- 著者
-
呉屋 五十八
末永 直樹
大泉 尚美
吉岡 千佳
山根 慎太郎
谷口 昇
金谷 文則
- 出版者
- 日本肩関節学会
- 雑誌
- 肩関節
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.3, pp.763-767, 2017
2002年から2014年までの間に,一次修復不能な後上方腱板広範囲断裂に対し広背筋・大円筋移行術を行い2年以上経過観察可能であった25例25肩の術後成績を検討した.関節症変化がなく,骨頭を温存し移行術を行ったのは12例12肩(RCT群),関節症をともなうcuff tear arthropathyで小径骨頭を用いた人工骨頭置換術と移行術を行ったのは13例13肩(CTA群)であった.RCT群は平均年齢65.0歳,男性11例,女性1例,平均経過観察時間は38.3ヵ月であった.CTA群は平均年齢68.6歳,男性4例,女性9例,平均経過観察時間は52.9ヵ月であった.両群の術前と最終観察時のJOAスコアと肩関節可動域,外旋ラグサインの変化,合併症,さらにRCT群では術前と最終観察時のX線所見,術後のMRIによる再断裂の有無を調査した.<BR> JOAスコアはRCT群39.9点から77.7点,CTA群は40.6点から78.0点へ,屈曲はRCT群は49.6°から141.3°,CTA群は56.5°から136.9°へ,外旋はRCT群は15.4°から33.3°,CTA群は16.2°から29.2°へ有意に改善した.外旋ラグサインは術後全例で消失していた.合併症は認めなかった.RCT群で4肩(33.3%)に術後の肩甲上腕関節症の進行を認め,4肩(33.3%)に骨頭上方化の進行を認めた.再断裂は認めなかった.両群でJOAスコア,外旋ラグサインを含め可動域の改善を認めており,広背筋・大円筋移行術は一次修復不能な後上方腱板断裂に対する有用な手技であると考えられた.