著者
吉川 守
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.73, pp.21-42, 1978-03-31 (Released:2010-11-26)
参考文献数
26

移動表現において言語主体と移動主体との間に生じる物理的・心理的方向性は, きわめて一般的な言語的視座と考えられるが, 明確な文法現象として範疇化している言語は比較的少数であると思われる。本稿では, アッカド語に認められるVentiveとバビロニアの文法テクストに見られる文法術語Riatum/Sushurtumを手掛として, 従来未解明のまま残されているシュメール語の動詞接頭辞の一部が, Ventive《来辞法》及びIentive((去辞法))を表示する機能を有することを指摘して見たいと思う。