著者
京田 亜由美 神田 清子 加藤 咲子 中澤 健二 瀬山 留加 武居 明美
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.111-118, 2010-05-01 (Released:2010-06-10)
参考文献数
46
被引用文献数
2

【背景・目的】 インフォームド・コンセントと患者の意志決定が重要視され, がんなどの病を抱える患者は, 否応なく自らの死を意識するため, 患者の自分らしさを支える看護が求められている. 本研究の目的は, 死を意識する病を抱える患者の死生観に関連する研究を分析し, 死生観の内容を明らかにすることである. 【対象と方法】 1999年から2009年までの原著論文を対象とし, 医学中央雑誌を使用し, "死生観" and "患者" と, "病気体験" をキーワードに検索を行い, 死に至る病を抱える患者を対象とし, テーマ内容に沿った42論文を対象に, 分析を行った. 【結 果】 死生観に関する研究内容は,《生かされていると感じながら, 最期まで精一杯生きたいという死生観》《周囲との関係性を最期まで大切にしたいという死生観》《逃避と希望という両側面の死への願い》《逃れられない死への恐れと孤独感》の4つのカテゴリから形成された. 【結 語】 死を意識した患者への看護は, 症状マネジメントと自律への支援, 患者・家族の関係性の強化と死について語る場の提供への支援の必要性が示唆された.
著者
小山 善之 熊取 敏之 澁谷 敏三 新谷 和夫 福田 龍三 今村 幸雄 佐野 一郎 鴫谷 亮一 古屋 曉一 河野 實 日野 佳弘 渡邊 孝 武正 勇造 中村 なをゑ 小澤 義光 林 康之 平島 信子 早船 喬一 濱口 榮祐 木村 信良 神田 清 岡本 十二郎 濱田 政彦 大橋 成一 橋本 敬祐 小酒 井望 石井 暢 天木 一太 深澤 義明 貴船 トミ子 松村 義寛 中野 巖 種田 強一郎 林 義次 村田 貢
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.5-45, 1955

This paper is an intermediate report of the clinical observations and various investigations made upon the 16 patients of the radiation sickness caused by BIKINI ashes on. 1st March 1934. The patients were admitted to the First Tokyo National Hospital on March 28th, and this report shall be for the period of the 5 months from March 28th to the end of August, 1964. Later, a thorough and complete report will be given, in which some amendments may be added to the present paper.<br>INTRODUCTION: At 3.50 a. m. on 1st March 1954, the 5th Lucky Dragon, a fishing boat, with a crew of twenty three on board, was located at about 100 miles east of BIKINI. The boat was under grey-white ash-fall for more than 5 hours. The crew was exposed to the ash-fall for 1.5 to 5 hours. The evening of that day they suffered from headache, anorexia, conjunctivitis and later nausea, vomiting, exhaustion and diarrehea, Several days later they suffered from itching, pain, rash, and erosion on the exposed skin areas. One week later two of the crew had hemorrhage of gingiva and some of the crew suffered from depilation. On March 19th, the boat returned to its base at Yaizu. On March 16th, the crew was admitted to the Kyoritsu Yaizu Hospital and on March 28th, 16 patients out of 23 were transfered to our hospital (the First Tokyo National Hospital).<br>On March 26th, Prof. Kimura's laboratory of Tokyo University made the analysis of the ashes taken from the 5th Lucky Dragon and found the following radioactive substances: Sr-89, Sr-90, Y-90, Y-91, Zr-96, Nb-95m, Nb-95, Ru-103, Ru-106, Te-129m, Te-129, Te-132, I-131, I-132, Ba-140, La-140, Ce-141, Ce-144, Pr-143, Pr-194, Nd-147, Pm-147, S-35, Ca-45, U-237, and Pu-239. The remaining radiation of the boat was investigated by Dr. Kakei et al. of March 17th and found it to be around 100mr/hr. Upon this data the total radiation was estimated at a count of 270 to 440γ. on the crew. In addition to the external exposure of such radiation, internal exposure, such as respiration of contaminated air, drinking of contaminated water and taking of contaminated food, shall be taken into consideration in the present cases. Radioactivity was found in the bile and urine taken from the patients.<br>GENERAL REMARKS: The 16 cases were strong young men but their body weight began to decrease from the middle of May and high or slight fever, anorexia, feeling of exhaustion, diarrhea and headache continued.<br>Skin and Hair: Irregular depilation, depigmentation, pigmentation with rain and itching, and erosion was observed. Some cases had folliculitis with pustules in April, while others recovered from erosions and at the end of May, regeneration of hair began. In July, hair condition was almost normal.<br>Blood and Bone-marrow: At the middle of April, the lowest peripheral leucocyte count was less than 2, 000. Two cases who had lower leucocyte count recovered earlier, i. e., their leucocytes increased to around 5, 000 at the middle of May. Meanu hile, the other cases had from 3, 033 to 4.000 count during the entire period. The former cases had also moderate anemia while the latter had only slight anemia. Blood platelet count of the former cases was less than 20, 000 and the recovery was slower than that of the leucocyte count. Reticulocyte count kept pace with that of leucocyte. In the former cases, myelocyte and other immature blood cells appeared temporarily in the circulated blood and eosinophile cells increased. The count of bone-marrow cells decreased remarkably (8, 000), i. e. panmyelophthisis, which later recovered slowly. In the latter cases, peripheral leucocyte findings and myelogram had almost no changes from the beginning of our observation and count of bone marrow cells was remarkably different by the sites of bone-marrow puncture. Vacuole and toxic granula appeared in the neutrophile cells in the circulated blood and vacuoles also appeared in lymphocyte and monocyte.
著者
田邉 美佐子 吉田 久美子 黒澤 やよい 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-30, 2009

<B>【目 的】</B> 小児期に骨髄ドナーになったきょうだいの経験を記述し, 小児ドナー経験者への看護支援を検討する. <B>【対象と方法】</B> 8歳の時に6歳の妹に骨髄提供をした20代前半の女性A氏に面接を行い, 質的記述的に分析した. <B>【結 果】</B> A氏は骨髄提供について, 躊躇する気持ちや親の期待を感じながらも, 自分の意思で決めたと認識していた. 骨髄提供後は, 妹との一体感を感じるようになり, 妹を見守ってきた. 現在は, ドナーになってよかった, 自慢できることだと捉えていた. <B>【結 語】</B> 小児ドナー経験者は, 現在の状況からドナーになった理由を捉え直すこと, レシピエントのQOLが自己価値観に影響を及ぼすことが示唆された. 思春期・青年期に歪んだ自己存在が認知されないよう, 継続した直接的支援とレシピエントを介した間接的支援の必要性が考えられた.
著者
北田 陽子 瀬山 留加 高井 ゆかり 武居 明美 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.489-498, 2011-11-01 (Released:2011-12-14)
参考文献数
22

【目 的】 一般病棟に勤務する看護師による終末期がん患者の家族への支援内容を明らかにすること. 【対象と方法】 倫理審査委員会の承認を得て, A病院の一般病棟に勤務する看護師で, がん看護従事年数が通算3年以上の者を対象に, 半構成的面接によりデータ収集し, 質的帰納的方法を用いて分析した. 【結 果】 対象は19名で, がん看護従事年数は3-20年であった. 分析の結果, 5コアカテゴリーである『家族支援の前提となる経験知や知識技術』『家族支援を行う上での信頼関係の形成』『家族成員及び家族内の状況把握と問題の明確化』『家族を全人的に捉えた実践』『実践の自己評価』が構成された. 【結 語】 看護師は終末期がん患者の家族支援において, 経験などから家族支援の意味づけや, よりよい看護支援への動機づけを行っていた. このことから, 自己の看護を振り返る機会を増やすことで, 家族支援の実践の向上に繋げられる可能性が示唆された.
著者
京田 亜由美 神田 清子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20180413019, (Released:2018-09-06)
参考文献数
36

【目的】在宅緩和ケアを受ける終末期がん患者の“生と死”に関する体験を明らかにすることである。【方法】予後半年以内で,在宅緩和ケアを受けている患者5名を対象に,半構造的面接法と参加観察法を用いてデータを収集し,Giorgiの現象学的心理学アプローチの方法を用いて分析した。【結果】在宅終末期患者は【残された時間は長くはないと自覚しながらも抱き続ける生への希求】と【逃れられないのならせめて“自然な死”を望む】気持ちから,【生への希求とせめて穏やかな死への望みの間の揺らぎ】となっていた。また在宅療養を支える周囲への感謝と負担感という【生にも死にもつながりうる家族や周囲の人への思い】を抱きながら,【自己を超越した存在】を意識していた。【結論】看護師が患者にそれまでの人生を振り返る問いかけを行うことの有効性と,家族とともに過去の看取り体験への語りを促すことの重要性が示唆された。
著者
石田 和子 石田 順子 中村 真美 伊藤 民代 小野関 仁子 前田 三枝子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.53-61, 2005-03

外来で化学療法を受けている乳がん再発患者の日常生活上の気がかりと治療継続要因を探求することを目的に質的研究を行った。外来で化学療法を受けている乳がん再発患者を対象で本研究参加への同意が得られた10名であった。半構成的な面接によりデータを収集した。面接内容を逐語録に起こし,質的帰納的方法を参考に,患者の言動から日常生活上の気がかりと治療継続要因に関する言動をコード化し類似性に従いサブカテゴリー,カテゴリーと抽象化を行った。その結果は以下のようにまとめられる。1.外来で化学療法を受ける患者の日常生活上の気がかりは【抗がん剤を続けることの気かかり】【再発・転移が気がかり】【嘔気・嘔吐による体力の消耗】【倦怠感により動きたくとも動けない現実】【脱毛による活動範囲の縮小】のカテゴリーが抽出された。2.治療継続要因としては《抗がん剤治療へ託す生への希望》《変化した生活を補う人》《療養生活での癒し体験》のカテゴリーが抽出された。3.抗がん剤の副作用である嘔気・嘔吐・倦怠感は行動範囲の縮小が見られることから,症状マネジメントの方法や気分転換活動,患者教育を行う必要がある。4.抗がん剤の副作用である脱毛はボディイメージの変容により耐え難い苦痛であるため,脱毛の時期,受容の状況や考えを聞き必要に応じて指導や情報提供を行う必要がある。5.治療生活を支える要因とは,患者の長い治療生活を支えていくことであり,心理,社会的なサポートが重要な役割を果たすことが明らかになった。以上のことより,患者の外来治療時間を利用して看護師は,患者が治療を継続していく上での悩みや思いを自由に語れる場を提供する必要があることが示唆された。

2 0 0 0 OA 流星と隕石

著者
神田清 著
出版者
三省堂
巻号頁・発行日
1930
著者
前田 智美 京田 亜由美 飯嶋 友美 神田 清子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.273-281, 2023 (Released:2023-12-27)
参考文献数
24

現在のがん看護において,病期の進行に伴い化学療法継続かどうかの意思決定支援が課題である.本研究は外来化学療法室看護師が治療継続を再考する時期と判断する際の視点と行動を明らかにすることを目的に,看護師14名にフォーカスグループインタビューを実施し,内容分析の手法を参考に分析した.判断の視点は[患者の望む生き方が尊重されているか][患者が望む日常生活を送れ,QOLが維持できるか]などの4カテゴリーが形成された.行動は[傾聴を重ね,患者の望む生き方が叶うよう,今後の治療への向き合い方を共に考え検討する][適切な時期に治療中断への介入が行えるように,看護師間で協力する]などの3カテゴリーが形成された.外来化学療法室看護師は,臨床倫理の視点で日々の看護を行い,患者の望む生き方が尊重されているかを判断していた.また,タイミングを逃さず介入するために医療スタッフ間の連携を大切にしていることが示唆された.
著者
武居 明美 瀬山 留加 石田 順子 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.145-152, 2011-05-01 (Released:2011-06-06)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

【目 的】 末梢神経障害を体験したがん患者の生活における困難とその対処を明らかにする.【対象と研究方法】 対象 : 外来でFOLFOX療法を6回以上施行した大腸がん患者25名. 研究方法 : 半構成的面接を行い, 質的手法にて分析をした. 【結 果】 生活における困難は3サブカテゴリーから《しびれにより生じる日常生活への支障》, 4サブカテゴリーから《しびれにより生じる社会生活の制限》のカテゴリーが形成された. また対処は, 2サブカテゴリーから《しびれの予防・軽減の主体的対処》, 2サブカテゴリーから《しびれに応じた調整による対処》のカテゴリーが形成された. 【結 語】 末梢神経障害を体験したがん患者の生活における困難とその対処が明らかになった. 末梢神経障害の出現が社会生活における活動を著しく制限していることから, 正確な末梢神経障害の把握を行うとともに, 望む生活や価値観を把握し, QOLの低下を防ぐことが求められる.
著者
神田 清子 正田 美智子 田村 文子 佐藤 久美子 中澤 次夫
出版者
群馬大学医療技術短期大学部
雑誌
群馬大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:03897540)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.65-68, 1989-03-31

The protective effects of wearing masks on pollens of Japanese cedar were investigated in 27 patients with Japanese cedar pollinosis. In 85% of patients, nasal symptoms slightly or moderately decreased after wearing masks. The improvement was manifested in nasal discharge and sneezeing, and but not in nasal obstruction. Conjunctival symptoms also improved in some cases. These results suggest that mask-wearing is of some value in the prevention of Japanese cedar pollinosis.
著者
黒澤 やよい 田邉 美佐子 神田 清子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-12, 2010 (Released:2017-01-13)
参考文献数
21
被引用文献数
2

要 旨本研究の目的は,子宮全摘出術を受けたがん患者が術後,いかに性的自己価値の認識を行い配偶者との関係を再構築してきたのか,辿ってきた心理的プロセスを明らかにし看護支援の検討を行うことである.半構成的面接法により対象者9名からデータ収集を行い,修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を参考に質的帰納的分析を行った.子宮全摘出術を受けたがん患者は,【性的関係性の構築体験】と【配偶者との親密性の強化体験】を関連させ,配偶者との関係性を再構築している.【性的関係性の構築体験】においては〔性的自己価値観の動揺〕と〔性的自己価値喪失感の克服〕を体験している.動揺体験では,<性的自己価値の喪失感>,<性的変化の現状認識>,<性交による創部刺激への不安>,<性の情報取得へのためらい>,<配偶者の性的欲求の尊重>,<性交許可で自覚するジレンマ>を生じている.克服体験では,自己価値を再認識する過程において,性生活の実施を巡り3通りの体験があった.1つ目は,性交を避けては通れない大切なことと捉え<性交時の苦痛軽減への努力>を行い<性的自己価値の再認識>を持つ経験,2つ目は,性交があってもなくても関係は変わらないと<性的価値にとらわれない自己価値の再認識>を持つ体験,3つ目は性交を持つ気になれず<性生活回避への自責>から,<性生活を持たないことへの苦渋の意味づけ>を行い,<性的価値にとらわれない自己価値の再認識>に至る体験である.【配偶者との親密性の強化体験】においては,〔配偶者の理解と支え〕を受けると同時に,自身も〔配偶者への気遣い〕を行い,連帯感を深めている.看護支援においては,子宮摘出術を受けるがん患者が術後に経験する心理的背景を理解し,配偶者との関係が円滑に再構築できるようシステムを整え,情報の提供と心理的支援を行う重要性が示唆された.
著者
川田 智美 藤本 桂子 小和田 美由紀 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.175-184, 2012-05-01 (Released:2012-06-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

【背景・目的】 本研究は, 患者および家族の "不確かさ" に関連する研究を分析し, 患者や家族が病気に伴って経験する "不確かさ" とはどのような内容であるのか, その表現を明確にし, 言語化する. そして, 不確かさをいかにマネジメントしていくかという適応上の課題に対して看護の示唆を得ることを目的とする. 【対象と方法】 2001年から2011年7月までの原著論文を対象とした. 医学中央雑誌を使用し, "不確かさ" and "看護" をキーワードに検索を行ない, 患者および家族を対象とし, テーマ内容に沿った35論文について内容分析を行った. 【結 果】 "不確かさ" に関する研究内容は, 《身体感覚に確信が得られないことにより生じる不確かさ》《適切な情報が得られず状況を把握できないことによる不確かさ》《将来の見通しが立たないことに関する不確かさ》《病状や治療効果を予測できないことに対する不確かさ》《迫りくる死への不安から生きる意味が見いだせず感じる不確かさ》の5カテゴリから形成された. 最も大きなウエイトを占めたカテゴリは, 《適切な情報が得られず状況を把握できないことによる不確かさ》であった. 【結 語】 患者および家族が不確かさを受け入れ, 適応に向けて生活していけるよう, 適切な情報提供と不確かさを傾聴することが重要な課題であると示唆された.
著者
田邉 美佐子 神田 清子
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
高崎健康福祉大学紀要 (ISSN:13472259)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.13-23, 2008-03

本研究の目的は、発症後5年を経過した小児がんの子どもを持つ父親Aさんの語りから、Aさんの子どもとの闘病体験の意味を理解することである。研究方法は、面接によって語られた内容を逐語録にした後、当事者の視点からストーリーを記述し、Aさんに起こっている出来事の意味を解釈した。子どもの入院中、Aさんは家族の一体感を感じ、家族の生活を守ることを自らの主たる役割に据えて、主体的に生活調整を図り、子どもとの闘病体制を確立していた。退院後においては、治療に最善を尽くしたと納得することで、悪い事態への受け入れ準備をし、不確かな未来を案ずるのではなく、今を生きる子どもとの生活を大切にしていた。Aさんが小児がんの子どもとともに過ごした闘病体験は、辛いことのみでなく自己を成長させる意味のある体験として位置づけられていた。この価値観の獲得には、家族との一体化が大きな要因であり、看護支援の骨格には家族調整が重要であることが示唆された。
著者
石田 和子 中村 美代子 森田 久美子 茂呂 木綿子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.7-13, 2001-03

骨髄移植を受けた患者家族の不安構造を分析し, 骨髄移植の治療過程の中での家族の関わりを明らかにすることを目的に研究を行った。対象は同種骨髄移植を受けた患者家族6名であり, 半構成的面接法により1回につき30分から60分の面接を行った。面接内容は移植決定から無菌室退室後の不安について3期に分け逐語録に起こし分析した。その結果, (1)移植を決定した時から無菌室入室までの不安は「病名を聞いた時の衝撃」「病気, 移植に関する知識不足」「病気, 移植に関連した情報探求行動」「ドナーが見つかった安心感」「ドナーの骨髄採取術への不安」(2)無菌室入室時から退室までの不安は「患者のそばで直接的に役立てないことへの無力感」「いてもたってもいられない行動「再発, 死への不安」(3)無菌室退室後の不安は「思った以上の回復」「生きていてくれるだけで十分」「生活のすべてが悪化するのではないかという不安」「安心する要因」の12のカテゴリーが抽出できた。以上のことより, 骨髄移植を受ける家族には患者が無菌室入室中は無力感を強く抱いており, 見守ることも一大切な役割であることを支持する必要がある。また, 退院後の家族は, 患者が生存していること自体に感謝していることが明らかにされた。看護婦は家族の不安を受け止め, それぞれの段階に応じた家族援助を行うことが示唆された。
著者
近藤 浩子 牛久保 美津子 吉田 亨 豊村 暁 佐光 恵子 神田 清子 常盤 洋子 堀越 政孝 松崎 奈々子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.31-35, 2016-02-01 (Released:2016-04-05)
参考文献数
6
被引用文献数
3

群馬県内病院看護職の「在宅を見据えた看護活動」の実態把握を目的として質問紙調査を行った. 調査内容はA. 退院後の患者の生活をイメージした看護の提供, B. 地域の社会資源の活用, C. 患者・家族の負担軽減のためのケア方法の簡素化, D. 病状変化を予測した対応, E. 多職種との協働に関する25項目であった. 回答は, 県内11病院の看護職から2,136件が得られた. 調査結果によると, 入院前の生活状況の把握, 本人・家族の希望の把握, サマリーの記載に関しては比較的よく実施され, 実施率が5割を超えていた. しかしながら住居環境の把握や社会資源の把握, 障害認定や介護認定の評価・相談, ケア方法の簡素化, 今後を予測した対応, 多職種との連携はあまり実施されておらず, 実施率が4割以下であった. したがって, これらの視点について総合的に育成していく現任教育プログラムの開発が求められていることが示唆された.
著者
吉田 久美子 神田 清子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.23-31, 2010-06-21
被引用文献数
3

目的:がん治療が外来へと移行している動きに伴い,がん患者には治療や進行に伴い変化する心身の状態を調整する能力が求められている.本研究の目的は,がん患者のセルフケアの構成概念を導くことである.<br>方法:分析方法はRodgersのアプローチを用い,概念分析を行った.これまでの看護実践をもとにしたがん患者のセルフケアに焦点をあてるために医中誌とPubMedから文献を検索,収集し,質的に分析した.<br>結果:対象となった76文献の中では,がん患者のセルフケアについての明確な定義づけはされていなかった.分析により,がん患者のセルフケアの概念は,4つの先行要件,4つの属性,2つの帰結,2つの関連概念が抽出された.<br>結論:がん患者のセルフケアの定義は,『がんに関する情報の探索と活用により,生活を保持するための意思決定を行うことである.そしてがん治療に伴う副作用や状態の変化へ対処し,がんの進行を抑えるための保健行動の実行から構成される』と定義づけられた.
著者
武居 明美 伊藤 民代 狩野 太郎 小野関 仁子 前田 三枝子 堤 荘一 浅尾 高行 桑野 博行 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.133-139, 2005 (Released:2006-07-07)
参考文献数
31
被引用文献数
5 1 6

【背景と目的】 外来化学療法を施行しているがん患者の不安を把握する目的で調査を行なった. 【対象と方法】 A病院外来点滴センターに通院中で同意の得られた男性33名女性48名, 平均年齢58.6±10.0歳の81名を対象とし, STAI質問紙を用いて調査した. 【結果】 不安得点は男性より女性が高く, 非乳がん患者より乳がん患者が, 60歳以上より60歳未満が有意に高かった. また診断からの年数では, 1年未満より1年以上が, PSが良い者より悪い者が高かった. 【結論】 外来で化学療法を受けているがん患者は正常成人と比較し, 状態不安得点が高かった. 不安得点が高くなる要因として, 5つの項目が明らかになった. 今後は不安内容を特定すること, 不安得点が高くなる要因がある患者への優先的な援助, 実践的援助法をシステム化してスムーズに対応していくことが課題である.
著者
神田 清子 正田 美智子 田村 文子 佐藤 久美子 中澤 次夫
出版者
群馬大学医療技術短期大学部
雑誌
群馬大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:03897540)
巻号頁・発行日
no.9, pp.65-68, 1989-03-31

The protective effects of wearing masks on pollens of Japanese cedar were investigated in 27 patients with Japanese cedar pollinosis. In 85% of patients, nasal symptoms slightly or moderately decreased after wearing masks. The improvement was manifested in nasal discharge and sneezeing, and but not in nasal obstruction. Conjunctival symptoms also improved in some cases. These results suggest that mask-wearing is of some value in the prevention of Japanese cedar pollinosis.
著者
石田 和子 下田 薫 中村 美代子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.41-47, 2000-03

骨髄移植を受けた患者が退院後抱える適応問題を分析し,入院中における効果的な看護介入の方法を明らかにすることを目的に研究を行った。村象は同種骨髄移植を受けた40歳代の男性患者3名であり,半構成的面接法により1回につき30分から60分の面接を行った。面接内容を逐語録に起こし,ロイの適応モデルの自己概念様式,役割機能様式,相互依存様式を用いて分析した。その結果,自己概念様式としては「死への恐怖」「再発への不安」「夫婦関係」の3カテゴリーが抽出された。また役割機能様式では「経済的問題」「役割の変化」の2カテゴリー,相互依存様式では「食事に対する不満」「趣味の変化」の2カテゴリーが導き出された。以上のことより,1.「死への恐怖」「再発への不安」は病名告知時,移植を受容する時,移植後まで引き続く問題であり,患者とともに話し合い,患者の立場で生きる希望を失わず,頑張れるよう精神的な支えになることが必要である。2.「夫婦関係」「経済的な問題」「役割の変化」「食事に村する不満」「趣味の変化」は退院直後からの問題であり,家族を含む個別的な指導が必要であり問題が継続しないよう,患者と話し合うことが大切である。など有効な看護介入が示唆された。