研究の結果から定期歯科受診の中断と歯科医療機関受診への不安感は有意に関連していること,定期歯科受診中断者では学校健診時に新たに歯肉の炎症を有する者の割合が高いことが示された。
著者
原 豪志 戸原 玄 和田 聡子 熊倉 彩乃 大野 慎也 若狭 宏嗣 合羅 佳奈子 石山 寿子 平井 皓之 植田 耕一郎 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.289-295, 2014-01-14 (Released:2014-01-24)
参考文献数
35

過去に,喉頭挙上筋が開口筋であるため嚥下機能の評価を目的として開口力測定器を開発し,健常者の開口力を測定した。本研究では開口力が嚥下障害のどのような要素を反映しているかを調べるために,開口力と誤嚥,咽頭残留の有無との関係を調べた。 対象者は慢性期嚥下障害の患者95名 (男性49 名,女性46 名) で平均年齢は男性75.4±9.7 歳,女性 79.3±9.6 歳である。 誤嚥あり群 (男性:4.1±2.8 kg,女性:3.4±1.7 kg) と誤嚥なし群 (男性:5.6±2.9 kg,女性:4.4±1.8 kg) では,男女別で開口力に有意差を認めた。喉頭蓋谷に残留あり群 (男性:4.2±2.3 kg,女性:3.6±1.4 kg) となし群 (男性:8.5±3.4 kg,女性:5.0±2.0 kg) では,男女別でともに有意差を認めた。梨状窩に残留あり群 (男性:4.1±2.1 kg,女性:3.5±1.5 kg) となし群 (男性:6.7±3.6 kg,女性:4.7± 1.9 kg) においても,男女別でともに有意差を認めた。 誤嚥は口腔期の問題でも生じるが不十分な咽頭収縮や喉頭挙上により起こり,咽頭残留は不十分な喉頭蓋の翻転や咽頭短縮が主な成因である。これらはいずれも不十分な舌骨,喉頭の挙上に起因する。以上より開口力は,嚥下時の機能評価において誤嚥と咽頭残留の有無を反映していることが示唆された。
著者
岡部 幸子 森本 泰宏 田中 達朗 安細 敏弘 高田 豊 竹原 直道 大庭 健
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会総会抄録プログラム
巻号頁・発行日
vol.66, pp.9, 2006

高齢者のパノラマX線写真上で検出された茎状突起の長さ及び形状の臨床的意義を検討する。8020データバンク構築の疫学調査で集められた659名の80歳のパノラマX線写真を対象に茎状突起の長さの計測及び形状のパターン分類を行った。被検者の全身状態に関する各種データ(骨密度、血圧、心電図の異常の存在、心拍数、血清カルシウム値及び身体的スタミナ)に関して、茎状突起の長さとの間で関連性の有無を検討した。80歳における茎状突起の長さはパノラマX線写真上0.0 mm から153.0 mmで左右には有意差はなく、男女間では有意差を示した。形状のパターンは、MacDonald-Jankowskiの分類中、パターンEに属するものが、次いでパターンDに属するものが多く認められたが、男女間に有意差はなかった。茎状突起の長さと各種データに関する関連性は、血清カルシウム値と骨密度に関連性を示し、他には明らかな関連性はなかった。高齢者のパノラマX線写真を読影する上で我々歯科医は茎突舌骨靱帯の骨化に伴う茎状突起の変化について把握しておく必要がある。同時に、顕著な骨化を来している症例は血清カルシウム値の上昇を意味する可能性があることを考慮しておくべきである。
著者
安細 敏弘 笠井 幸子 仲山 智恵 濱嵜 朋子 粟野 秀慈 秋房 住郎
出版者
KYUSHU DENTAL SOCIETY
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.321-325, 2000-08-25 (Released:2017-12-20)
被引用文献数
2

リチウム電池内蔵電子歯ブラシ, 逆の電流回路を形成する電子歯ブラシ, 電子歯ブラシから電池を除去した歯ブラシのプラーク除去効果を評価することを目的として, 27名を対象に6週間の臨床試験を行った.その結果, リチウム電池内蔵電子歯ブラシは, 対照とした電池のない歯ブラシに対して有意にプラーク除去効果が認められた.逆の電流回路を形成する電子歯ブラシには有意なプラーク除去効果は認められなかった.これらの結果は, リチウム電池内蔵電子歯ブラシの植毛部がマイナスに帯電することによりプラーク除去効果が得られることを示している.
著者
出分 菜々衣 濱嵜 朋子 邵 仁浩 吉田 明弘 粟野 秀慈 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.278-283, 2014

本研究では,要介護高齢者を対象として,低栄養を予防する要因を探るため,Sense of Coherence(前向き姿勢:SOC)と簡易栄養状態評価(MNA)との関連,さらに,SOCと身体自立度(ADL),生活習慣および口腔関連因子との関連について調べた.対象は北九州市内および近隣市に居住し,高齢者施設を利用する要介護在宅高齢者66名のうち,認知症・うつなど精神的問題がないと判断された63名(男性20名,女性43名,平均年齢81.1±7.0歳)について,面接聞き取り法によるSOC評価,MNAによる栄養状態の評価,また口腔の健康評価として,口腔内診査,嚥下機能検査を行った.生活習慣については面接聞き取りによる質問紙調査を行った.<br> その結果,SOCスコアは運動習慣,MNA,食欲,現在歯数との間に有意な関連性がみられた.さらに重回帰分析を行ったところ,交絡因子による調整後もSOCスコアとMNAとの間の有意性は保たれた.<br> したがって,高齢者の栄養状態の維持には前向きな姿勢が関与していることが示唆された.
著者
原 豪志 戸原 玄 近藤 和泉 才藤 栄一 東口 髙志 早坂 信哉 植田 耕一郎 菊谷 武 水口 俊介 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-65, 2014-10-16 (Released:2014-10-25)
参考文献数
32

経皮内視鏡的胃瘻造設術は,経口摂取が困難な患者に対して有用な栄養摂取方法である。しかしその適応基準はあるが,胃瘻造設後の経口開始基準や抜去基準はない。 われわれは,胃瘻療養中の脳血管障害患者の心身機能と摂食状況を,複数の医療機関にて調査したので報告する。133 名 (男性 72 人,女性 61 人)を対象とし,その平均年齢は77.1±11.3 歳であった。患者の基本情報,Japan Coma Scale (JCS),認知症の程度,Activities of daily living (ADL),口腔衛生状態,構音・発声の状態,気管切開の有無,嚥下内視鏡検査 (Videoendoscopic evaluation of swallowing,以下 VE)前の摂食状況スケール (Eating Status Scale,以下 ESS),VE を用いた誤嚥の有無,VE を用いた結果推奨される ESS (VE 後の ESS),の項目を調査した。 居住形態は在宅と特別養護老人ホームで 61.3%を占め,認知症の程度,ADL は不良な対象者が多かったが,半数以上は口腔衛生状態が良好であった。また,言語障害を有する対象者が多かった。対象者の82.7%は食物形態や姿勢調整で誤嚥を防止することができた。また,VE 前・後の ESS の分布は有意に差を認めた (p<0.01)。胃瘻療養患者に対して退院後の摂食・嚥下のフォローアップを含めた環境整備,嚥下機能評価の重要性が示唆された。
著者
高田 豊 安細 敏弘 邵 仁浩 粟野 秀慈 中道 郁夫 吉田 明弘 後藤 健一 園木 一男 藤澤 律子
出版者
九州歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

心機能と口腔機能の関連について高齢の患者で検討した。心機能は携帯型24時間心電図と心エコー検査と血清NT-pro-BNP濃度で、口腔機能は歯数、アタッチメントロス、ポケット深さ、アイヒナー指数で評価した。重回帰分析を使用して性別と年齢の影響因子を補正しても、アイヒナー指数と上室性期外収縮、心室性期外収縮、心室性頻拍に有意な関係を認めた。現在歯数と心室性期外収縮連発、上室性頻拍との間にも関連があった。本研究結果から、咀嚼機能や残存歯数と不整脈の間には関連があることが示唆された。
著者
安細 敏弘 宮﨑 秀夫 吉田 明弘 山下 喜久 邵 仁浩 粟野 秀慈
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

侵襲性歯周炎は若年者に特異的に発症する歯周炎であるが、発症に関して環境要因としての栄養摂取状況、遺伝学的要因などを包括的に解明した研究はない。本研究では疫学調査ならびに遺伝学的調査を行うことによりその環境要因を解明することにした。疫学的調査ではモロッコ王立大学の1年生を対象に、口腔内診査、唾液・歯肉縁下プラークの採取、採血、質問紙調査(年齢、性別、社会経済的背景、現病歴、既往歴、服薬情報、喫煙習慣、保健行動、食事内容(BDHQに準じる)とした。遺伝学的研究では侵襲性歯周炎が疑われる歯肉縁下プラークのA. a JP2株の有無、血球ミトコンドリアDNAの塩基配列を用いた分子人類学的解析を行った。
著者
福原 正代 安細 敏弘 高田 豊 秋房 住郎 園木 一男 竹原 直道 脇坂 正則
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

福岡県内在住の大正6年生まれ(1917)の人を対象に、80歳時に口腔と全身状態の調査をおこなった(福岡県8020調査)。福岡県8020調査の受診者を対象に、平成15年85歳時の口腔と全身状態の調査を施行した。口腔健診には、現在歯数、咀嚼能力を含む。咀嚼能力は15食品の咀嚼可能食品数で表現した(ピーナッツ、たくわん、堅焼きせんべい、フランスパン、ビーフステーキ、酢だこ、らっきょう、貝柱干物、するめ、イカ刺身、こんにゃく、ちくわ、ごはん、まぐろ刺身、うなぎ蒲焼き)。内科健診には、身長、体重、血圧、脈波伝播速度(PWV)、心電図、血液検査を含む。Mini-Mental State Examination(MMSE)を用い認知機能を調査した。現在歯数・咀嚼状態と、認知機能および動脈硬化の関係を検討した。受診者207名のうち205名(男性88名、女性117名)でMMSEを施行した。MMSE得点は23.8±0.3点(30点満点、平均±標準誤差)で、性差はない。MMSE得点は24点以上が正常とされるが、MMSE24点以上の達成率は62.4%。現在歯数は7.3±0.6本で、咀嚼可能食品数は10.7±0.3。MMSE得点と現在歯数の間には有意な相関はなかった。一方、MMSE得点と、咀嚼食品数の間には正の相関の傾向があった(相関係数0.12、p=0.08)。咀嚼食品数を0-4、5-9、10-14、15の4群にわけると、それぞれの群のMMSE得点は、22.7±1.3点、23.6±0.7点、23.9±0.5点、24.4±0.5点であった。PWVはMMSE正常群22.9±0.5m/sec、MMSE低下群24.9±0.8m/secで、有意にMMSE低下群で高値であった(p<0.05)。性別、BMI、収縮期血圧、PWV、脈圧、心電図SV1+RV5、総コレステロール、HbA1c、喫煙、飲酒、教育歴について、MMSE得点との単相関をとると、PWV、SV1+RV5、教育歴が有意となった。重回帰分析でもPWV、SV1+RV5、教育歴のみが有意な説明変数となった(p<0.05)。【結論】口腔衛生状況を改善し咀嚼能力を保つことで、認知症が少なくなる可能性が示唆された。仮に自分の歯がなくても、義歯をつけていれば、咀嚼できる食品数が多く、認知症が少なくなる可能性がある。また、85歳一般住民において、PWVは認知障害の独立した説明変数であった。PWVは動脈硬化性血管病変を反映するひとつの指標であるが、85歳という超高齢者においても、認知機能が、動脈硬化性血管病変の進行にともなって障害されると考えられた。