著者
吉川 信幸 井上 忠男 Converse Richard H.
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.437-444, 1986
被引用文献数
12

イチゴから分離されたラブドウイルス様粒子の3分離株(RとH, S)について,検定植物(<i>Fragaria vesca</i> UC-4, UC-5, UC-6と<i>F. virginiana</i> UC-10, UC-11, UC12)での病徴を調べたところ, R分離株は典型的なイチゴクリンクルウイルス(SCrV), HとS分離株はstrawberry latent C virus (SLCV)と考えられた。これら3分離株の感染葉とオレゴン州立大学保存のSLCV (SLCV-O分離株)感染葉の超薄切片を電顕により比較観察すると,いずれの分離株からもほぼ同じ大きさのラブドウイルス様粒子とviroplasmが検出されたが, R分離株ではウイルス様粒子とviroplasmが主に細胞質で観察されたのに対し, HとS, SLCV-O分離株では成熟粒子は主に核膜間隙に集積し,未成熟粒子とviroplasmは核内に存在していた。以上のことから,イチゴには2種類のラブドウイルス,すなわち細胞質関連型のSCrVと核関連型のSLCVが存在することが明らかになった。
著者
佐橋 憲生 中村 仁 吉川 信幸 窪野 高徳 庄司 次男 高橋 壮
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.481-484, 1995-10-25
被引用文献数
1

キリてんぐ巣病の実用的な診断法を開発するために, 感染樹体内におけるファイトプラズマの分布と季節的消長をPCR法を用いて調査した。ファイトプラズマは花芽の奇形を呈した枝の樹皮において, 5〜6月から10月まで効率よく検出されたが, 枝の違いにより季節的消長が認められた。奇形花芽が現れない枝の組織からの検出頻度はきわめて低く, 10月になってはじめて高率に検出された。すなわち, ファイトプラズマは同一感染樹体内でも枝と枝の間でその検出頻度が異なり, 不均一に分布していることが明らかとなった。これらの結果から, 正確な診断を行うためには1被験樹あたり少なくとも数本の枝を選んで試料を採取する必要があること, 試料採取時期として秋が適していることが明らかとなった。
著者
吉川 信幸 伊藤 伝 八重樫 元
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

従来病原が未定であったオウトウ芽枯病、リンゴ輪状さび果病、リンゴ奇形果病、およびリンゴえそモザイク病の病原ウイルスの解析に、次世代シークエンサーによるバイローム解析を応用し、オウトウ芽枯病からはオウトウBウイルス(ChVB)、リンゴえそモザイク病からはリンゴえそモザイクウイルス(ApNMV)の2種の新ウイルスを発見するとともに、リンゴ輪状さび果病の病原は、リンゴクロロティックリーフスポットウイルスの一系統であることを明らかにした。